第27話:ハウリング・ロア ~怒りの咆哮~
正洋が登校中のひと悶着を目撃された日の学内においての時間の流れの中で咲子は正洋のことを考えていた。
咲子(ちょっとしたトラブルだったけど、助けてあげたんだよね、あのお姉さんたち嬉しいんじゃないかな。私も関心する、勇気あるなあ。
その後も何も言わないし、ちょっと後を引かないのかな。私もすこし動悸がはやまったなぁ、すごい声なんだもん。あんなに大きい声でるんだ。うーちょっとふるえたかも。正洋君のせいだよ、もう。)
咲子は隣の席の正洋を一瞥する、その本来の性根か教師による授業を真面目にうけているようであった。
咲子(真面目だなぁ、まあいいところ?あたしはちょっと気を抜こ。やれやれだね。新しいテーマかぁ、なんだろ一体、うーん。お茶、お茶、お茶かぁ、何人とお茶する話でてたっけ。デザイン研究部の人たちともお喋りする予定だったなあ)
その日の午前における授業の始めがおわった。教師が教室をでると、クラスメイトが思い思いに過ごし始める。咲子は、毎度、律子に会いに行くのもなんだし、と思い正洋とおしゃべりしようかと考える。最近になって気軽に話せる仲になっている。真面目で、時折ユーモラスで話していて退屈はしなかった。体勢を正洋にむけた咲子、その思考は一時の沈黙がながれる。咲子の視野内にはA4のレポート用紙に何かを書きなぐっている正洋の目が映っている。箇条書きのようだ。しばらく観察する咲子、そのうち正洋はページをめくり、線を引き始めた。表のようだ。そのころ合いになってようやく咲子は正洋に声をかける。
咲子「ま・さ・ひ・ろ、君?なぁにしてるの?」
集中していたのか、正洋の反応が若干のおくれて現れる。すこし、身体が萎縮したかのように震える。
正洋「お、おお、宇田川さん。ああ、いや条件書いてた、あと構成」
咲子「なんの?」
正洋「あたらしい論文の構成と条件、あとEXCELで作る履行表も書いている」
咲子「みーせーて」
正洋「いいよ、どうぞ。字は汚いよ」
咲子がA4レポートを見ると、A4用紙の上半分が論文の構成だろうか、そして下半分が箇条書きで条件がかいてある。
構成:
・はじめに
・背景
・概要
・インタビュー
・実現された上での条件
・実験
・実験結果
・提言
条件
3m
スマホアプリでのdb計測
衣服の着脱の有無 任意
履行回数 それぞれ10回
発声内容:はあ、いけ、たすけて、やめろ
咲子(ふむふむ、で?)
A4用紙をめくると表が描かれている。
表のタイトルは「ハウリング・ロア」履行表とある。1ページに2つの表。おおよその表の構成も手書きで描かれている。
咲子(ふ、ふーん。ふむふむ。)
咲子「これ、やるの?」
正洋「やるよ、結構時間かかるかも、問題は周辺への配慮とのどの負担なんだよね。計40回叫ぶ。」
咲子「叫ぶんだぁ、今朝のあれでしょ?」
正洋「そう、放課後やってみるけど、見てく?一度かなできるの。連続使用はちょっとなあ。今朝のは回復してるけど」
咲子「あれだけの声だもんね、喉に負担あるんだ」
正洋「そう、感覚的にはスタミナ制かな。徐々に回復する。連続使用もできるけどのどに負担が」
咲子「ああ、連続できるんだ、へえ。任意なんだよね」
正洋「任意だよ、別に感情的にならなくてもできる」
咲子「ふ、ふーん」
咲子「あの、正洋君、あたしどうんな女の子にみえるかな?」
正洋「おおらか、能天気、愛嬌あり、好まれる」
その言葉に咲子はすこし頬を赤らめる。ストレートに褒められた感じがした。
咲子「う、うるせぇ、そうじゃなくて、ちょっといつもの自分とは異なるものが介入した驚きみたいなかんじかなぁ。」
正洋「そう」
咲子「そう、もっとお気楽な毎日がなぁ、てめえ余計な事すんなよう」
咲子「で、いつやるの」
正洋「え?ああ、本文と表は自宅でも書けるけど、履行は今日の放課後からでも、でも一回しかできないよ。多分。二回かな。やる」
咲子「ふむふむ、まあ、付き合うかな。どこでやるの」
正洋「どこがいいかな人気がすくなくて、というか周囲の音を心配しなくていいところ。」
咲子「うーん、グラウンドと後者の間ぐらいかな。すみっこあるよ」
正洋「そうするかな」
咲子「よぶよ、みんな」
正洋「え?立花さんたちかま・・・まあ、どうぞ、すぐ帰るよ、終わる終わる」
咲子「うん、わかった。じゃあ放課後ね。教室で待ち合わせね」
その日のお昼休み、咲子は美子と律子の教室を回り声をかけた。もうすでに条件は頭にはいっているのか、正洋からかりたA4レポート冊子をかりて見せる。二人とも描かれた条件と表に、苦笑いしながら、付き合うことを了承したのであった。
その日の、放課後が訪れる。正洋は無言で黒板を見つめながら静かに座っている。咲子が正洋に声をかけ、教室を出て行った。少しして美子と律子、そのほかにも大越、影山の姿があった。美子が声をかけていたらしい。A4レポートを写真にとっていたから見せたのだろう。
正洋「お、おお、何?。」
美子「所属している研究会の面子つれてきたぜ、おもしろそうだし」
