第85話 戦場を駆け回る
「なんとか時間稼ぎはできそうね」
緊張したー!
いや、敵陣に突っ込むんだから、そりゃあ緊張しますよ。
幸いのことながら、敵の方達はビビリが多かったんで、良かったもののね。
一応これで本物のボスのもとに連れてってもらえる可能性が出てきたわけだ。
そもそも、ボスともあろう人が戦場のど真ん中を闊歩しているわけがない。
さらにいえば、他の十一人とか同格のように接するはずがない。
ので、少なくてもあの十二人の中には本物のボスがいないということが判明した。
「その間に魔物たちを倒しておくとか、言ったはいいものの……」
デスドラゴンの相手はオリビアさんがしてくれているものの、それを差し引いても約千頭の魔物たちの群れが見えた。
そして、ここでどでかい範囲魔法を使えば、ほぼ確実に学院に巻き添え被害を与えてしまう、
だから、私は地道にこの魔物たちを倒さなければならないのだが……。
(誰か、助けが来てくれたらな……)
そんなことを考えているときだった。
「お困りかな?」
「え?」
背後から話しかけられる。
振り向けばそこにいたのは、
「レイの兄貴!」
「なんだその言い方?」
「あ、すみません!」
「まあいい。どうせ、一人で突っ込もうとするだろうと考えてな。今起きているやつ全員を援軍として連れてきてやったぞ」
「マジすか!?」
見渡せば、そこには百名ほどの同じ服装をした人たちがいた。
その中にはルーネの姿も見えた。
ルーネも私に気づいたのか、手を振ってくる。
「失礼ですね。一人で突っ込もうと思うほど馬鹿じゃないです」
「一人も二人も変わらないだろう?」
いつの間にか隣に戻ってきていたオリビアさんを見ながら、そう言い放つ。
「とりあえず、普通の魔物なら、俺たちでも倒せる」
「ご助力、感謝します」
「いくぞ、みんな!」
「「「おおおぉぉ!」」」
一人十匹倒せばいい計算になるが、果たして大丈夫なのか?
私ごときが編入で次席なんだから心配である。
「うーん、それにすぐにあの十二人のところに戻るのもなんだし……」
とりあえず、ルーネの補助に回ろう。
そう考えて、大剣を抜く。
奥の方で何名かと一緒に戦っているルーネを発見し、目の前の魔物たちを斬り付けていく。
「ベア!?」
「頑張ってねー!」
斬り付けた瞬間に、私はその場から離脱する。
どうせだったら、こんな感じで相手をした方が魔物たちが油断してくれるため、やりやすいのだ。
「お次はこいつだ!」
別の生徒に気を取られている魔物を斬り付ける。
首から泣き別れした胴体がどさっと倒れる。
(一撃必殺!やっぱ首を狙ったほうがいいよね!)
そうして、敵を倒しまくっているうちに、
「きゃああああ!」
誰かの悲鳴が聞こえた。
私はその声の方に全力疾走でかけていく。
時間はそんなにかからずに目的地に到着する。
そこにいたのは、
「オーガロード?」
オークの上位種であるオーガ。
そのオーガを取りまとめるオーガロードであった。
個人でAランクに分類される魔物である。
単なる生徒が勝てるわけもないだろう。
だけれど、こっちには魔法があるのだ。
「爆ぜろ!『空間破裂スペースブラスト』」
オーガロードが咆哮をあげる前に、首元から爆発が起きる。
起きたと同時に地面へ倒れ伏すオークロード。
もう起き上がることはないだろう。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい……」
大丈夫だったという話を聞き、安心する。
だが、まだ半分以上の魔物が残っていた。
それを討伐しない限り、意味がない。
「ここは任せます!」
再び、私はかけていく。
向かう先はオリビアさんの方。
さっきまでの様子を見るに、余裕そうではあるが、一応心配なので、行ってみる。
飛翔魔法で飛んでいく。
そこに見えたのは黒い翼だった。
オリビアさんの翼である。
「生きてますか?」
「ベアトリスさん……今のところは」
私の存在に気づいたのか、苦笑いをしてくる。
「苦戦しているご様子ですねぇ?」
「Sランクの魔物四体はきついんです!」
デスドラゴンの数は四体と少ない。
だが、その四体が先ほどまでの魔物たちを一掃できるほどの実力を秘めている。
だから、苦戦を強いられながらも、戦っているオリビアさんは化け物なのだ。
(さすがは聖女候補)
あのばか(勇者)並に強くなりそうだ。
「私も手伝いますよ」
「え、でも……」
「援軍がたくさんきたの見たでしょ?」
隣にいつの間にかいたオリビアさん。
その間デスドラゴンを放置していたのか、すごい気になるが、今こうして抑えているのを見て、若干安心している。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「了解」
二人でなら、速攻倒せるはずだ。
「こんなふうに……。『豸………ヲ縺…縺上↑繧』」
「え?今のは……」
オリビアが言葉を放った瞬間には答えが出た。
デスドラゴンの肉体が消滅する。
その上で、その場にはいくつかの魂のようなものが転がっているだけとなった。
「はい!あとはそれを消滅させて終わりだよ!」
「それよりさっきなんて言ったの?」
「ふふふ、秘密!」
残念ながら、教えることはできんのだよ!
「私、必要あったのかな?」
そんなことを呟くながら魂の浄化を行うオリビアさんだった。
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