第43話 バレた?


 なんとか初戦が終了し、残りの試合も同じように木刀もしくは木剣を折りまくった。


 これでなんとか全試合を引き分けで終わらすことができましたとさ。

 いや、何回戦えばいいの?


 私、六歳だよ?

 なんで、この中で一番戦わなくちゃいけないの?


 全く大人気ないでしょ。

 こんなのいじめだいじめ!


 でもまあ、一応全試合が終わったということで、なんとか生きている。

 そして、ようやく帰れると思っていたんですがーー


「おーい!今度は宮廷魔術師から呼ばれているぞー!」


 父様が訓練場までやってきて、全員に聞こえるように……もちろん私にも聞こえるように言い放つ。


(今度は何!?)


 そんなことを思いながらも私は試合を切り上げて父様の方に向かっていく。



 ♦︎♢♦︎♢♦︎



「この部屋で待っていてくれ、だそうだ」


「はい」


 と言って、父様は部屋から出ていく。

 父様は一体何をしにきたんだ?


 私を呼びにきただけなら、完全に雑用係やん。


 まあ、そんなことはいいんだ。

 早く帰らせてくれ!


 なんでだよ!

 謁見はもう終わってでしょ!


 なんでここでも訓練しなくちゃいけないんだよ!

 騎士達と戦った後に、また何かやんなきゃいけないの!?


 魔術師ってなんなんだよ!

 何をしろっていうんだよ!


 っていうか、なんで呼ばれたんだ?

 私何もしてないよね!?


 結局、面倒ごとになるのか………。

 まあ、半分は自業自得でもあるんだけどね。


 だって、そもそも謁見に呼ばれたのが、私のせいだったわけだし、きっとあの国王(悪魔)のことだから、魔法の実力も測ろうとか思っちゃってるんだろう。


 だから、ここに呼ばれたんだ!

 そう予想を立てる。


 ここまできてしまったからには帰るわけにもいかないため、私は部屋の中で待つことにする。


 だが、待っているだけじゃ暇なので周囲にある物を眺める。


(なんか色々なアイテムがあるけど………)


 ここって、待合室じゃないの?


 まあ、なんでもいいけど。


 そのアイテムを手に取ってみる。


(これってポーション?)


 ポーション


 それは簡単に言えば傷薬みたいなものである。

 ただ、傷薬と簡単に言えないのも特徴の一つだ。


 これは下位のポーションっぽいので、そこまで大した傷は直せないだろう。

 せいぜい、かすり傷や擦り傷、裂傷とか深くなければギリいける。


 中位のものになれば、多少の融通が効くようになる。

 大怪我ではない限り大抵の傷は治せる。


 そして一番重要なのは上位のもの、上級ポーションである。

 これはそもそも市場に出回らない。


 なぜなら貴族どもが全て買い取っているからだ。

 みんな死にたくないのである。


 だから、大怪我した時のために、金をはたいて上級ポーションを買っているわけだ。


 正直私は死ぬことより拷問の方が辛かったけど?

 拷問は死なない程度に痛めつけられるからね。


 死ぬのは大体の場合一瞬じゃん。

 処刑だったら時たまにミスって痛みとともい延命させられてしまうこともあるが、それはたまになのでノーカンである。


 つまりは、みんな死にたくないからポーションを買うのである。

 そんなわけで、ここにもポーションがあるわけだがーー


「よし!作ってみよう!」


 普段の私ならば武器くらいなら創造可能なのだ。

 ちなみに、ここは結果外の別宮であるため、私も魔法が使いたい放題なのだ!


 というわけで、早速作ってみましょい!


「『物質創造クリエイトポーション』!」


 手の持つは下級のポーション。

 それをイメージしながら、魔力を大量に流し、形を作る。


 魔力のモヤが取れてきて、その姿があらわになってきた。


「やった!でき——」


「お見事です」


 いきなり拍手の音が響く。

 そこにいたのはーー


「どちら様でしょうか?」


「おっと失礼いたしました。私、宮廷魔術師のクラウル・ロイヤーと申します。以後お見知り置きを」


「あ、はい。よろしくお願いします」


 長身の男、改めクラウルさんの格好をよく見ればそうだった。


 左目についた、なんていうんだろう。

 教授とかがつけていそうなめがねと、黒色の髪が長く綺麗なのが特徴的だ。


「えっと、みていましたか?」


「はい!ガッツリと」


 いい笑顔で告げてくるクラウルさん。


「あの、このことは秘密に——」


「もちろんですとも」


 ならいいや。


 私は安堵して会話を続ける。


「私のことを呼んだのはクラウルさんですか?」


「ええ、そうなりますね」


「なんで、私を呼んだのでしょうか?」


 そう、これである。

 なんで私は呼ばれたのか。


「ふむ、強いていうなら確認ですね」


「確認ですか?」


「はい、そうなんです。実はですね。本日未明、王宮内での魔法のしようができなくなったんですよね」


 ギクゥッ!?


「それで、原因が何か調べてみたわけなんですけど、どうやらそれは結界によって守られている範囲のみ魔法の使用ができなくなっていたようなんですよね」


 ………。


「それで結界を調査したのですがね?なんということでしょう、結界が二枚も張られているではありませんか!」


 両手を広げて、天を仰いでいるクラウルさん。


「その結界の効力を調べようとしたら、弾かれてしまったのですヨ!」


「………は、はぁ」


「ですが、弾かれたことから大体の予想を立てることができたわけです!あれは遮断の魔法!発動主と同等以上の実力者じゃなければ必ず遮断を受けることになる!つまり、発動主は我々宮廷魔術師以上の実力をお持ちとのことであるんです!」


「へ、へぇ。そうなんですねぇ」


「そこで!なんで急に結界が張られてしまったのか!ここが一番重要です!要はこの近くに結果を張った張本人がやってきたと思った次第でして」


(あ、なんかやばそうな展開)


「今現在、王宮内にやってきているのは数名!その中でも魔法が使えそうな人物は二人!そして、そのうちの一人は“神童“と呼ばれているそうではありませんか!」


(あ、やばい)


 逃げましょ逃げましょ!


「お待ちください“神童“様」


「………拒否権は——」


「そのようなものはございません」


 いい笑顔で告げてくる。


 クッソ!


 第二の悪魔め!


 私はこの時、初めて憎しみという感情を覚えた。

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