抜け駆け禁止のヤンデレ協定〜いや、どう考えてもウチの三姉妹たちは俺を独り占めしようと企んでいます

九夏なごむ

第1話 今日から俺は三姉妹にシェアされるそうです……。

     〜三姉妹協定第一条〜


        機会の平等


 一〜協定締結の日より私たち斑鳩三姉妹は斑鳩幸村をにシェアしなければならない。


 二〜平等にシェアした結果、自分が斑鳩幸村に選ばれなくても駄々をこねたりしないこと。


◇◆◇◆◇◆◇◆


『義理の美人姉妹とイチャイチャしながら暮らしていく』


 これは、友達の一人が俺に熱く語った夢。


 無慈悲な話だが、たぶんアイツの夢が叶うことはない。

 そもそも夢を叶えるためには両親に離婚してもらわにゃならん。いくら何でも無理筋だ。


「美人姉妹に囲まれちゃって、さぞや、幸村は幸せだろうな? しかも義理とか……。一回、お前は学校の便器にハマって抜けなくなっちゃって挙げ句の果て孤独にぜろ!」


 夢を熱く語ったアイツは俺をそう口撃こうげきするけど、アイツは何もわかっちゃいない。


 俺の父親と再婚した女性の連れ子。つまり、義理の姉妹たちと暮らし始めてから十年近く経つが、この俺、斑鳩幸村いかるがゆきむらからすれば、今の状況が幸せとは、どうしても思えないんだ……。


 斑鳩彩花いかるがあやか。俺の一つ上の高校三年生。


 たしかに美人に違いない。溢れんばかりの母性を備えた、しっかり者のお姉さんだ。

 世界で一番美人なお姉さんを一人あげろと言われれば、俺だってアヤ姉の名前を挙げるだろう。

 ちなみに、胸がいたずらにたわわだ。


 斑鳩絵梨花いかるがえりか。俺と同い年の高校二年生。


 なるほどキレイな奴だろう。今風に髪を茶色に染めつつも、実は芯のある真っ直ぐな奴だ。

 世界で一番キレイな女を決めなければならないのなら、俺は迷いなくエリカを推す。

 ちなみに、俺と目鼻立ちが何となく似ているそうだが、残念ながら俺はコイツみたいに美形ではない。

 ……マジで残念だ。


 斑鳩雛花いかるがひなか。俺の一つ下の高校一年生。


 おっしゃる通り可愛いかもしれない。クリクリとした丸い瞳の純真無垢な妹だ。

 世界で一番可愛い妹を見つけてこいと言われれば、俺は即座に彼女を連れて行く。

 ちなみに、年齢よりも大幅に言動が幼い。


 そんな最高の姉妹に囲まれているとなれば、ハタから見りゃあ、それはそれは幸せそうに見えるのかもしれない。


 でも、そうじゃないんだなぁ……。


 朝起きたら、なぜか目の前に三人がいて、じっと見つめられていることもしばしば。


 お風呂に入っていれば、いきなりドアを開けて乱入してくることなんて日常茶飯事。


(俺のプライバシーはどこへ消えた!?)


 ご飯の時なんて代わる代わる俺にあーんっしてきて、飯が思うように進まない。

 しかも、学校にすら逃げ場はない。なぜなら俺も含めて全員一緒の高校だから……。


 これ以外にも色々とってやつもあるが、それはさておき、どう考えても、この状況は幸せじゃないだろ……。


 そして、これだけでも毎日大変だってのに、本日さらなる不幸が突然俺に降りかかる……。

 それは、俺と姉妹たち四人で一緒に晩飯を食べていた時のこと。


「発表します! 今日からユキくんを私たち三人でシェアすることになりましたっ! もちろんキチンと平等にねっ」


 なんの前触れもなくアヤ姉がそう宣言する。


 全く意味がわからん。シェアって、ルームシェアとか、カーシェアとかのアレか?


 つまり……どういうことだ? まさか、今まで以上に束縛そくばくされる感じか?


「これ、三姉妹会議の決定事項だから。三人で協定も結んじゃったし、ユキも別に問題ないわよね? アヤ姉とヒナも決めた通り、ちゃんと平等にシェアしてよね? 三人のユキなんだから」


 エリカがそう念を押す。


 三姉妹会議ってなんだ? よくわからんが、コイツら、そんなもん開催してたのか……。


「異論ないよね、ユキにぃ?? お姉ちゃんたちも抜け駆けは絶対禁止なんだよ〜?」


 ヒナがニコリと笑う。


 異論しかない。俺にだって自由に生きる権利くらいあるはずだ。


「あの……? シェアって……。なんで急にそんな話になってんの……?」


 俺の問い掛けに三人が無言でニコニコと微笑む中、箸で摘んでいた唐揚げがポロリと床に落っこちた……。


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 ご一読いただき誠にありがとうございます。九夏なごむと申します。名前だけでも憶えていただけたら幸いです。

 もし続きが気になる、なんて思っていただけましたら、星、フォロー、応援よろしくお願いします! 確実に作者が大喜びします!

             ——九夏なごむ

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