第51話:影山は笑う

授業もまもなく終わる、教師の説明はテストの出題範囲が主であるが、要所で来年の受験に関しての心構えも説かれる。影山としては自分は学内においても、世間の常識からしても異端である自覚はない。ごく普通の高校生であると自負している。成績は良いし、変わったことを好いていると思われているも、自身の能力や姿勢までそうであるとはしていないのだ。社会において、認められる程度の能力と姿勢は身に着けるつもりだ。影山の学生生活は順調な履行にのっていると言えるだろう。不思議に感じるのが、周囲の学生の一部である。結構な数の男子生徒と一部の女生徒だ。


影山(どうもな、軽いんだよな、来年受験だよ。いいのかね、あんなに軽薄で)


彼らの卒業後の姿を適当にイメージする。それぐらいいいだろう、いじわるともいえないし、彼らとは特段、仲がよいわけでもない。授業がおわり、すこし気を抜いているとLINEの通知がきた、浩二からだ。


浩二:テスト期間がおわったら、そちらの部室でメイド服の衣装の披露会をしたいけどいいかな。女の子たちには僕から説得しておく。五条君が制作した、知っているよね


それには、了承の返答をした。画像が添付される、床に並べられたメイド服だ。素人目にみえても精巧な出来だ。


影山(ええと、五条君が作ったんだよね、彼ね、へえ。よくできているじゃないか。ふうん、彼まだ15才なんだけど、ブローチの件もあるし、器用だね。テスト期間中にもやっていたのかな)


五条の日頃の人生を送る姿と、衣装を製作している姿を想像して頬が緩む。


影山(いいけどね)


テスト期間中はなるだけ部活棟には近づかないように言われている、本日も帰宅するために、2学年のから階段で下る影山。徒歩をすすめると、学内掲示板があり、視線を奪われた。掲示物が並んでいるが、掲示板の隅に、四角の紙片が、それはQRコードだった。よくみるとラミネート加工されているようだ。それに目を奪われる。理由は単純なものだった。コードを挟み込むように対角線上にピンクの付箋が貼ってあるのだ。自然と視線は中心のQRコードにいく。黙ったまま、影山はスマートフォンでQRコードを読み取る、画面に展開されたのはEVERYNORTで作られたページのようであった。すこし立ち位置をずらして、画面の情報を読む。どうやらkindleで販売している著作の宣伝のようであった。残念、スマートフォンからでは購入できないから動線がすこし。著者名から誰がQRコードを貼ったのかわかる。


影山(しかし・・・ねえ)


掲示板に付箋と併せてこれを張り付けた、本人の心理・心意気を想像して頬が緩む。QRカードを撮影して立ち去る影山、すこしして振り向くと、男子生徒が一瞥もするわけでもなく、何かを手早く剥がしている姿かあった。


影山(あーあ、残念、はがすなよ。でもどのくらい貼ってあったんだろう)


影山「努力は実を結びますかね、彼のね」


影山の自宅は日吉方面にある、通学には自転車を使っているので機動力はある。本日はアピタテラスの書店に向かうことにした。見回りの教師がいたら、参考書を選んでもいると言えばいいと考えている。自分は素行がいいから許されるだろうとも。自転車をこいでいると、つい先日までたて壊しを行っている戸建てだった存在をみる。すっかり、綺麗になっている。その前には何か儀式のような、ことをしている男達と施工主だろう家族の姿もあった。


影山(たて壊したあとの、儀式か、新築を建てるのかね。そういえば、こういうのも出来そう。彼)


アメリカ人とのハーフの少年の顔を思い出す。また聞きだが、すでに解体におけるイメージが頭に思い浮かび、その通りだと快感だという。


影山「快感ね、ふふ、さよですか」


発破爆破だったな、そう考え、思わず頬がゆるむ。そんな奴いねえよ。と思わず思考する。


すこし気分がすっきりして影山を乗せた自転車はアピタテラスに向かった

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