第19話:発明って変?
その週の放課後である。手塚美子は上級生である石坂浩二からかりていいた「ガリアン・クロウ」の返却をするために「デザイン研究室」へ向かった。当日は「日常研究会」にも顔を出す予定であり、活動報告として併せてガリアン・クロウの体験記をしたためる予定であった。一日で簡単なものでいいだろうと高を美子はくくっていた。「デザイン研究室」の部室のドアをノックし開ける美子。室内にはすでに研究室のメンバーである。石坂浩二、福山、佳村、同学年である山田がそろっていた。
美子「ちっす!石坂先輩、借りてたもの返しにきました」
その声を聞いて浩二が返答する。
浩二「ああ、返しにきたので。ところで手塚君、この動画は何かな?」
そう言ってノートパソコンの画面を美子側にむける。画面にはYOUTUBEのサイトが開かれている。
浩二「はい、これ」
映し出された動画には手塚美子が映っている。
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美子「はい!本日は借りてきましたおもちゃ?なのかなこれ?「ガリアン・クロウ」の紹介でーす!!
なんと指先の動きで伸縮自在!アタッチメントを変えることもできます。本日の動画ではこの「ガリアン・クロウ」で遊び倒したいとおもいまーす!」
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動画内では手塚美子が「ガリアン・クロウ」で遊んでいる動画が公開されている。自分の弟や距離のある的を狙ったり、アタッチメントの機能をつかって
いたずらしたりしている。浩二はおこっているわけでもなく冷静としていた。
浩二「ま、いいけどね。いずれ売るものだし。人に知られるのは、再生数は・・・あるな」
美子「いやー色々ためしているうちに動画とりたくなっちゃいましてー・・・すみません」
浩二「まあ、いいよ。ただ貸したものだから一言欲しかったな」
福山「遊んでるねー、何本とったのよ動画」
佳村「紹介、弟を小突く、驚かす、的を狙う結構撮ったね」
浩二「いいよ、紹介になるなら。コメントもまあよし」
美子「へへへ、すみません」
浩二「他、なんかやる?」
美子「へ?」
浩二「動画の紹介も良し。他の発明したのもあるから使ってみる?」
美子「あるんすか?」
浩二「あるよ。計画しているのもある。試してみるかい。動画で紹介するかどうかは任せる、まあ発表段階は考えていたけれど」
美子「ほ、どんなのあるんです」
浩二「今日はこれしとく?」
そういって、浩二は紙袋から靴をとりだした。見たところシューズのようだ。
美子「靴?」
浩二「浮く」
美子「浮くの?浮くって?」
浩二「いやだから浮くの、履くと」
美子「へぇ~浮くんすかこれ」
浩二「そう、浮く。日常研究会のみんなでためしてもよし。そういやあそこ動画撮る人いなかったな。活動報告をデータにしているのはよし」
佳村「わたしがいくよ。試してみたいし」
浩二「佳村君行く?じゃあまかせるかな。二足ある」
それから美子と佳村は「デザイン研究室」を出て「日常研究会」にむかった。さほどはなれていない「デザイン研究室」ではすでに在籍している部員が
滞在していた。美子が借りてきたシューズの入った紙袋をみせる。
美子「今日はこれを試しますわ、私」
影山「なに?石坂君の?」
大越「あら、いいわね、私もみたいかな」
南雲「なになに?シューズ?」
咲子「シューズ?何に使うの走るの?」
律子「何か機能があるんでしょうか」
佳村「うん、今回のこのシューズはね。浮くのよ」
大越「浮く、の?」
影山「浮くの?へ?」
一瞬の沈黙のがあり、佳村が部員を促す。
佳村「じゃあ行きましょう。グランドの隅でやろう」
それから佳村を含めた部員が移動する。グラウンドでは体育会系としてサッカー部や野球部が活動しており声をだしている。
グラウンドの隅のエリアに咲子達は集まった。
佳村「それじゃ今回紹介するこのシューズの機能の説明をします。そんなにむずかしくないよ。誰が履く?」
影山「サイズは?」
佳村「あ、問題ない。履けばわかるから」
美子「えーっ!じゃあ私かなぁ」
