第63話 迷宮攻略で勝負②
「よし!やったわ!」
「オッケー!下がって!」
「チェンジ!」
「了解!」
あれま、さすがは勇者パーティだ。
連携力って考えると、パーティとして、めっちゃ優れてる。
一人一人が声を出し合い、互いの状況、状態を確認しながら、役割を果たしている。
(う〜ん、すごいのはすごいけど……)
いかんせんバランスが悪い。
チームとしては、やっぱり勇者がいるから、他のパーティをよりもまとまっている。
だけど、それに依存しちゃってるよね。
前衛を務めているグルトスがいい例だ。
回復役のもう一人のメンバーである、レジーさんを守るだけで精一杯みたいだからさ。
タンク役は務まっているかもしれないけど、攻撃役は務まっていない。
守るので精一杯だよね。
それを考えれば、魔法使いのミレーヌは火力重視という感じだ。
だからこそ、魔力消費が激しいのだが、こういう狭い空間だとやりにくいでしょうに……。
それに、回復役のレジーさんときたら、もはや仕事がない。
勇者のおかげでなにもすることがなくなってる。
マジでつまんなさそうに、髪の毛いじって遊んでいるだけ。
メガネをかけてるんだけど、奥から歪んだ瞳が見え、茶色の髪をいじりながら今にも舌打ちをしそうな表情をしている。
「……っち」
あ……。
まあ、気にせんでおこう。
んで、各々役割を満足にこなせていないわけだが、そこを全て勇者が補っているから並のパーティよりも優れているのだ。
「そっち行ったぞ!」
「了解!」
指示も出せるし……。
そもそも実力が、桁外れなんだよね。
勇者が剣を振り上げる。
そして振り下ろした瞬間には残りの魔物が消し飛ぶ。
(あれはなに?雷の魔力?)
付与された魔力が読めない。
武具も桁外れだし、それを扱う勇者も勇者だ。
扱えるだけで、化け物に変わりない。
足の速さも私よりも上だった。
平然と転移した私についてきていたからね。
それを考えれば、いびつだけどなんとなくまとまりのあるチームになっているんじゃないか?
ヴェールさんのパーティもレイナさんというかなり強い魔法使いがいるが、それなりに連携が取れている。
まあ、そのうち慣れたら、うまく役割がわかれてくるだろう。
「っていうか、ベアトリス様仕事してないじゃないですかぁ〜w?」
「どういう意味でしょうか?」
ミレーヌは相変わらず私に対して煽ってくる。
なんなんだ。
一回煽られただけで、こんなに煽り返してくるものか?
煽り耐性ゼロじゃん。
「一緒に活動しているんですから、少しは活躍してくださ〜いw」
うざ。
「こらこら、そんなに煽るなよ、ミレーヌ」
勇者がなんとか慰めようとするが、もうそれは不要である。
「いいですよ?」
「え?なにを……」
「『死の気サイン・オブ・デス』」
私の周りから、闇色のオーラが出てくる。
ちゃんと四人は指定外にカウントして、オーラによけさせる。
「広がれ」
通路に入って行ったオーラはどんどん広がっていく。
そして、幾度となく何かが倒れる音がそこら中に響き渡る。
「う、うそぉ……?」
「どうしたの、トーヤ?」
「いや、ここらにあった生体反応が全部掻き消えたんだけど……」
「はぁ?」
私が使った魔法は生きている生物全てに等しく死を与える魔法なのだ!
ちゃんと本人の意思で操作が可能なので、この四人には影響していない。
「ミレーヌさんが活躍してって、いったんですからね?」
「ぐぬぬ……」
気分が良くなった私は、そのまま先に進んでいくのだった。
後から四人も追いかける。
♦︎♢♦︎♢♦︎
そして、階段らしき場所にたどり着いた。
「なにここ?」
「多分次の階層の入り口ですよね。迷宮って何層もあるみたいですし」
「それは知ってるわよ」
「あ、二階層目の敵は殺してないので」
「よっしゃ!やる気が出てきたわ!」
単純なやつだな。
筋肉ばかというよりも戦闘ばかと言ったやつかな?
扱いやすくて助かるぜ!
「じゃあ、みんな。そろそろ先に進もうか」
「「「了解」」」
全員が返事を返し、地下に進んでいく。
そして、階段を降りている途中に、あることに気づく。
「瘴気、濃くないですか?」
「それは思った」
勇者もそれは気付いたっぽい。
瘴気とは、簡単に言えばアンデットの発生の元となるものだ。
アンデットが発生する理由としては、主にこれである。
もちろん人間にとっては害悪の他なにものでもない。
瘴気が強くなればなるほど、人間の体調に害をもたらす。
人間だけじゃなく、植物もだいたい死滅することになる。
「アンデットか……レジーさん。出れる?」
「あたしの出番?」
「そう!」
「全員殺す」
ヤバイ人だ……。
めっちゃ目をキラキラさせながらこの人すごいこと言ってるんですが?
最近の若者ときたら……。
私の方が若いが精神年齢はババァだからね。
無駄に肝は座っているため、驚いたりしない。
「よし、到着だ」
階段を降りた先にいたのは案の定、アンデットが沸いていた。
主にいたのはスケルトン。
時々、ゾンビにグールといった感じだ。
「レジー、頼んだよ」
「了解だ」
そう告げた途端、レジーさんが腕を振る。
「おらぁ!」
魔力の帯が横に広がっていく。
それに触れた魔物は、一瞬にして消滅していった。
「さぁ、早く先に行こうぜ!」
私の回復役の印象は大人しい人っていうやつだったんだけど。
それは改めた方がいいと思った。
(めっちゃカッケー!)
メガネをクイっと上げて、砕けたスケルトンの死骸を踏みながらこっちに告げくる様子、マジイケメンっす!
「よし、じゃあ先に行きましょうかね」
「よし、先に行こうか」
みんなドライだなぁ。
そんなことを考えながら、私も歩き出すのだった。
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