第20話 三姉妹会議プラスウィズ母だそうです……。
休日の朝っぱらから俺の部屋の前で三姉妹たちが泣きじゃくっていた。
原因は俺。俺が自室のドアに鍵を掛けたからだ。
いや、なんでドアが開かないだけで泣くんだよ……。
「あらあらあら〜。三人とも、どうしたの? ユキちゃんのお部屋の前で泣いちゃって」
そして、ついに
「お母さーーんっ!」
「あらあら、ヒナちゃん。どうしたの〜? 抱きついてきたりして」
「ユキ
「お母さん……。実はユキくんに何かあったみたいなの……。部屋が開かなくて……」
「アヤちゃん……。それは本当……なの?」
「……うん」
「そんな……。私の大事なユキちゃんに、もしもの事があったら……。お母さんは……お母さんは……っ」
あっ、ダメだ、こりゃ。母さんまで一緒になって泣き始めた。
四人でワンワン泣きじゃくっていて、そろそろ警察でも呼ばれそうな雰囲気だ。
(こりゃ、もう出ていくしかねぇわな……)
降参して鍵を開け、ドアを開けてみれば、目を真っ赤にして抱き合う四人の姿。
「あの〜……。すいません。俺は無事です。大変お騒がせしました」
「「「◇ ♪* ▼?○‰!!」」」
なんか雄叫び上げながら、すごい勢いで全員が抱きついてきたんだけども……。
(もしかして俺って部屋に鍵も掛けちゃいけない身分なんすかね……?)
◇◆◇◆◇◆◇◆
なんとか落ち着かせるため、四人の頭を撫で続けていたら、いつの間にやら一時間も時が経っていた。
無駄極まりない時間だ……。
そして、今、リビングで、性懲りも無く『三姉妹会議プラス、ウィズ母』なるものが開催されようとしている。
議題は、もちろん『俺の部屋の鍵を如何にするべきか?』だ……。
(如何にするも何も個人の自由じゃないですかねぇ?)
「では、会議を始めたいと思います。本日は、お母さんも出席していますが、
アヤ姉が椅子に座ったまま、軽く頭を下げると、会場(リビング)に拍手が起きる。
そして、アヤ姉のコホンという咳ばらいで拍手は止んだ。
「じゃあ、何か意見がある人いる? 無ければ、ユキくんの部屋の鍵を取り外そうと思うんだけどー。皆、それで良いよね?」
良いわけないだろ!
「ちょ、ちょっと待ってくれ、アヤ姉。俺の意見も少しは聞いてくれって。これじゃあ、会議を開いた意味がないだろ」
「ん〜、確かにそうねぇ。仕方ない。では、ユキくん、意見をどうぞ〜」
このまま一方的に決まってしまうのか、と思われたが、なんとかチャンスを貰えた……。
(ここで理路整然とした主張を展開し、皆に納得して貰わねばっ!)
「プライバシーの保護が叫ばれる昨今だろ? 鍵くらい付けても別に良いんじゃねぇか。むしろ、皆の部屋にも鍵を付けた方が良いと俺は思うね。それに俺だって思春期だし、部屋ん中、勝手に入られるのは嫌なんだよ。いきなりドア開けられたら困る時だってあるし。……あっ! べ、別に部屋で変なことしてるわけじゃねーよ?」
「ねぇねぇ、ユキ
いきなりの墓穴……。もちろん変なことっていうのは、つまり……思春期の男の子にとっては必要不可欠なイヤらしい行為のことだ。
だが、それを口でヒナに説明するわけにはいかない。
頭の上にクエスチョンマークを出し、純粋な気持ちで俺に問うた、純真無垢なヒナに変な言葉を覚えさせるわけにはいかないんだ!
それが兄たる俺の役目っ!
だと言うのにエリカの奴……っ。
「あー、あれでしょ〜? ユキってば実は私たちが見てない時に一人で——」
「ち、ちげーよ! エリカ! 俺はそんなことしてない!」
エリカの発言に被せるようにして即座に否定する。慌てているようで逆に怪しく見えてしまうかもしれないが、それでもコイツに妙な発言させるわけにはいかねぇ!
俺はヒナの無垢を守ると決めたんだ!
「えー、そんなこと言って、ホントは鏡の前でキメ顔とかしちゃってるでしょ? で、カッコいいポーズとかも取ってみたり!」
……エリカ。疑ってすまなかった。お前も純真無垢なんだな……。
そして、感謝する!
「ちっ。バレちまったら仕方ない……。まぁ、こんな事を皆に言うのは恥ずかしいけど……そういう時もあるな。俺だって、カッコいい表情の一つくらい見つけたいんだよ」
この時、俺は安堵していた。エリカのおかげで上手く誤魔化せた、と。
今日はド天然の
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