第29話
水筒に入っていたジュースはすっかりカラカラ…
「 あなたのせいでこんなになっちゃったじゃない!どう責任とってくれるのよッ!」
ローファーをベンチから脱ぎ捨てると、シミになったホワイトのソックスをギュッと絞り、ベンチに立ち上がってクシャクシャになったそれをプラーンと両手にぶら下げ、大野涼太の目の前に差し出した!
「 もう ヤダ…グス… 」
情けないのと、恥ずかしいのと、悔しいのと、私はベンチに立ったまま泣くことしか出来なかった。
だって冷静に考えてみると彼は私の名前を呼んだだけで…
かってにびっくりして、かってにジュースこぼして、かってに彼のせいにして…かってに怒って…こんな格好している私は…
いったいなんなの?
ただ泣いて怒っている 私は…
「 これじゃあ歩けないね 」
「 グス… 」
「 まだ、一つも返せてないのに…また増やしちゃった ね… 」
「 グス… 」
「 僕のこと大嫌いだと思うから 」
「 ?… 」
「 たぶん嫌かもしれないけど 」
大野涼太は私の手から濡れたソックスを奪いとると、落ちたローファーを拾い上げ、そのままかがみ込んで、長い間ずっと 私を待っていた。
「 君に返したいから… 」
確かに嫌だ…
こんなやつの背中に乗るなんて…
けれど…
気がついたら大野涼太の背中に、あの香水の匂いがする背中に…
乗っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます