『妹』を三千円で落札したらホントに届いた。
霜花 桔梗
夏祭り
第1話 お届けモノは妹でした。
夏の日の午後、夕立ちなのか少し雲がかかってくる。バイトも先週で辞めて暇な一日である。ポツポツとスマホを操作してネットサーフィンをしていると。
『妹』価格『三千円』なにかのネタか?
まあいい、落札と……。
暑い日々に空に浮かぶ雲を眺める。明日は夏祭りであった。しかし、一人で行くの気まずいな。同級生にでも会ったら一人でいるのがバカにされそうだ。
さて、昼寝でもするか……。わたしは気だるい体を横にする。うん?オークションサイトからの直接メール?
何時もと違うな。
『今夜、21時到着予定、落札者は必ず対面での受け取りをして下さい』
普通は翌日以降で最近は置き配達も多いのにな。やはり、21時まで寝ていよう。
『わたしは生きているの……』
うううう……何か夢を見た。少女が助けを求めるモノであった。可愛い少女であった。あんな妹ができたらいいな。そして、21時になり、ドアを叩く音がする。呼び鈴ぐらい使えよとブツブツ言いながら玄関で出る。そこに居たのは高校生の様な女子であった。
「お届け物の『メグⅡ』です」
何だ、新手の宗教か?わたしはドアを閉めようとすると。
「閉めないで、あなたの妹です」
そうか、確かに『妹』を落札した。わたしは話だけでも聞こうと思い玄関の中に入れる。その話の要約は父親に虐待されて、挙句の果てにオークションで売られたと言うのだ。
「今日からわたしはあなたの妹です」
少し可哀そうになり、わたしは妹として受け入れる事にした。
翌日、敷布団の中が狭いなと微睡の中で感じる。朝日が差し込み夏の暑さを感じていると。わたしは目が覚める。狭い理由は横に寝ているのは見知らぬ女子であった。。
よく見ると『メグⅡ』である。
「何故、わたしの布団に入るのだ?」
「寂しいの」
そう言う問題ではない。わたしは小首を傾げて困るのであった。大体、若い男子の布団に女子が入って良い訳がない。ただ、悪い気分ではなかった。いーな、体全体が柔らくて。幸せな気分であった。
「必要なのは愛です」
それはそれで問題だ。確かに三千円で売られたら。何か深い事情があるのだろう。
よし、わたしが面倒をみるぞ。
「はい、鉄也さん」
早速だが、『メグⅡ』では名前がややこしい。ここは愛称で呼ぼう。そして数分考えて『メグッチ』にしようと決める。
「ありがとうございます、料理も掃除もダメで、食べるだけしかできませんが、たい焼きは好物です」
好物がたい焼き……夏向きでないな。
「小豆カキ氷食べるか?」
「はい、嬉しいです」
わたし達は台所に向かうと冷蔵庫を開くと冷凍スペースから小豆カキ氷を取り出す。スプーンも用意してメグッチに渡す。
「食べるといい」
「はい、いただきます」
台所の椅子に座ったメグッチは小豆カキ氷を食べ始める。
サクサク……。
しばしの沈黙の後でメグッチはもだえ苦しむ。カキ氷のあれか、わたしはコップに一杯の水を手渡す。
「ありがとう、この感じが有っても、カキ氷は大好きです」
そうかそれは良かった。と、思っていると……。
小さなホワイトボードに目が止まる。ありゃー、今日の朝ご飯の当番はわたしだ。
わたしの家庭は母親がいなくて、ご飯の当番はシフト制でホワイトボードに書いてあるのだ。そこで、わたしは急ぎ朝食を作る。
「メグッチには料理はできませんが応援します」
素直な女子だ、ここが好感度の上がるポイントなのだろうが本人は気がついていないらしい。
そして朝食はツナサラダと豆腐のみそ汁である。突然の三人分となると少し苦戦したが味には問題無い。父親が起きてきてメグッチは挨拶をする。
「あぁ、三千円の妹ね、自分の家だと思ってゆっくりとしていってね」
気さくな父親はそのまま椅子に座る。
朝食を食べ終わると何か忘れている事に気づく。
あ!今日は高校の半日登校日だ。
わたしは渋々着替える。
「メグッチは高校に興味があります。一緒に行きたいです」
しかしなぁ。
「あ、昨日、あの後で大きな荷物が届いて、その中に高校の制服が入っていたよ」
父親が荷物の中から制服を取り出すとメグッチにわたす。
「はい、嬉しいです」
ぬぐぐぐ……。ついてくるとな。メグッチの初日にしてはハードスケジュールだ。
何故なら夏祭りに一緒に行こうと思っていたからだ。
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