第2話 どうやら三女のヒナは俺と添い寝がしたいみたいです……。
〜三姉妹協定第二条〜
抜け駆け厳禁
破った悪い子はおしりペンペンの刑に処す!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一方的なシェア宣言の後、一応、拒絶の意思を示してみれば、俺を含めた四人で『三姉妹会議プラス』なるものが開催されてしまった。
会議の結果だけ伝えさせてもらうと、三対一で俺の意志は軽く踏み
六月のだいぶ暖かい日だったのに、心は冷え冷えだ。
(多数決は少し卑怯じゃないっすかねぇ?)
——そして、その日の夜。
眠りについてから、どれくらい経っただろうか、ベッド中モゾモゾと
薄暗い中、時計を見れば、眠ってから、まだ三十分しか経っていない。
「……すぴー。ヒナ、もうお腹いっぱいで食べられないよ〜。……むにゃむにゃ」
時計と反対方向から声がする。寝たまま首だけ振り向ければ、鼻と鼻ぶつかるほどの距離にヒナの顔。
ヒナの奴は、お腹いっぱいなんて言いつつも美味しそうに自分の髪の毛をムシャムシャしている。
色んな意味でビックリした。
「はぁ……。なんでヒナが俺のベッドで寝てるんだよ」
いくら鈍感な俺とはいえ、女の子が隣で寝ていたら安眠できやしない。
ちなみに、男が隣に寝ていたとしても、違う意味で眠れやしないだろう。
(取り敢えず、ヒナの部屋に運ぶか……)
「……すぴー。ユキ
「寝言か? まぁ、いい。お望み通りにしてやるよ。まったく……兄をアゴで使いやがって」
部屋に運ぶため、「よいしょ!」とヒナを肩に担ぐ。細身で背も低いため、ほとんど重さは感じない。
姉妹だってのに、たわわなアヤ姉とは発育の仕方が大違いだ。まぁ、三年後にはヒナもたわわになっているのかもしれないが……。
「……すぴー。ユキ
「寝言で注文付けやがって。……ていうか、ホントは起きてんだろ、お前」
「……すぴー。寝てるよ。……むにゃむにゃ」
……無理がある。寝てる奴は自分で寝てる、なんて言わん。
「とにかく、お前の部屋まで運ぶぞ。俺は眠いんだ。……いいな?」
ヒナの寝言(?)に付き合ってたら、いつまで経っても眠れやしない。
「……すぴー。
「別に恥ずかしいとかじゃなくて隣に人が居ると眠れないだけだから。あと『むにゃむにゃ』すんの忘れてるぞ」
「あっ。……すぴー。いけない、いけない。忘れてた〜。……むにゃむにゃ」
「…………」
相手をするのに疲れた俺は、寝言との会話を一旦打ち切り、ご要望通りヒナをお姫様抱っこしたまま自室のドアまで歩いていく。
そして、抱っこしたままだと流石にドアが開けづらいなぁ、なんて思っていると一人でにドアが開いた。
目の前には口元だけ笑顔のアヤ姉。
「ヒナちゃ〜ん? ユキくんの部屋で何してるのかなぁ〜?」
(め、目が全く笑ってない。口元だけ笑ってるせいで、むしろ、怖っ!)
「す、す、すぴー。ち、違うの、アヤお姉ちゃん。これは誤解なの。抜け駆けとかじゃないの。むにゃむにゃ」
この後に及んで、まだ狸寝入りを続行するとは、中々ヒナも根性が据わっている。
(この調子だと、ヒナの奴、あとでアヤ姉に叱られるんだろうな……)
「ごめんね、ユキくん。ヒナちゃんは私が引き受けるわね」
「ああ、そう……。じゃあ、あとはアヤ姉に任せるよ」
そう言って俺が床にヒナを置くと、アヤ姉が背後からヒナの腋の下に手を回して、そのままズリズリと引きずっていく。
相変わらず、ヒナは狸寝入りを決め込んでいて、ズリズリ引きずられていく姿は、不謹慎な話、まるで死体みたいだ……。
「……すぴー。助けて、ユキ
「まぁ、頑張れよー、ヒナー」
アヤ姉の部屋に引き摺り込まれていくヒナに軽く手を振ると、俺はドアを静かに閉めた。そして、ベットの上に横たり、ため息を一つ。
「なんか目が冴えちまったよ。もう一回、寝れっかなぁ」
この時の俺は、数時間後に『平等』の意味を見失うなんて思ってもいなかった……。
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