第226話 夏と言えば!(3)
「…………疲れた……」
何だかんだ言って結構派手に動き回った俺は、べちゃっとまるで浜に打ち上げられた魚のように転がって深呼吸を繰り返す。
まだここに来てからそんなに経ってないってのに、もうこんなに体力が持っていかれた…………。
自分でも思うよ、いくらなんでも早すぎるって。
やっぱり泳ぐのって体力使うんだなと改めて実感した瞬間である。
「ノエル、あっちまで競走しよう!」
「望むところなのだ!」
ちなみにノエルとエルムは見ての通り、俺がぶっ倒れてからもずっと元気に遊び続けている。
競走やら素潜りやら。
あの底無しの体力が恐ろしい。
「本当に元気だな………」
子供と遊んでる時、だいたい大人の方が先にダウンして、子供の無邪気さと無尽蔵の体力に驚かされるんだよね。
今、まさにそんな感じ。
「ご主人様、お待たせしました!」
「お、皆も来たか」
声がして振り返ると、そこには色とりどりの水着に身を包んだ少女達が居た。
「ごめんシロ様、遅くなっちゃった」
「ん。残念キツネが恥ずかしがって中々出てこなかった」
「しょ、しょうがないじゃないですかぁ………」
「あんまりこの様なものは着ませんからね………新鮮な気分ですっ」
「私はあまり普段の服装と変わりませんけどね〜」
シンプルだが、幼可愛さのある赤色のビキニに俺と同じくパーカーを羽織ったミリア。
どこで見つけたのか凄く気になる、胸元に"くろ"と書かれた本物のスク水姿のクロ。
胸元が大胆に開き、自慢の果実を零れんばかりにアピールしてくるイナリとアイリス。
そして、左右を紐で結んだ絶妙なラインを攻める際どい花柄ビキニのリーン。
ここは楽園か?
あまりにも最高すぎる目の前の光景に、俺は息をするのも忘れて釘付けになった。
いち早く
やっぱうちの嫁達は最高っすわ!
皆もう可愛いのなんのって。
こういう時、スマホがあればなぁ…………。
こっちの世界じゃカメラなんて便利なものは発展してないし、出来るとしたら魔法か?
何かそういう系の魔法がないか探しとけばよかった。
「皆、とっても似合ってるよ。死ぬほど可愛い」
「ふふっ。頑張って選んだかいがありましたね」
サムズアップにアイリスが笑顔で答える。
ひたすらに皆の水着姿を褒めちぎり脳裏に刻ませて頂いた後。
ノエル達を見て待ちきれなくなったミリアとクロは海へと駆けて行き、アイリスとリーンは机を組みたてたり椅子を出したりなど、お昼用のバーベキューの用意等のために荷物が詰まったテントの方へ。
最後に残ったのは、若干恥ずかしそうに頬を染めたイナリだ。
どうもまだ水着と言う格好が慣れないらしい。
「やっぱりと言うか、こっちの世界じゃあんまり馴染みがないんだね」
「ですねぇ」
どこかぎこちない。
返事はちゃんと返ってくるものの、時折ビキニやパンツの位置を気にしてはモゾモゾと動かしている。
収まりが悪いのだろうか。
…………いや、そんな感じじゃないな。
きっと落ち着かないのだろう。
その仕草が妙にエロいのは置いておいて、俺は首を傾げながらイナリに聞く。
「気になるなら俺のパーカー使う?」
「い、いえ、ご主人様を誘惑するチャンスですし………!うぅ、でも………恥ずかしいですぅ!こんなの下着と一緒じゃないですかぁ………!」
「何を言う。皆の肌を合法的に眺められる魔法のアイテムだぞ?」
「むしろご主人様はいつも裸を見てるじゃないですか…………」
「ばっか、水着には水着にしかないエロスがあるのよ」
もちろんベットやらお風呂で見る皆の裸体も素晴らしいことこの上ないのだが。
この照った太陽の元、海辺ではしゃぐ可愛らしい水着姿の美少女達。
そこからしか得られない栄養があるのだよ!
……………とか口に出したら普通にドン引きされそうなので、頭の中で叫ぶのに留めておいた。
結果、無言でじっと見つめてくる俺に耐えられなくなったイナリが頬を染める。
「だいたいさぁ………。初対面でいきなり太もも&パンツ見せてきたのに、これで恥ずかしがるって…………」
「あ、あれは忘れてくださいよぉ!」
ボッ!と茹で上がったタコのように顔を真っ赤にし、イナリがブンブン大振りに手を振る。
かつてイナリが初めて我が家を尋ねてきた時、自分が助けられた子キツネだと証明するために、イナリは服の裾をたくし上げてそのムッチリした太ももをさらけ出した。
ついでに上げすぎて純白のパンツもチラ見えした。
あれには中々びっくりしたよね………。
「うぅ………あの時は必死だったんですよぉ………」
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