想定外のダンジョン
「まさか……ダンジョン!?」
俺は目の前のコウモリのような生き物を見ながら呟く。
そんな馬鹿なことがあるわけないと思いながらも、状況的にそうとしか考えられない。
いやまてまて、仮にそうだとしてもどうしてこんなところに……
「とりあえず、調べるか……」
俺は覚悟を決めて、コウモリの死骸を跨ぎ、【隠密】スキルを使ってから階段を降りていく。
降りた先には燭台に火が灯された燭台通路が続いていた。そして、それと同時に下りたから燭台の火の灯りで見えてくるものもある。
「……確定だな……」
灯りで見えてきたのは地上で倒したコウモリの群れだった。
それも、数匹ではなく数十匹の単位で。
「マジかよ……」
とりあえずそれを確認してからまた階段を戻って地上に上がる。
「はぁ……やっぱりダンジョンだよな……だけどなんでこんなところに?
確かこの辺りにダンジョンはなかったはずなんだけどなぁ」
俺がダンジョンについて思い出す限り、この周辺にダンジョンは存在しなかった。
例え迷教がこのダンジョンを隠していたとしても、モンスターをどうにかできないと意味がない。
というかダンジョンからあのモンスターが溢れるだろう。
あのモンスターはこっそり【鑑定】してみたが、レベルは500前後。探索者になりたてなどでは倒せるようなレベルの敵じゃない。
だけど……
「これも竜の瞳が絡んでいるとしたら説明がつくんだよな」
迷教と竜の瞳は繋がっている可能性が高い。
竜の瞳の実行部隊であるメンバー達複数人でパーティーを組めば、あれぐらいなら問題ないだろう。
それに、ここがダンジョンなら迷教が莉奈を連れて行った理由もわかっていないんだ。
凛や杏樹を連れていかなかった時点で、今回は18歳のステータス持ちではなく、莉奈個人を狙っていることは明らかだからな。
人身売買が目的ではないだろ。
「そうなるとなにが目的か本格的にわからなくなってきたな」
わざわざダンジョンまで連れてきて何をしたいんだ?
モンスターのいるダンジョンに籠城するのが目的だったとしても、強い探索者がいたらすぐに突破されるだろう。
「……まあ、まずは莉奈を助け出すのが先かだな。
凛達にも連絡しといてと……」
俺はそう言ってから、スマホを取り出して凛達にメールを送る。
それと同時に探索者協会と警察にダンジョンが出現したことを報告する。
これで何かしらの動きはあるはず。
「さて、それじゃ行きますかね」
俺はそう言いながら、改めて【隠密】を発動させ、再び階段を下っていく。
階段を下りた先はさっき確認したときと変わらず、コウモリモンスターの群れがいた。
コウモリモンスターの数は多く、空を飛んでいることから普通に戦ったら攻撃は簡単に避けられて終わり。
だけど、俺は普通ではないし、攻撃手段は必中の遠距離攻撃。
めちゃくちゃ相性はいいんだ。
「複数捕捉。魔法矢」
俺は【複数捕捉】ですべてのコウモリモンスターを捕捉してから必中になった魔法矢を弓につがえて射ち放つ。
射ち放たれた透明な矢は、次々とコウモリモンスターを貫き、壁に張り付けていき、そして全て絶命させた。
「……よし。うまくいったな」
思っていたよりうまくいった。
両手いっぱいに【魔法矢】を作り出すよりはこっちの方がMPの消費は少ないと考えてたけど……
まあ、喜んでばかりはいられないんだ。
どんどんいこうか。
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