第64話 迷宮攻略で勝負③
「次の相手はどいつだぁ!」
完全レジーさん無双状態入りましたよこれは。
向かってくるところ敵なし状態。
全てのアンデットが等しく屠られている。
マジつよなの尊敬します!
魔力を腕に帯び、それは当たりに巻き散らす。
拳を振るうたびに範囲で敵をなぎ倒している。
私にもできるが、あの発想はなかったよね。
除霊師の方がもちろんうまく力を扱えるとは思うが、さすがプリーストといったところか。
回復以外にもアンデット対策もできる。
絶対にパーティには欠かせない存在だ。
んで、無双中のレジーさんに打って変わって、私は暇でしょうがない。
だからこそこんなに観察してる暇があるわけだが……。
でもやっぱり、奥に行くにつれて魔物……つまりはアンデットが強くなっている傾向が見えた。
ただのスケルトンはスケルトンソルジャーなどの上位種が多々見られる。
このことから、レベルはどんどん上がっているものと思われる。
この世界にはレベルという制度が存在する。
ただし、それは十歳になってから鑑定が可能となるので、今現在七歳の私は、自分のレベルなど知る由もない。
ちなみに前世では、七レベルくらいだった。
箱入り娘としては珍しいレベルの高さだったそうな。
普通なら三レベとかでもおかしくないそうだ。
冒険者を目指している子供なんかは十レベルを超えている子も中にはいた。
それは、かなり凄いことだったそうで、かなり重宝されているのを私は近くで見ている。
(でも、問題はレベルの高さなんかじゃないのよね)
結局、力だけあっても、その力を十全に扱えるほどの技量を持ち合わせていないと、どんな優れた力やスキルがあっても意味をなさない。
だから私は、魔物を倒してレベルを上げることより、技量を鍛えることに専念したのである。
現在も日課の筋トレ魔力放出は怠らずに続けている。
そのせいかはわからないが、年々魔物が増加しているにもかかわらず、私の屋敷周辺にしか魔物が発生しなくなっていた。
多分、私の魔力に吸い寄せられた魔物がたくさん存在するんだろう。
それはある意味いいことなんだろうが……。
だって、街のみんなには被害が及ばなくなったのである。
おかげで、最近は街・の・中・は平和である。
それを考えれば、不屈の迷宮に住んでいる魔物の数は異常に多かった。
なぜなら、数の桁が頭おかしいのだ。
数百にも及ぶそのアンデットたち。
その時点でおかしい。
最近森にも魔物が急増しているそうだし、何かが起こる予兆なのは間違いない。
不屈の迷宮が不屈という呼び名になったのは、単純に数の暴力型の迷宮だからという線も考えられなくはないが、魔物の増加も考えれば、それは違うと言えよう。
(う〜ん、やっぱり良く考えてもわからない)
サンドワームの件もあるし、早めに決断しておきたいが、早急なのも良くない。
とりあえず、一年以内に私独自で調査をしてみようと心に決めるのだった。
そんなことを考えていれば、
「制圧したぜ」
「お疲れ様、レジー」
ちょうど、掃討し終わったレジーさんがこちらに戻ってくるところだった。
髪をかき上げ、薄く微笑みながら戻ってくる姿、めっちゃかっこいい!
だが、今はそんなこと言っている暇はないのだ。
レジーさんたち、つまり勇者ご一行には申し訳ないが、ここは私が勝たなければならないのだ。
(どうにかして、先にボスのもとに行かないと)
こっちとしてもどうにかして勝たせてもらわなければならない理由がある。
でもなぁ?
抜け出す暇ないんよ。
さっきからまじで敵視しているミレーヌさんが監視の目を絶やさない。
というわけで、私はかなりまずい状況に立たされていると言わざる負えないんだ。
あれ?
これって詰んだ?
いや!
まだ打開できる方法があるかもしれない!
まだあきらめないぞ、私は!
先にボスを倒せばいいのだ。
横取りになろうとも、倒せばいいのである。
このまま後ろからついてきていいとこどりしてしまえばいいのだ!
そう考えた私は、大人しくしておくことにするのだった。
「ここの通路の奥に何か大きな部屋があるみたいだ」
「そこが、ボスの間かしら?」
「二階層目で早速ボスってこと?」
「そんなこともあるんじゃない?」
二階層目で、ボスがくることはあるのか。
私にはわからない。
迷宮挑戦自体、これが初めてなのだ。
だから、そんなことがあるのかどうかはわからない。
「早速入ってみる?」
「うーん、レジーさんも法力とか消費してると思うから、安全を確保してから、いったん休憩しよう。ベアトリスもそれでいい?」
「異論なし」
私はそう答え、安全の確保に動くのだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「歓迎しますよ、ベアトリス嬢!」
誰もいないその空間で水晶を覗く女は高らかに宣言する。
「私にも運が向いてきましたね!」
フードが思わず取れそうになるほどのジャンプをする彼女は心の底から喜ぶ。
いくら進言しても、チャンスがやってこなかった私にとって、ようやく丁度いいカモが来たのだ。
「狂・信・嬢・には申し訳ないですが、ここはこの私の領域。侵入者を排除する分には叱られることはない!」
あの方たちに褒めていただくためにはなんだってする。
自分がどんな運命をたどろうと!
「ただ、物量だけでは面白味がないですね」
思案する。
どうすれば面白い演武の筋書きを描けるか。
「そうだ!本部が飼いならしているペ・ッ・ト・を借りよう!」
転移装置の準備をする。
「あなた様と同じ頂に至るために!待っててください、傀儡様!」
フードが脱げる。
ピンクのロングの髪がなびく。
だが、それよりも目を引くのが彼女の瞳だった。
それは、世界のすべてを憎むような淀んだ目だった。
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