善と悪、人と神、その境目にそっと座る一匹の猫。この物語の主役は、裁かず、語らず、ただ“見ている”存在です。毒も、後悔も、喪失も、すべてを直接罰するのではなく、「気づかせる」ことで人を変えていく――その距離感がとても日本的で美しい。オネコサマは奇跡を起こす神様ではなく、人が本来持っていた良心を、静かに引き出す案内役。だからこそ、読後に残るのは怖さではなく、温かさです。昔話としても、猫譚としても、後味の良さが際立つ一作でした。
昔話や童話が大好きなので楽しく拝読した。非常に読みやすく大人から子どもまで誰でも楽しめる。あくまで昔話ということで、オネコサマの情報が容姿や逸話に限定されボカしてあり、読み手の想像力が自然と駆動する素敵な作品だった。ほんの少しの導きを与えて自体を好転させる距離感、特徴的な容姿(特に、赤い目)が魅力的。