捨てられ聖女のモンスター保育園〜スパルタな異世界でスキル「褒めて伸ばす」で可愛い子たちが伝説級の幻獣になりました!?~
宮之みやこ
第1話 こんにちは、謎の魔法陣です
静まり返った保育園には、わたし以外誰もいなかった。
それもそのはずで、時刻はもうすぐ午後九時になろうとしている。
どうしても今日中に準備しておきたいものがあったから頑張っていたけど、ずいぶん遅くなっちゃったな……。
外を見ながらわたしはためいきをついた。
わたしの名前は
短大卒業後からこの『はなのき保育園』で働き始めてはや三年。最近はだいぶ仕事にも慣れてきて、毎日がすごく楽しい。全然恋愛している余裕はないけれど、子どもたちの笑顔が可愛いからいくらでもがんばれちゃう。
「さすがに八月でも、この時間になると暗いなぁ。早く終わらせて帰ろっと」
Tシャツにジャージに保育士エプロンという格好で、わたしはせっせと掃き掃除をしていた。これを終えれば、あとは戸締りするだけ。そう思って玄関を掃いていたわたしの耳に突然、少女の声が飛び込んでくる。
「——誰か、助けてっ……!」
それは小さな声だったけれど、聴き間違いと言うにはあまりにはっきりしていた。
えっ、なに……? もしかして、痴漢!? それとも人さらい!?
わたしは使っていたほうきを握りしめ、急いで声が聞こえた方向に走る。もし暴漢がいたら……と、とりあえずこのほうきで叩いてやる……!
ビクビクしながら保育園の門を出たところで、わたしは飛び込んできた光景にぽかんと口を開けた。その拍子に、手からずるりとほうきが滑り落ちる。
——目の前では、女子高生がアスファルトの地面に、腰までどっぷりと
……待ってどんな状況!?
わたしは目を丸くした。
アスファルトには、丸くて白い陣のような模様が浮かび上がっている。その真ん中では、セーラー服の女子高生が吸い込まれまいと、必死に地面に捕まろうとしていた。
けれど、突起も何もない地面ではそれも難しい。彼女はずぶ……ずぶ……と底なし沼にハマるように(と言っても実物は見たことないんだけど……)、少しずつ体を吸い込まれていた。
な、なにかよくわからないけど、このままだと大変なのだけはわかる!
「待っててね! 今助けるから!」
わたしはほうきを投げ捨て、あわてて駆け寄った。それから女子高生の手を掴んで、全力で引っ張り出そうと試みる。
「ふんぬーーー!!!」
というかなんなのこれ!? 道路に吸い込まれるってなに!? この変な模様はマンガで見たことあるけど、いわゆる魔法陣だよね? それがなんで現代日本に!?
頭の中はハテナでいっぱいだった。でも、そんなことを考えていたのがよくなかったのかもしれない。女子高生を助け出すどころか、わたしまでじわじわと引っ張られはじめてしまったのだ。
ま、まずい。これはまずいよ~~~!
「誰か、助けてーっ!!!」
わたしはありったけの声で叫んだ。いつも子どもたちに呼びかけるのに大きな声を出しているから、声量は十分なはず。お願い、誰か来て!
でも、そんなわたしの叫び声に応えたのは、人ではなく地面の方。呼応するように、ずずず……と引っ張る力が強くなる。まるで魔法陣が焦って連れて行こうとしているみたい。
「う、うう……!」
わたしは全力で踏ん張った。これでもかと踏ん張った。運動会の綱引きでもこんなに力を出したことはないってくらい踏ん張った。
でもわたしの頑張りもむなしく、魔法陣は突然ゴォオオオと音を立ててダイ●ンの掃除機張りの吸引力を発揮したかと思うと、わたしごと女子高生を吸い込んだのだった。
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