第016話 謎の少年の正体
「ふふふん、ふふふん、ふんふんふーん」
僕は寮に戻ってお弁当の準備をする。
昨日、学園長が鳥を丸焦げにしてしまった時、僕は頭に唐揚げが思い浮かんだ。
だから今日のお弁当のメインのおかずは唐揚げ。鳥の唐揚げは勿論美味しいけど、羽根つきトカゲの唐揚げはもっと美味しい。
だから今日は朝から羽根つきトカゲを獲ってきた。
「よし、完成だ」
そして、皆の分のお弁当が完成した。
今度は朝食を作る。今日の朝食は、ベーコンエッグにトースト、それにコンソメスープとサラダを添えた。飲み物はミルクと、コーヒー、お茶から好きな物を。
「レイさん、おはようございます」
「翡翠さん、おはようございます。もうすぐできますよ」
「そうですか。それじゃあ、今日も起こしてきますね」
「ありがとうございます。助かります」
配膳がもうすぐ終わる頃に翡翠さんがやってきて、また皆を起こして来てくれる。
『いただきます!!』
今日も皆そろって朝食を食べた。
「これ、今日のお弁当です。皆さん持っていってくださいね」
朝食を食べ終わった後、食器を片付けてテーブルに皆のお弁当を置く。
「うわぁ、本当に用意してくれたんだ。中はどんななの?」
「それは後でのお楽しみです」
興味津々のラピスさんの質問には答えず、僕は口に人差し指を当てて口端を吊り上げた。
今中身を知ってしまうのは勿体ない。蓋を開けるまでのワクワク感が消えてしまう。折角だからお昼までワクワクしながら楽しみに待ってもらいたかった。
「分かった。楽しみにしてるね!!」
それを理解してくれたラピスさんは嬉しそうにお弁当箱を持っていった。
「私も楽しみにしていますね」
「はい。喜んでいただけるといいんですけど」
「レイさんの料理なら大丈夫ですよ」
最初にお弁当を欲しいと言ってくれた翡翠さんも嬉しそうに持っていく。セルレさんもコクヨウさんも同じだ。
「全然期待なんてしてないから」
「はい。食べてもらえるだけで嬉しいです」
「ふんっ」
ルビィさんだけは不機嫌そうに持っていく。
なんだかんだ朝食も食べてくれたし、お昼も食べてくれるんじゃないかと思う。
「さて今日もやりますか」
皆が学校へ行くのを見送って、また寮母のお仕事を始めるのであった。
◆ ◆ ◆
――コンコンッ
「入れ」
ワシがちょうど執務室についた頃、ノックされたので、魔法でドアを開けて中に招き入れる。
「失礼します」
入室してきたのはワイバーンの討伐を任せていた第五部隊の隊長フィールナだ。
彼女の衣服には損傷はないし、怪我なども見当たらない。無事ワイバーンの討伐任務を終えて帰還したのだろう。
「任務ご苦労。報告を頼む」
「はっ。本日チカイーナ山で目撃されたワイバーンの群れの討伐に向かい、四匹のワイバーンは倒したのですが、残り一体の討伐が叶いませんでした。そのワイバーンは異常種で超級を超える強さがあり、我らの力及ばず、敗走いたしました」
「なんじゃと!? それはマズい。すぐに応援を要請して討伐せねばなるまい」
特級のモンスターとなれば、街一つくらいすぐに壊滅してもおかしくない。一刻も早く討伐しなければ、多大な被害が出てしまう。
至急特級以上のモンスターに対応可能な
「その必要はありません」
しかし、なぜかフィールナに止められてしまった。
「どういうことじゃ?」
「そのワイバーンは倒されました」
「ん? お主たちは勝てなかったんじゃろ?」
先ほどの報告と矛盾していて、頭の上に疑問符が浮かぶ。
「はい。倒したのは我らではありません。一人の少年です」
「なにぃ!?」
俄かには信じがたい。
「我らが負傷者を連れて逃げ出したところ、我らは不思議な少年と出会いました。
緊急事態だったので逃げるように言ったのですが、その少年は状況を理解していないのか、ワイバーンを譲ってほしいと言ってきまして……何を言ってるんだと思ったんですが、諦める様子がなさそうですし、その時は一刻を争う状況だったので、適当に返事をして撤退を優先しました。
その直後、何か大きな物が落下する音が聞こえて振り返ると、首の落ちたワイバーンが横たわり、大きな解体ナイフのような武器を持った少年が立っていたのです」
「意味が分からん……」
続けられた報告にワシは呆然とする。
あまりに情報が多すぎる。
「はい。私も意味が分かりませんでした。そして、その少年はワイバーンの死体を綺麗さっぱり消してしまうと、鼻歌まじりに我らに頭を下げて去っていきました」
特級モンスターを鼻歌まじりに倒してしまう少年か……それは気になるな。
「その少年の特徴は?」
「銀髪で青い瞳の、戦闘なんてできそうにない線の細い少年でした」
「まさか……な……」
フィールナの報告を聞いて私の脳裏に一人の少年が浮かんだ。
「何か?」
「いや、なんでもない。ワイバーンは全て討伐されたというのであればひとまず問題あるまい。その少年に関してはワシが調べてみよう」
しかし、まだ確証があるわけじゃない。不必要に話して期待させるわけにもいかんじゃろう。
怪訝そうな表情を浮かべたフィールナにワシは首を振って誤魔化した。
「承知しました」
「しっかり体を休めるように。下がってよいぞ」
「はっ。失礼いたします」
フィールナが部屋を出ていった後、ワシは考える。
彼女が言っていた少年の特徴に当てはまる人物を一人知っている。
それは先日この学校にやってきたばかりのレイ・アストラルだ。レイは、銀髪で青い瞳をしていて一見戦いなどできそうもない。
でも、師匠の孫だし、昨日の規格外の能力のこともある。レイが戦えても不思議じゃない。何より、あやつならどうにかしまいそうな気がする。
「確かめてみるしかあるまいな」
一人で考えたところで答えは出ない。
真相を確かめるため、寮へと向かった。
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