清能こばなし
立菓
悪者の改心
昔々、
一方で、領主の弟は、病弱な領主の
その上、弟は誰にも気付かれぬ間に、兄の毎食の茶の中に微量の毒を入れては、何食わぬ顔で
ある日、領主の娘は屋敷の裏庭で、泥まみれでうずくまっている、一匹の猫を見つけた。
よくよく見ると、その猫は右手に深い
娘はすぐさま猫を抱えて走り、軽く洗ってあげた後、急いで獣医のところに行った。
その猫の怪我の手当をしてもらったのだが、翌日には不思議なことに、猫の傷は完治していたのだった。
その後、娘は領主と相談して、飼い主を探してみたのだが、全く見つからなかったので、屋敷の敷地内で猫を飼うことにした。
その猫の尾は日本猫らしく、短く丸い形だった。それに、
本当に、世にも珍しい色であった。
犬のように人懐こいその猫は、すぐに
もちろん、弟が
別の日の夜、領主の弟は、眠っている時に夢を見た。
一人ポツンと立っていた彼は、霧だらけの灰色の空間の中のどこかから、姿の見えない中年の女性の声を聞いたのだった。
「もう止めなさい。私は、ずっと見ていますよ。その
その夢を気にせず、領主の弟は、翌日も兄の茶の中に毒を入れていた。
しかし、数日後の夜に、弟は突然、激しい
それと同時に、なぜか領主の体調は次第に良くなっていたのだった。
あの夢は偶然だったのか。それとも、本物の神のお告げだったのだろうか。
また、あの
そして、弟は鼻水が止まらなくなり、高熱でうなされ、しまいにはとうとう寝たきりになってしまった。
彼は寝床で、ようやく領主とその娘にあの夢のこと、そして今までの悪事を全て話したのであった。
領主は実の弟に殺されかけたのだが、心優しい彼は弟を死罪にはしなかった。
その代わりに、弟と長年親交があった者に空き家を用意させ、
遠くの地で刑を受け、完全に改心した弟は、数年後には屋敷に戻されたらしい。
その頃には、弟はすっかり元気になっていたそうな。
現在、領主の屋敷は大切に残されており、今でも領主の子孫が住んでいるらしい。
そして、多くの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます