チート能力で異世界満喫しようとしたら神が本気出して潰しに来やがった

@sakanana_

第1話 主人公はチート野郎

「なんなんだよ!ぼったくりじゃねーか!」

俺は叫んだ。

周りの奴らが俺を見る。

「ひどい言われようですな。でもこれが正規の値段ですよ。」

道具屋の親父がにこやかに応える。

「この世界の物価はどうなってんだ!?」


薬草 10000ゴールド

薬草 10000ゴールド

薬草 10000ゴールド

薬草 10000ゴールド


(しかも、なぜ同じ物を陳列している?『この世界』は持ち物に個数制限設定している系か?)

そこへ普通の冒険者の格好した少女が割り込んできた。

「おっさーん薬草ちょーだい!」

「あいよ、一つ100ゴールドだよ」


… … …

「やっぱり、ぼったくりじゃねーか!」

「はっはっは。お前さんも相当のケチなやつだね…『特権階級』の称号持ってるくせにさあ。」

(称号…?!)

俺は急いでステータス画面を開いた。称号…、特権階級…これか!


称号:特権階級

所持ゴールドが一億を超えた者に与えられる。


「国のお達しで、『特権階級』の称号持つ者には通常の値段の100倍で売ることが出来るってなってんだよ。」

「……チッ」


確かに俺の所持金は無限だ。一億以上あるのも事実。薬草だって買い渋るわけじゃない。そういうカラクリがあるのなら、そういうものだろう。


しかし買うにしても、なぜ同じ薬草が四つも並んでんだ?作ったやつは馬鹿か雑か?

面倒だ。一個だけ買っていこう。

欄の一番の薬草だけ買って俺は道具屋を後にした。



事の発端話こうだ。


ここは異世界。ファンタジーの世界。ゲームの世界に異世界転生というやつだ。

ただ、厄介な事にそれがただのゲームの世界じゃないって事。

正規に発売や公開されたゲームではなく、フリーゲーム。一個人が作ったゲームだ。

俺、名前は生前のアカウント名「EM」で通している。死ぬ前は色々なゲームをクリアしまくって、それでフリゲに手を出した。そこでも色々クリアしてレビューとかして、楽しんでいた。

それがだ。工事現場の近く歩いてたら急に鉄柱が落ちてぐしゃっと潰れて死んじまった。


そこで「神様」ってやつがあんまりにも可哀想な死に方だったからゲームの世界に異世界転生させて、優雅に自由に暮らせるようにしてくれた。

それは一つの世界だけじゃない。そのゲームに課せられている「魔王を倒す」とか「ヒロインと結ばれる」とか、エンディングに行くことができれば他のゲームの世界でまた、課せた目標に挑戦する事ができるって事だ。

まあ、これは「フリーゲームの中」だけだが、有名な作品とか生きてる時にクリアした覚えのあるゲームの世界で十分楽しんだ。

そう、「苦労」も「努力」もする事なく楽しめる能力を俺は持っているのだ。


それが「デバック」

ゲームの中の間違いを発見、修正ってのが普通の見方だろう。でも俺は違う。この能力でイベントをすっ飛ばすことや、大金を手に入れる事、簡単に敵を倒せることを熟知していた。

生前もそうやってクリスしてたからな…デバックじゃなくて所謂データいじって楽してクリアというやつだ。


このデバック能力で俺ができることは

侵入不可能な場所にも行ける「すり抜け」

開けられない宝箱を開ける「スイッチ」

そして、戦闘を勝った事にする「強制勝利」

イベントを一気にすっ飛ばす「番号管理」

ってやつだ。


これで以前行った世界では、やりたいことやったあとボスなど倒す事なくクリアしたり、お約束の「序盤にある取れない最強の剣」を序盤に入手して楽してクリアとか。

勝手気ままにクリアあいていたのに、だ。


この世界は違う。今までとは何かが違う。


ったく街の外まで出るのが面倒だ。

「すり抜け」能力を使う。

透明人間…ではない。物理干渉がなくなったので壁だろうが、川だろうが無視して通り過ぎて…ひと集団でが並列で歩いてきている。

キャラクターは場合によってはすり抜けできない。迂回するか…

俺は踵を返した時…

ダダダダダダッツ!!


ただの平民がものすごい速さで突進してきた。

手には包丁。

「なっ、」


俺の最後の言葉は「なっ」に、なった。


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