第41話


ちゃらっぽいだけだと思っていたら


男らしいところもあるんだね


血のついた唇を、ハンカチで拭こうとして手を伸ばした。


「 こんなのかすり傷だから…いいよ… 」


「 あ… 」


大野の払おうとした手と、私の手が一瞬触っただけなのに、胸のドキドキが止まらなくなった。


ど、どうしちゃったんだろう私、顔が熱い…身体中が熱い…なんか変だ…


「 痛そう… 」


「 まさか…こんなのぜんぜん……痛ッ… 」


「 大丈夫? 」


真っ赤になったハンカチをポケットにしまい、リュックを拾おうとすると、大野は拾い上げパンパンしてくれた。


「 大野… 」


路地裏から大通りへ出ると、私の横には普通に大野が並んでいた。

 

「 家まで送って行くよ、僕の家もこっちの方向だから… 」


「 知ってる…けど、嘘でしょ? 」

 

「 だから本当だってば 」


「 うふふ、わかってる…そういう意味で言った訳じゃないんだけど… 」


「 え?…けど、今日で門限解放だったのに、また過ぎちゃったね… 」


「 しかたないよ… 」


「 ごめん… 」


「 なんで大野が謝るの? 」


いつも自信に満ちあふれている風なのに、珍しく寂しそうな顔を私に見せる大野


「 また…やり直せばいいじゃない! 」


「 やり直す? 」


「 そっ!…最初から、だからまた…ラーメン屋さん付き合ってくれる? 」


「 もちろん! 」


「 でも…あの時…ハグだけでカモフラージュできたんじゃない?…なんでキスまでしたの? 」


「 そ…それは…中途半端じゃ疑われるかもしれないだろ 」


「 ほんとは? 」


「 初めはもちろん ハグだけでやめようと思ってた… けど… 」


「 けど? 私ね…本当のことが…大野の本当の気持ちが知りたい 」


……


「 キスがしたいって思ったから 」


「 そんなに簡単にキスなんてできるものなの?…今までもたくさんの子と軽い感じでキスとかしてきたんだね…ほんと、最低! 」


「 初めてのキスだったんだ… 」


「 う…嘘だ!絶対うそ!いつも女子に囲まれていてモテモテなのに…初めてなんて信じられない…それにあの時だって普通に、何の抵抗もなくサラッとしてたじゃない 」


「 初めて会った人に、初めてのキスするなんて…最低 だよな… 」


「 ほんと… 」


あなたなんか大っ嫌い…顔を見るのも嫌だった…


けど…


大野は最初に言ってくれた言葉の通りにたくさん返そうとしてくれてた。


門限に放課後の美羽との時間…私のために返そうとしてくれてたよね。


「 ねぇ大野?明日のお昼、屋上に来てくれる? 」


「 え!? 」


「この前のタマゴサンドのお返し…ううん違う…大野に御礼がしたいから 」


「 も、もちろん!何があっても行く! 」

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る