プロローグ
「ようやく魔王と戦うのか……」
「そうだね。んじゃ入ろうか」
「待て」
「どうしたんだ?勇者」
「いや待てよ?俺家に鍵かけたっけ?」
「……今?」
「いや盗賊よ。今なんだ。わかるか?俺は今、魔王の前に来ている。そんな状況で家の鍵がかかってなかったからって理由で負けたら、そりゃもうね?」
「いや、知らんし」
「と言うより勇者!?まさか帰る気じゃないだろうな!既に三回も逃げようとしているのだぞ勇者!」
「いや、それだけじゃない、それ以外にもいろいろ……」
「また出た。勇者の悪い癖」
「いやいや、これで負けたらシャレにならない訳。で、俺はこの事実を確認しなきゃ多分本気になれない訳」
「だから逃げるのかい?」
「いいや逃げるんじゃない……。後ろ向きに全力疾走するだけさ!」
「あーっ!勇者が逃げた!勇者がまた逃げた!おい魔法使い!何とかしろ!」
「まーまー。どうせまた家に帰るだけだしー。じゃー追いかけよっかー?」
「ん。わかった」
「あぁもう……!流石にこれ以上は文句を言うからな!」
一方その頃魔王城奥にて。
「……遅いな勇者の」
「ねー。一応気配はしたんだけどー。遠ざかって行くんだけどー」
「ま、魔王様!」
「なんだ?」
「勇者が……逃げました」
「……え?」
「マジで?ヤバいじゃん(笑)」
「お、追えーっ!勇者を連れ戻せ!なるべく傷つけないようにな!」
「は、はいーっ!」
こうして勇者一行の逃走劇が始まる……。
『逃げてるんじゃない、いつだって後ろ向きに全力疾走してるだけさ!』 常闇の霊夜 @kakinatireiya
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