第6話:部活動見学5
5:部活動見学4
デザイン研究部の部室を出てから、咲子と律子の二人は目当てというほどではないけれど近くに部を構えている「日常研究会」に顔を出すことにした。咲子が誘う形であったが律子としても資料を読んだ限りでは悪い印象はない。問題は内部の人材であろう。二人として部室の前に立つと、デザイン研究室と同様に扉は解放されており張り紙に「日常研究会」とある。本日は扉の前に女子生徒が立っている、見学者だろうかと二人として感じると向こうから声をかけてくる。
女子生徒「ようこそ、いらっしゃい我が研究部の説明聞いていってよ」
咲子「ええと」
女子生徒「初めまして、当部のメンバーの大越です。今日はそんなに人が来てないから説明の余裕全然あるわよ」
咲子「昨日資料いただきました、説明でも聞いていこうかなって」
律子「こんにちはー」
大越「はい、二名様いらっしゃい、私、二年の大越理恵よろしく」
大越は、ロングヘア―の眼鏡をかけた女性だ。身長は165㎝ぐらいだろうか、美人と思える顔立ちであり、その口調は柔らかく温和を感じさせる。咲子と律子と共に、髪は長くはしていないので、その長髪を一瞥する。背中の真ん中まではあるだろうか。
咲子(おお、綺麗な髪ですな)
律子「よろしくおねがいします」
律子と共に部室へ案内される。部室内は咲子が昨日はいったが、改めて部室の構成に目をやる。窓際に机、中心に向かい合った形で机が置かれている。パーソナルコンピューターの類はないようだ。中心の向かいあった机に資料が置かれており、窓際の机には男子生徒が座っている。二人をみて口を開く。
男子生徒「お、見学者だねいらっしゃい、ゆっくりしていってください」
咲子「こんにちは、資料みて興味持ちまして、説明ぐらい聞いておこうかなぁと」
男子生徒「いいよ、いいよ歓迎するよ、僕はこの研究部の部長の影山です。影山雄一二年、そちらは同学年の大越さん」
咲子「はい、こちらは同好会なんですよね」
影山「残念ながらね。三年もいるけど、部長は僕なんだ。今、部員は3名。三年の南雲さんは外に出ているかな。」
咲子「どういった活動をする部なんですか、資料だと流行を追うとか、非日常を研究するとか。」
影山「うん、それじゃ活動の説明しようかな。大越さん昨年の資料だしてくれる?」
大越「はい、これね。クリップ止めだけどごめんね、ちゃんとした冊子じゃなくて」
咲子と律子が渡されのたのはクリップ止めされたA4用紙の束である。束の側面にはポストイットが貼られカテゴリだろうか、文字が書かれている。「掃除」「料理」「運動」「食事」「廃墟」「旅行」「見学」などだ。
影山「それじゃ資料を読んでいただきながら説明するね。我が研究部では日常にまつわることを研究ならびに部員で体験し周知し学び、自己を育むことを目的としています。また日常の相反する要素としての非日常にも目をやり、研究も行います。
部員たちでで研究したことは、部会で報告しあい、定期的に資料としてまとめています。こんなところかな」
大越「資料のポストイットは研究したことをカテゴリに分けたものよ、結構まとまった量になっているからそれは説明用に印刷したもの、読んでみて」
影山「資料の最初から日常で必要なカテゴリかな。どう?うまくまとまってるでしょ。それは試読ようだからね。ちゃんとした量の資料はあるよ、掃除、洗濯、料理、運動。日常にまつわる内容の基礎知識とかちょっとしたハウツーとか研究してる。」
咲子「研究ってどうするんですか?」
影山「TVとかネットとか雑誌の情報を持ち合って体験、報告する事が多いかな。実際にやってみるのと見聞きするのは違うからね。流行として今、流行っているものを実際に体験して活動報告としているのもあるよ、まあ、遊んでるだけともいわれるけどね。
律子「うしろの方ってなんか「廃墟」とか「見学」とか「取材」とかある。」
影山「うしろの方ほど、非日常を取り扱っているね。まあカテゴリ分けして資料にしているわけだけども。言うなればニッチ、好きじゃない?」
咲子「ニッチ?」
影山「そう、ニーチッ!!」
咲子「ニッチって非日常なの」
