第184話 デート"ミリア、リーン編"(3)
「はい、おーわりっと」
「死ぬかと思った…………」
腕を伸ばして気持ち良さそうにストレッチするクリスさんに対して、ベッドに横たわった俺は今にも消えてしまいそうなか細い声でそう抗議する。
もはやあれは絶対にマッサージじゃないと思う。
でも正直、こういうのに関しては全く無知なので、専門家に"これマッサージだから。絶対そうだから"と強めに押される否定しずらくもある。
なんかとりあえず、体が凝ってたんだなぁって事は分かった。
あと、クリスさんから少しは姿勢を良くしないと、いつか腰が砕けるよって言われた。
ドン引きでそう言わせるほどには凝り固まっていたらしい。
砕けたら困るのでちゃんと姿勢を気をつけようと思います…………。
「お母さーん、ミリアちゃんとリーンちゃんの終わったー?」
「あら。あっちももう終わったみたいよ、二人とも」
のんびり肩をほぐしながら椅子に腰掛けたクリスさんが、張られたカーテンの向こう側に声を投げかける。
どうやら返ってきた返事的に、あっち側のもすでに終わっているらしい。
確かミリアとリーンは向こうで、ルーシーさんと一緒にスキンケアやお肌に効くマッサージ等に勤しんでいたはず。
なんか所々で聞こえてきた声によると、前世で言う保湿パックに相当する効果のアイテムなんかも使っていた。
そして、一通りそれらを終えた二人を見たクリスさんの第一声はと言うと。
「やんもうモッチモチ!天使だよぉ!」
クリスさんの言う通り、ただでさえ若くてもちっとしていた二人の肌が、明らかにさらなる潤いと弾力を手に入れている。
光沢が実に若々しい。
もう最強なんじゃないだろうか。
クリスさんが興奮して二人に抱きつき、そのもち肌を存分に堪能するがごとく頬を擦りつける。
くっそ羨ましい………!
俺だって動ければ………………いやまぁ、さすがに周りに人が居るから自重するけども。
絶賛休憩中(強制)な俺は全身バッキバキで動きたくとも動けず、ベットに横になったままもち肌を堪能するクリスさんの後ろ姿をじっと見続けるという謎の状況に
ひたすらに羨ましい。
せめて後ろから圧をかけて、クリスさんが一身に楽しむのを妨害してしまおうか…………。
「二人とも、坊やに"褒めてもらいたい"って頑張ってたよ。可愛らしい良い奥さんを持ったねぇ」
「ですねぇ………」
動けない俺の背中をバシバシ力強く叩くルーシーさん。
おおぅ、これも中々強烈な…………。
なんかこの感じ、クリスさんとの血の繋がりを垣間見た気がする。
その後、俺の体が言うことを聞くのを待ってからマッサージ店"エルリーラ"を後にした。
もちろん出る前に存分にミリアとリーンのもち肌は堪能させてもらった。
あれはもはや餅そのものだ。
スベスベしててモッチリしてて……………とにかく最高でしたありがとうございます。
おまけに使った美容品やらパック(仮)やらも買わせてもらえたし、本当に"エルリーラ"様々だ。
クリスさんとルーシーさんには感謝してもしきれない。
さて、次は確か広場で演劇が………………。
「なぁそこの兄ちゃん、ちょっといいか?」
「…………………げっ」
声がした方に振り返り、思わず顔全面に嫌さが滲み出た反応をしてしまった。
そこに立っていたのはガラの悪い男四人組。
いかにも俺達やんちゃしてます、とでも言いたげな服装と髪型は一周まわって痛さしか感じない。
これまたベタな展開だな……………。
そりゃ確かに若干ここ路地裏っぽいけどさ。
まさか本当にこういうシチュエーションに出会うとは……………やっぱり何百年生きてても、人生って何があるか分かったもんじゃないよね。
俺が内心浸っているうちに痺れを切らしたのか、一人の男がナイフを取り出して俺に突きつける。
「おい、聞いてんのか!?さっさとその女二人を寄越せって言ってんだよ!」
「え?あ、ごめん聞いてなかった」
そういやなんか喚いてたな………。
相手するのも面倒だったから無視してたら逆ギレされた。
と言うかやっぱりミリアとリーンが狙いか。
そりゃこんな可愛い子が居たら声掛けたくなるよね、うん。
分かるよ。
………………だけど、お前らは声のかけ方をミスったな。
「おっしお前ら、俺の女に手を出すとか覚悟は出来てんだr」
「何よあんた達、どいてくれる?」
「デートの邪魔しないでください」
「あ」
「「「「ぎゃああああ!?」」」」
俺が手を出すより先に、お楽しみを邪魔された二人が華麗に男どもをぶっ飛ばした。
どうやら相当イラついていたらしく、いつもよりドスの効いた一撃だった。
あいつら死んでないよね…………?
若干あそこまで派手にぶっ飛ばされた男どもが心配である。
二人の事だからギリギリ生きてるくらいには手加減しているだろうが………………まぁいっか。
せっかくのデート中なんだから、余計なことは気にしない気にしない。
気を取り直して、脇道を抜けて広場にやって来た俺達は、そこで開かれていた移動式の舞台でとある演劇を鑑賞した。
一人のお姫様を巡って、二人の王子が争うお話だ。
この世界ではかなりメジャーな物語であり、俺も何度か本で読んだ事があった。
実はこの物語は遥か昔にあった実話を元に作られているらしく、このお姫様と言うのが現在この国を統治するオルメスト王の先祖なのだとか。
ともかく。
それを見た後、再び夕日を跳ね返すメインストリートに戻ってから夕食を食べ、今日のデートは終わりを告げた。
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