第14話 足揉み如きで変な声を出さないで下さい……。

 自分の棒を確認してみれば、そこには数字の三の文字。


 まさかエリカに当てられちまうとは……。


「ユキが三でありますようにっ! ユキが三でありますようにっ! 神様仏様お願いします〜っ! 良い子にしますから〜!」

「こんなことで神頼みすんなって。神様の迷惑だろ。……はぁ。三は俺だよ、俺。……良かったな、これで俺をこき使えるぞ」


 アイスの棒を机の上に晒せば、よっぽど俺に命令したかったのか、エリカが飛び上がって大喜びだ。


「やった! やったぁ〜!! 王様の命令は絶対〜っ! さぁさぁ、ユキ〜! 私の足を揉みなさ〜い!」

「はいはい、わかりましたよ」


 どっこらしょと椅子から立ち上がり、エリカの隣に座っていた弥生と席を交換する。

 エリカと向き合えば、すぐに彼女が自分の足を俺の膝の上に乗せてきた。


「さぁ! 早く王様の足を揉みなさい!」

「あー、はいはい。じゃあ、痛かったら言って下さいね〜」


 そんな風に言ったが別に痛くする気はない。取り敢えず、土踏まずあたりを軽く押してみれば、エリカが激しく身悶えた……。


「いやーんっ! はーんっ! 気持ちいいー!(棒読み)」

「……ぶざけんな」


 少しイラりとしてしまい、強めにエリカの足裏を押す。


「ィィイ! 痛タタタタタっ! 痛いってば!もう少し優しくしてよ!」


 エリカが身をよじり、バタバタと動き回れば、チラチラと覗かせる部屋着の短パンの奥に、一瞬だけ目が吸い込まれそうになる。


(いや、見てないぞ? 見るつもりもない)


「わかった、わかった。……じゃあ、優しくしますねー。お次はどこを揉みますかー?」

「そうね、ふくらはぎをお願いするわ。……ユキ? 次はちゃんと優しくね?」


 ご要望にお応えして、ふくらはぎをキチンと優しく揉みしだけば、エリカが恍惚の表情を浮かべてくれる。


「……そこ……気持ちぃぃ」

「……ここ?」

「はぁん……。そこ〜」


 さっきはふざけていた感じだったが、どうやら今回はマジで気持ちが良いっぽい。


(音だけ拾ったら、妙なことをしてるみたいに聞こえるような気もするが……まぁ、大変喜んでいただけているようで少し嬉しい)


「お客さん、こんな感じはどうです?」

「うん……。気持ちいい……」


 良い調子だ。俺にはマッサージの才能があるのかもしれない。


「はいはいはい! もう終了! 終わり! エリ姉ばっかズルい!」


 ……と、ここでヒナに強制終了させられてしまった。

 ヒナが無理やり俺たちを引き剥がす。


(せっかくマッサージ師としての愉悦を感じ始めてきたところなんだが……)


「ちょっとヒナ。なんか私の王様タイムだけ短くない?」

「エリ姉だけ一人で時間使いすぎなんだもんっ! 考えてる時間も王様タイムなんだからねっ」

「いや、そうかもだけど〜。……もう少しだけダメ?」

「ダメっ! 時間は有限なんでしょ!?」

「こらこら、二人とも〜。喧嘩しちゃダメ。さっき三姉妹協定で決めたの忘れちゃったの? 三姉妹は絶対に喧嘩しないこと、ユキくんを悲しませたらコチョコチョの刑に処す、って」


 アヤ姉が言うことには、いつの間にか新たな協定が結ばれていたみたいだ。

 まぁ、朝方そのことで俺が少し怒ってしまったから、三人が俺の気持ちを汲んでくれたのかもしれない。


「少々お聞きしても宜しいですか? その三姉妹協定というのは何です? 少し気になる響きを持っているんですが」


 アヤ姉が余計な単語を口にしたもんだから、マズいことに弥生が我が家の恥部に興味を抱いてしまった……。


 俺を姉妹でシェアする協定なんて弥生に知られちまったら……ハズいっ!


「まぁ、弥生、気にすん——」

「ああ、そっか。弥生はまだ知らないわよね。実は私たちね。ユキのことを——」


 エリカの奴……。なに得意げに説明してんだよ……。


「なるほど。よく理解しました。では、その協定に私も加えていただけませんか?」


「「「…………えっ!?」」」


 弥生が放った衝撃の要求に我が家の時間が一瞬だけ止まったような気がした……。


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 これからも頑張って一日一話更新していきたいと思います!


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