影山「じゃあ僕もかな。」
佳村「うん、じゃあ履いて」
美子と影山の二人が自分の革靴を脱いでシューズを履く。地面は土だか多少の足の汚れはきにしなかった。
佳村「履いた?じゃあ側面の丸い絵柄すこし押してみて。」
シューズの側面には小さめの丸井絵柄がある。その横には少し突き出た突起もあった。
二人が丸い絵柄を指で押す。すると二人から声があがった。
影山「お?なんだこれ」
美子「あれ?合う?合った!」
南雲「何々?」
大越「なんなの?」
美子「いや、サイズが。サイズあわなかったけど足にぴったりになった」
影山「うん、たしかに僕のサイズと合う」
佳村「通常は足のサイズ27.5になってるんだけどね。丸いとこ押すと履いている人の足に合うように収縮するの」
影山「これが機能?」
佳村「いや、それじゃ次は突起をおしてもらえるかな」
影山と美子が言われて突起を押す。すると影山と美子から驚きの声があがる。
影山「え?なになに」
美子「おほほ、すげぇ」
咲子「どうしたんですか?」
律子「なんだろ?」
影山「浮いたぁ。なにこれ?」
咲子が言われて注視すると。影山と美子のシューズを履いている足が若干だが浮いているようだ。
佳村「ね、浮くっていったでしょ。履くと浮く機能を搭載したシューズでございます。」
美子「え。え、ここからどうすればいいんすか?」
佳村「足首からつま先をすこし前へかたむけみて。方角は甲の向きかな」
そういわれて影山と美子が足をかたむけると。二人の身体は滑らかに前方に移動する。
美子「お。お、動く」
影山「すごい。動くぞ」
佳村「そんなに難しくないよ。すこし慣れてみて」
それから影山と美子は浮いた身体を足の操作で移動しはじめた。足を前方にかたむけると前進、甲の向きをかえると方角が変わるようであり。二人とも
慎重に浮いた身体を動かし始める。
影山「すごい、すごいぞこれ」
美子「浮くねぇ。動くねぇ」
滑らかに二人は前方・旋回を続ける。その他の部員は固唾を飲んで見守っている。数分ほど二人は浮いた身体をうごかしていた。
南雲「どうなの?影山君」
影山「いいねこれ。二ッチ。」
大越「二ッチとは違うでしょ、すごい」
咲子「美ちゃん、どう?」
美子「うん、いいわこれ。そんなに難しくない」
佳村「今日は、みんなで試乗していいよ。すこし見てます」
それから部員による試乗が始まった。南雲と大越も興味ありげに見持っている。着地するときはもう一度突起を押すようで、影山は南雲と交代している。
咲子が佳村に話しかける。
咲子「これも石坂先輩がつくったんですよね」
佳村「そうだよ。すごいよね彼。シューズの外装のデザインはわたしがしたんだ」
咲子「デザイン、なんですか?これ?」
佳村「浩二さんはね。ノウハウを集めているです」
咲子「ノウハウ?」
佳村「そう。先人が時間をかけて発見したノウハウ、技術だね。それを集めている。ノウハウマスターかな」
影山がその声が聞こえたのか声をだす。
影山「ノウハウマスター!?いいね。二ッチ」
南雲「笑っている、ニッチなのそれ?」
佳村「浩二君はね、あつめたノウハウを組み合わせて発明してるんだよ。私はかれからは工学デザイン学んでるけどね」
咲子「もともと何かしてたんですか?」
佳村「私?いや何も。昨年からだよ。浩二君から学べることが多くてさ。ほんとに同年代かと思うわ」
咲子「へぇ」
佳村「悪い人じゃないよ。いろいろお願いするとなんだかんだやってくれたりするし、アドバイスもくれる」
咲子「はぁ~私も勉強おしえてもらおうかなー」
佳村「勉強ももちろんできるよ。学年代表にもなっているからね」
美子「お茶!お茶だね!」
咲子「お茶かぁ、この間弟さんとしたけど」
佳村「弟さん。浩二君、弟さんがなにをしているか詳しくきいてないらしいけどね」
咲子「へへへ何してんだろ。彼」
その日の放課後はグラウンドの隅でシューズを履き、軽快に動き回る日常研究会の部員の姿があった。返却時は咲子と美子がいき。
いずれまたの、お茶の機会をとりつけたのであった。
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