大越「ニッチって言っているけどね、まあ非日常って要はめずらしいものじゃない。あえて見るのよ」
影山「そう、あえて。日常としての知識を深めつつも、時にはニッチ分野にも目を配りあえて見識を深めてみる、そして資料に収める。時々取材とかもいくよ」
咲子「ニッチな分野イコール、非日常としているわけかぁ」
影山「そう、見知った廃墟に取材して撮影したり体験したり見解を文章にまとめたり。人間、何を好きになるかわからないでしょ」
大越「非日常としてその道のニッチを取材したりとかもしてるわ、話聞くとなかなかおもしろいわよ。何考えてるのかわからないけど、情熱が伝わるときがあるの。見解として憶えておけばいつか目が向くかもしれないしね、結構好きよ、ニッチ分野の取材」
律子「ニッチ、ですか・・・」
影山「まあ、そういう意味では結構、我が校も人材豊富なんだよ、有望な人材は随時教えてほしい所だね」
大越「まあ、ニッチはいいけどね、日常、非日常としても興味のあるテーマの知識を深めるという活動よ、体験もするわ。皆で話し合って決めたり、単独で後で報告してくれたり、遊んでるだけじゃないかと言われる時もあるけどね」
律子「活動日は「随時」となっていますけど、これは?」
影山「うん、まあ、その時期ごとに、研究するテーマが違うからね。テーマによっては活動の頻度が多くてもいいよ。チームで動いたり、一人で活動したり。研究部の知見の蓄積のためにも活動報告は残してもらうことにしてる」
大越「文化祭では活動報告を冊子にして販売したりしてるのよ、結構手にとってくれてるかなぁ」
影山「やっぱりデジタルデータで販売しようよ、放っておくだけで売れるかもだって」
大越「影山君は、営利活動にも乗り気だもんねぇ」
影山「うん、まあそんな感じかな、どう?」
咲子「おお、旅行に行った写真だ。写真だ。結構遊びにも行くんだ」
影山「いくよ、行く。観光地を見て回っての報告もする。実際に部外でも見てもらった人は何を感じるかわからないからね。同行しなかったけど。後で興味がわいて家族で旅行した事例もあるよ」
二人としておおよその活動をきいて、把握の相槌を打つ。資料を入念とはいかずとも、読み進める。試読用というが結構な活動報告だ。
咲子(おもしろそう、みんなで楽しくしてそうな写真がおおいな。なんだ、この「溶接にかける情熱取材」ってのは。卒業した生徒かな。写真載せられてら。体験記もある。色々やってるんだぁ)
咲子と律子二人として活動の詳細はつかめたようであり、話の落としどころの注意に頭がよぎる沈黙が起きる。
影山「まあ、今日は見学でもいいよ。入部はいつでも歓迎するよ。入ってくれたらもう一人も含めて挨拶するからね。」
咲子「ああ、はい。わかりました」
影山「ところで、君らの知っている人でニッチな人しらない。ニッチ分野に造詣あるひと。キャラが面白ければ尚良し」
大越「影山君、ニッチすきだね、ほんと」
影山「いいよ、ニッチ。まったく見知らぬ分野の知見が増えるのはいい、何に興味もつかわからないし。知識の蓄積。同級生にすごう有望株いるけど。知らない?入学式に代表挨拶した人だけど」
律子「デザイン研究室の人ですか、ニッチなんですか?」
影山「なにがニッチかって僕らの歳で工業デザインの研究だよ、面白いものを制作しているし、ニッチだね。まあ、本領は全然見せてないらいしけど。全貌しりたいね、彼のニッチぶり。」
咲子「論文かいたり、人形作ったりとかはニッチですか。工学論文とかマトリョーシカとか」
影山「論文、ラノベじゃなくて。僕ら高校生だよ?いいねそのニッチ。マトリョーシカってロシアの民芸品じゃなかったっけ?作れるものなんだ。それはいいニッチ。今度教えて」
大越「今日はありがとうね、どうする資料持ってく?。試読用だからいいよ。ああ、ごめん貸すよ」
その後二人としてクリップ止めの資料を、後に返却として貸り、部室を出たのであった。入室当初よりも弛緩した雰囲気が二人には流れていた。
咲子(うーん、検討会かなぁ・・・どうしよ。面白そうな部は結構あったぞ)
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