第411話 顔合わせ

 次の日


 お城の中へ領主とそのお連れが入れられる。予想通りというべきか、兵士の数は前回中に入った時とは比べ物にならない程の数がおり、かなり警戒されているのが分かる。


「それにしても、女の人がほとんどいないな」


「ああ……基本この国では当主が一番偉い。そして当主は基本男がやるものだという風潮があるからな」


 城の中へ入った後、大きなホールの中に領主たちが集められ、そこで各々テーブルに置いてあるグラスをとり飲んでいる。


 女の人は数人いるが、圧倒的に男性率が高い。


「さて、武器は持ち込んでないな?」


「もちろんです!」


 とは言いつつ、異納庫にしっかりと大剣が入っているのはこの際置いておいて……。


「ここへ通されたってことは、今日はもうすることがないのですか?」


「いや、会議は明日だが将軍様との顔合わせは今日執り行われる」


「なんで日にち別々に……」


「面倒だと思ってもそういうルールだからな」


 お兄様とそんな会話を繰り広げていた時、ふと広いホールの中でこちらに近づいてくる足音がした。


 後ろを振り向くと、そこにはこのホールの中では数少ない女領主がいた。


「お久しぶりですねコウメイ殿」


「ミア殿か?一年ぶりだな」


 短く髪をそろえた吊り上がった目をしている女の人、ミアっていうのか。私がじっとミアさんの顔を見つめていると私に気づいたのか、不思議そうな顔をした。


「その子は誰ですか?前回会った時にはいなかったでしょう?」


「この子は、私の妹なんだ。私の領内で現在過ごしてるんだ」


「へぇ……可愛いですね」


 そう言ってほほ笑むミアさん。


「初めまして、いつもうちの兄がお世話になっています」


「あら、礼儀正しいわね。おいくつ?」


 そう言ってかがんでくる。今気づいたがこの人身長高いぞ?


 軽く170以上はある。それに比べて私は……ミアさんの胸のあたり、嫌その下に顔がある。


「今年で15になります……」


「え?聞き間違いかしら?15って言った?」


「はい、その通りです」


「えぇ……」


 引いちゃったよ……悪かったね!こちとら成人してるけど身長が全然ないんだよ!


「ま、まあ人間様々っていうしね。ちっちゃくて愛らしいし」


「はい……」


 慰められると余計に傷つく。


「それにしてもコウメイ殿。明日の大事な会議に妹さんを連れて行く気?いくらなんでも子供……関係ない子を連れて行くのはどうかと思うわよ?」


 あ!今子供って言ったな!?


「ああ、護衛に代わりに連れてきたんだ」


「護衛?コウメイ殿ともあろう方が護衛?日ノ本では珍しい魔法使いでなおかつ、強力な水魔法の使い手であるあなたの護衛?」


 お兄様は水魔法が得意であるというのは前に誰かから聞いたことがあるが、そこまで周りが信頼するほどなのか?


 そう思ってステータスを見てみる。


 ――――――――――

 名前:ライト・フォン・アナトレス(偽名:コウメイ)


 種族名:人間

 性別:男

 称号:氷室家当主

 レベル:64


 基礎ステータス値:9460(平均)

 etc

 ――――――――――


 我が兄ながらとんでもないステータスだ。実力的にはSランク冒険者とに一歩及ばない程度。逆に言えばAランク冒険者の中ではトップの実力だ。


 流石の実力である。何よりお兄様はまだ若い……老後までにもっとステータスは伸びていくことだろう。


 ただ、いくらステータスが高くてもミサリーには及んでいない。私たち一行を基準にしたらおかしいというのは分かっているけど、やはり見劣りしてしまう。


「ああそうだ。妹は私など比較にならない程の強者でな……冒険者としてかなり活躍している」


「冒険者なんですか。すごいですね……なによりコウメイ殿よりも強いとなると、どんな怪物なのかしら」


 私一応褒められている?恥ずかしさを覚えてグラスにつがれている飲み物をがぶ飲みする。


「そろそろね」


「予定の時間だ」


 集合した領主たちが一点を見つめる。そこはホールの奥に見えるふすまの奥だ。


 薄い素材でできているであろうふすまにはまだ明かりがともっておらず、中は見えない。


 そして、


「将軍様の御成り―!」


 一人の兵士の声と共にホールの電気が暗くなり、代わりにふすまの奥から光が見えた。シルエットとして、何やら一人の人物がそこに座っているのが分かる。


「顔合わせと言いつつ、顔は出さないのか」


 と思いつつ、その場の雰囲気に合わせて、黙っておく。


 重々しい雰囲気がその場を支配した。そして、将軍はその重たい口を開いた。


「始めましょう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る