影山「大体みんないるよ、初めまして影山です。研究室の部長しています。他にも南雲さんて部員いるけど今日は遠慮するって。なにかおもしろいことするんでしょ」
正洋「あ、ああ、そうです。というか2回叫ぶだけですけど。
影山「すごい声量でるんでしょ。見てみたいな。」
正洋「じゃあ、履行前に説明しますよ。ええと、じゃあいきましょうか」
それから介した一同は移動を行った。咲子のいうとおりグラウンドと後者の間にの敷地がよさそうである。教師棟とも離れており人気もすくない。
正洋「じゃあ、この辺にしましょうか。それでは説明しますね。」
正洋の手には缶ジュースがある。
咲子(ジュースだ、飲むのかな。ああ、喉に負担があるもんね)
正洋「まず、これは実験です。ですので条件があります。それは私が描いたレポートに則っておこないます。今回の実験の場合、
まず距離、着衣の有無、発声内容です。それからdbを計測します。手塚さんが写真とっているのでそれを見てください。履行表もあります。後日EXCELに直して打ち直します。今日はどうしようかな。立花さんに記入お願いしていいですか。間をおいて2回さけびます。」
影山「ふん、気になるのだが着衣の有無だけど。どういうこと」
正洋「はい。それは肌の表面上の状態を後日確認するためです。ですから正面から動画で撮影します。あれ・・・まいったなすみませんスマホ一台撮影用にかりていいですか。」
影山「いいよ、僕のを貸す、カメラ機能で撮影でいいのかな。」
正洋「ありがとうございます、あとで動画ください、それじゃ早速、距離を計測します。」
そういって正洋はスマートフォンを操作する、計測アプリを使っているのか、スマートフォンを平行に動かしている。
正洋「ここかな。3メートル。空き缶と小石で距離の目視確認とします」
大越「いいんじゃない、何をしたいのかは大体わかった。でもそんなにでるの声量」
美子「響くよお、叫び声」
大越「エコーするのね、ふうん」
その間に立てた空き缶二つに正洋のスマホと影山のスマホを立てかける
正洋「それでは、やります。影山さん、服をぬいだた動画撮影ボタンおしてください。」
影山「もっていようか」
正洋「いいえ、今後は一人でやるかもなので、最初からそうしておきます」
影山「わかった」
咲子(?ん、服を脱ぐ、え?ちょっと!)
正洋は上着の制服を脱いでいる。皆の視野内には半裸の少年がうつっていた。
咲子(えええ、ここで脱いでるよぉ)
美子「ほほう、まあ、よしよし。筋肉質、鍛えすぎて腹でていないか、いしやん。目の保養なんかならねーよ!」
律子「うわわわ、ここで?いいの?」
正洋がスマートフォンから3メートルの距離でいる。
正洋「それではハウリング・ロア、はあ、いきます。5・4・3・2・1」
秒数数えから直後にすさまじい声量が響く
正洋「はあ!!」
その場にいた全員の身体が防御反応からか萎縮する。正洋のその叫びは反響し周囲に響いたのであった。
影山が撮影停止ボタンを押した。正洋が、沈黙のあと、一息はく。
正洋「はい、ありがとうございました。まずは一回目」
影山「おお、おおお!やるねえ、エコーしてた、びくっときたよこれ、まだすこしぶるってる」
大越「いやー響いたねぇ、これ任意なんでしょー」
咲子「ああ、あらためて見ると、ひびくなぁ。というか裸」
律子「あたしまだ震えてる」
大越「威圧用?には確かに使えるかもね。うん、連続できるの?」
正洋が喉を抑えながら発言する。
正洋「まだ、なんとか。でものどに負担はかかります。立花さん何dbでした?」
律子「え?ちょっとまって今見る。ええと、最高値だから78dbかな。記入しとくよ?」
正洋「よし、影山さんちょっとまって。・・・・よしいきましょう」
影山「OK!それじゃ二回目いこうか。」
咲子(もう、またやるの。でも結構響くから急いでやらないとだめかな?)
正洋「ハウリング・ロア 助けて 5・4・3・2・1」
その直後に再び反響する雄たけびが響く
正洋「助けて!!」
咲子(お、おおお、台詞変更バージョン。でるなあ。響くなあ)
影山が録画停止ボタンを押す。
律子が計測アプリを確認する。
影山「停止したよ」
律子「77dbかな。」
大越「でるねえ、台詞かえても出るんだぁ、台詞を変える意味は?」
正洋は連続でののどの酷使から手を喉に抑えて言える。缶ジュースを拾い、プルタブをあけて飲む。
正洋「あ、ああ。ええと台詞内容によってdbが変わるか確認します。変わらなければ、変わらなかった事実がわかります。」
大越「ん?・・・・ああ、まあそうかな。なるほど。考えてるね、今日は終わり?」
正洋「ええ、ありがとうございました。
咲子「正洋君、服着て、服。ちょっと喉が枯れてるー」
美子「あー改めてみると面白かったかな。でもこんなん40回、する!?」
正洋「実験だから」
正洋は苦笑いして答える。その日として影山とデーターの移動をして、正洋とは別れたのであった。その日の日常研究会として影山は上機嫌だった。正洋の変人というか奇人ぶりとそのまともな素行が気に入ったかのようであった。
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