買い物
「ふう……これで全部か?」
「うん!」
「は、はい!」
「……大丈夫だと思う」
なんとか、何事もなく全員がそれぞれの食材を選び終わった。
正直な話、三人が絡まれているのを見つけた時はどうしたものかと考えたけど、特に問題なく選ぶことができてよかった。
そして、俺の問いかけに対して元気よく返事をする凛と詰まりながらも返事する莉奈。そして少し遅れて杏樹も返事をした。
今回は何日か家から出ないように、食材やらは買いだめしといた方が良いという俺のアドバイスの元、スーパーに寄ったわけだが……
「なんか、色々とカゴに入れまくっていたけどそんなに必要なものか?」
凛達は、パッパと慣れたように一人一台ずつカートを押して店内を巡っていたんだけど、途中途中で色々なものを入れていった。
野菜に始まり、魚とか肉とかも。
特に魚や肉はそこまでではなかったけど、野菜は結構買っていた。
あとは……お菓子の類い。
ちなみに、お菓子は杏樹が大量に買い込んでいて、凛と莉奈は普通って思える一つ二つぐらいだ。
「いやいや、杏樹。女の子に言うのもなんだけどそんなにお菓子食べてるんだったら、太るんじゃないか?」
「私は全然平気。むしろお金があったらもっと食べたい」
「杏樹は太りにくい体質なんですよ。……本当に羨ましいです」
「へぇ~」
俺が杏樹にそう言うと、杏樹が胸を張って自慢げに言った。
凛と莉奈は杏樹の体型をじっと見つめながら呟く。
まあ、確かにスタイルが良いのは認めるが……
「だからって二人もそこまで気にする必要はないと思うけどな~」
そう言いながら、二人のお腹辺りを見る。
俺の視線に気づいた二人は、「うぅ……」と声を出し、顔を赤くしながら自分のお腹を触っている。
「まあ、あんまりダイエットとかして無理すんなよ」
「は、はい」
「分かりました」
「よし。そんじゃ、会計を済ませちゃうか」
俺はそう言うとレジへと向かって歩いていく。
三人もそれについてくる。
そして、会計の列に並ぶと、店員さんが俺達を見て驚いた表情をしていた。
まあ、これを見たらなぁ……
俺達が一人一台、それも買い物かごを上下に二つずつ設置したショッピングカートを持ってきている。
それもそれぞれたっぷりと。
まあ、とりあえずレジの人に一言言いたい。
マジごめん。
「いっぱい買いましたね~」
「そうだな……」
帰り道。
大量に買い込んだ物を【アイテムボックス】に入れて歩いている。
ついでに三人の分も。
これも買い物前みたいに帰り道で三人が変な奴らに絡まれるのを防止する為である。
まあ、こればっかりはな。
「でも最初はこんなに買うなんて思ってませんでしたよ」
「わ、私も。ちょっと買いすぎちゃいましたかね?」
「ん、大丈夫だと思う」
三人が楽しそうに会話をしている。
それを眺めていると、ふと疑問に思ったことがある。
それは、なんで、三人は迷教の信者達に絡まれたんだ?ということだ。
今までの経験上、こういうのには絶対と言って良いほど、何かしらまたあると思ったけど……
「なにもなかったなぁ……」
俺の独り言は誰にも聞かれることなく、風にさらわれていく。
それならそれで別に構わないんだけど、なんか嫌な予感がするんだよなぁ。
「どうしました?」
「いや、なんでもないよ」
「そうですか?あ、そうだ!楓さんも今日は一緒にご飯を食べませんか?」
「え、いいのか?」
「はい!莉奈も杏樹も良いよね?」
「も、もちろん!」
「大丈夫」
「そっか。じゃあ、お願いしようかな」
まあ、なにもないならそれでいいんだ。
せっかく誘ってくれたわけだし、断る理由もないからな。それにしても、こうして誰かと一緒に食べるのは久しぶりになる。
ありがたく頂くことにしよう。
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