第29話 ある意味で地縛霊みたいなもんだと思います……。
あれからだいぶ時間が経ち、近藤先輩は俺を
一方、俺は、隠れもせずにドアの小窓から普通に俺をガン見してくるアヤ姉をガン見し返していた。
(アヤ姉って、やっぱすげぇわ。逃げも隠れもしねぇんだもん。堂々としたもんだ)
「ねぇ、あの人、なに? さっきから部屋の中を覗いてる気がするんだけど。……
近藤先輩が連れてきた大学のお友達さんがアヤ姉の奇行に怯えてしまっている……。
まぁ、目を見開いたままコチラを見つめ続けてくる人がいたら、そりゃ誰だってビビる。
「ああ、大丈夫っすよ。あれは確実にオバケですけど、放っておけば、すぐにいなくなると思うんで。たぶんローテーションっすから」
家族と思われるのも何だか恥ずかしくて、嘘を吐いてしまった。だが「すぐにいなくなる」ってのは本当だ。
大体五分周期で弥生、ヒナ、エリカ、アヤ姉と入れ替わっているので、間もなくアヤ姉はこの場から立ち去るはず。
「やっぱりオバケなんだ……。今の時代ってオバケもローテーションするんだね。あれ? てことは、次は他のオバケが来るってこと?」
アヤ姉と違って他の三人はコチラにバレないようにしているみたいなので、彼女が恐れるような事態にはならないだろう。
「大丈夫っす。他のオバケは見えないタイプなんで」
「あぁ、やっぱり来るんだ……。ねぇ、あんまりジロジロ見ない方がいいよ? オバケって目が合うと祟ってくるとか聞くし」
「そうっすね……」
(幸い、アヤ姉たちは部屋の中まで侵入してくるつもりはないみたいだし、このまま放置しておこう)
……と思ったのだが、それからしばらくして合コンもそろそろお開きかという頃、何のつもりか、ドーンっとドアを開けて、ヒナが部屋に乱入してきた。
(もうちょいで何事もなく終わりそうだったのに……)
「ユキ
ヒナが慌てた様子で俺の手を引っ張る。どうも只事ではない雰囲気だが……また下らないことじゃないだろうな?
「どした? 何かあったのか?」
「大変なの! お姉ちゃんたちが大変なの!」
「だから何が大変なんだよ?」
「大変なのー!」
大変の中身を説明せずに、ただただヒナが俺の腕を引っ張り続ける中、友人Pが俺とヒナの間に割って入ってきた。
「ヒナカさんもカラオケに来ていたとは知りませんでした。奇遇……いや、これは運命なのかもしれませんね」
Pの奴、よくもまぁ、この状況でそんなキザったらしいセリフがスッと出てくるもんだ。ある意味、尊敬する。
「ねぇねぇ、ユキ
「ああ、怖がらないでください。僕は
「えっと、ヒナのファンなんですか?」
「ええ。もちろんアヤカさんとエリカさんのファンでもありますがね。おっと、僕としたことが自己紹介を忘れていましたね。僕は幸村くんの大親友をしております、
Pがヒナに向けてウィンクを投げると、珍しいことに、あまり物怖じしないヒナが一歩後退っていた。
「えっと、将来ユキ
「ヒ、ヒナちゃんに『お兄さん』って呼ばれたっ。し、昇天しそうだぁ! ……って。……お嫁さん? 幸村〜! テメー、兄妹だからどうのとか言ってたくせに、やっぱ手、出してんじゃねーか!」
お見知りしたくない、とか言われてるのはスルーするんだな、コイツ……。ある意味すげぇよ、メンタルが。ホント尊敬する。
「手なんか出してねぇっての。ちょっとお前は黙ってろ。で、ヒナ。大変、大変って、いったい何が大変なんだ?」
「そ、そうだったーっ! あのね、あのね。ヒナたちの部屋に知らない男の人たちが入って行ったの! 怖い感じの! ヒナ、ちょうど外にいたからユキ兄に知らせなきゃって思って!」
(……どうせ下らないことだと思ってたら普通に大変じゃねーか)
「つまりナンパか。……すいません、先輩。ちょっと行かなきゃいけないんで今日はこれで失礼します」
合コンに来ておいて途中で帰るなんて失礼な話だ。実際、近藤先輩は一瞬だけ気分を害したような顔をした。けれど、それでも先輩は俺にこう言ってくれた。
「なんだ、斑鳩くんもちゃんと即断即決できるじゃん。……いいよ。いってらっしゃい。どうせ私じゃ勝負にならないのは最初からわかってたし」
「??? ……ありがとうございます。じゃあ、今日はこれで失礼します!」
近藤先輩に頭を下げ、そして、俺は駆け出した。
*********************
モチベーション維持のため、宜しければ星評価お願いいたします。
——九夏なごむ
*********************
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます