第30話

大嫌いなはずの大野涼太の背中に乗っているなんて…


『 見てよ、あのカップル 』


『 見せつけちゃってくれて…いいわね〜 』


『 あんなカッコいい子におんぶしてもらってさ 』


『 ほんとだね、あたしもあの子の背中なら永遠に乗っていたいなあ 』


『 だね、マジうらやましいわぁ… 』


誰と誰がカップルだって!? 永遠とかって…絶対ヤダ!…


ああッ恥ずかしい!


けれど、大野は噂されても全然気にしてない感じ…


人通りの多い街の中でも全く動じないし…


私はもう耐えられません。


背中に乗ってわかったけど、なんとなく大野って落ち着きないというか、たまに後ろ見たりとか…やっぱり変


「 ちょっと恥ずかしいから降ろしてよ 」


「 もう少しこのままでいたいな 」


「 どういう意味? 」


「 ゆずきちゃんのぬくもりを感じていたいから 」


「 何それ!何かいやらしいこと考えてない?痴漢だもんね! 」


「 酷いなぁ…ただ一緒にいると安心するってこと 」


「  ますます意味わかんない 」


「 着いたッ! 」


「 !?… 」


見覚えのあるお店の前で彼は止まった。


「 ここって… 」


美羽とよく食べに来るラーメン屋さんの前だ。


お昼パンひとつしか食べてないから、こんなの見せられたら食べたくなっちゃうじゃない。


「 はづきちゃんから聞いたんだ、部活帰りに食べにくるんだってね…この店美味しいの? 」


そっか、お昼に美羽が何か言ってたの…このことね…


「 うん!めっちゃうまいよ!…あ…だからそう…決まってるじゃない 」


「 ほんとかなぁ 」


「 私が嘘でも言ってるってゆーの!じゃあ入って自分の舌で確かめてみてよ! 」


「 そう怒らないでよ…それより… 」


「 何よ! 」


「 そろそろ降りてもいいんじゃない? …僕は、べつにかまわないけど… 」


「 あッ…うん…おろして…ください… 」


通りすがりの人に笑われてるし…


もう!…けど


結局こいつと店に入ることになってしまった。


へんなこと言うんじゃなかった。



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