第37話


「 美羽ちゃんから聞いたんだ 」


「 やっぱりね 」


「 けど…美羽ちゃんの代わりなんて出来なかった… 」


「 それが理由でしつこくつきまとっていたの? 」


「 寂しそうなゆずきちゃんを見て…少でも元気になってくれれば、そう思ってさ 」


寂しそう?


「 それと… 」


大野は途中で口を噤んでしまった。


「 明日から美羽ちゃんと部活…頑張ってよ… 」

「 屋上で言ったことあれって本気だったの? 」


「 嘘じゃない…けど、無理だったははは…

笑ってくれよ…今までしつこくしてごめん…

少しでも、君に返したくて、償いたくて、君から奪った笑顔をもう一度見たかったから…じゃあ…ゆずきちゃん…

さよなら! 」


もう一度って…どういう意味…


大野涼太!…


彼の小さくなって行く背中をしばらく見続けていた。


冗談なんかじゃなかった、大嫌いなやつだったのに…


嘘つきで、ちゃらくて、瞳がキラキラに輝いていて、背が高くて、モテモテで、カッコばかりつけて…


突然さよなら?


なんで痴漢なんてしたの…なんで!


いなくなって初めて気がついた。


もし…痴漢にあってなかったら…


私は大野涼太のことを…大嫌いになんて、大嫌いになんて…


バカ…大野のバカ!大野なんか大っ嫌い!


時間が止まっていた…


暗くなるまで私は…大野涼太の影を追っていた。


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