第8話 前兆





俺達の村作りが始まった。


森林から運んだ丸太達は一箇所に集められ、移住者の中で唯一の建築士であるシルバを中心に木材に加工する作業が行われた。



まず剣や斧などによって大雑把に四角く斬り、そこから専門器具で削って正確な形に整形。

さらに表面にニスのような性質の液体を塗り、木材として使えるように加工する。


作業自体は割と簡単なので、体力オバケの筋肉男達が競い合いながらやっていた。

ものすごい勢いで丸太が右から左に移動していく様は見ていて面白かった。


あれはこのままシルバ達に任せよう。




対して俺はと言うと、そこから離れた所でどうしても作るのに時間のかかるレンガの制作を担当している。


普通に作ると丸一日以上かかるのだが、専門家じゃない人達が手作りするとさらに強度が下がってしまう可能性まで加わってしまう。

頑張って作ったのに、すぐに壊れてしまっては残念すぎる。



そこで、何とか強度や耐久性を上げることは出来ないかと試行錯誤中だ。

素材を変えたり製法を調節したり。




結論として、一応そう言った性能面の向上には成功した。

皆で作ったかまにカットした木材と、草原のふもとから取ってきた天然のレンガ材質を長方形に加工したやつを入れて火をつける。



火が安定してきたら、窯の下に描いた魔法陣に魔力を流し、強化魔法を発動させる。


これは鍛冶師などが使う用法の一種で、丸一日窯の中で焼成しながら、レンガに魔法の効果を染み込ませて強度などを上げる方法だ。

その効果を定着させるために用いられるのが、この魔法石と呼ばれる小さな輝石。


これには術式の効果を増幅、定着させる性質があり、レンガに含ませることで強化魔法が持続的に定着し、結果として強度や耐久性が上がる仕組みになっている。

業物の武器の制作にはだいたいこの用法が使われているらしい。



ちなみにこれはエルフの少女、ネイに教えてもらった。



彼女の実家が代々鍛冶師の家系だそうで、こう言うのには詳しいんだそうだ。

五箇所の窯全ての魔法陣を発動させれば、あとは交代交代で火の番をするだけ。


こっちは基本的に魔法が得意な人たちに任せている。

時間につれて徐々に火力を上げなくては行けないため、魔法が使えないとそもそも何も出来ないからだ。


焼き終わったレンガは移動させて亀裂が入らないように常温まで冷やし、反っていないかなど選定をしたら完成。

晴れて家作りの材料となる。


この作業をコツコツこなして一ヶ月弱が経ち、着々と家々が形作られて来た。

そうしたら、今度は瓦の制作にも取り掛かる。

そろそろ屋根の部分に必要な瓦も作り始めなければいけない。



う〜む…………一ヶ月弱でここまで進んだのは凄くないか?

まだ道の整備などは残っているけど、ここまで来たらほとんど完成間近と言っても過言じゃない。


あー、本当に大変だったなぁ………。


今までで一番大変だっただったのは、村まで水を引くことだった。

近くに川があったから水源に関しては問題なかったけど、それをどうやって村まで引いてくるかが悩みどころで。


直線で水路を作ると明らかに邪魔だし、かと言ってそれ以外に方法もない。

そこで、川の近くに水を貯めてろ過する場所を作り、そばのワープゲートを介して村に直接繋がるようにした。


おかげで、蛇口を捻ればすぐに綺麗な水が手に入るようになった。

うむ、やっぱり魔法の力は頼りになる。



もし村が完成したら、どこかに温泉を作りたい。

この疲れを癒す施設が欲しいな。


水源と同じ要領で、どっかの未開湯源から引っ張って来れないかな………。


あ、そう言えばシルバが宿も作るって言ってたし、どうせなら温泉宿にしてもらえば良いのでは?

宿泊しなくても温泉に入れるようにして…………ほほぅ、悪くないな。






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