君は今日、空を飛ぶ

@potato_0624

終わり

下手だね。













「今日のショーすごかったね!!!お客さんにこにこーってしてたよ!」

ある12月の中旬。以前やったクリスマスショーが大きな反響を及び、以前とは少し内容を変えてやってみたのだ。予想より多くの客が集まり、スタンディングオベーションも起こったすごいショーになった。

「そうだな!!!!今まで練習した甲斐があったというものだ!」

「今回の歌のパートは難しかったけど寧々が頑張ってくれたからね」

「あっ、当たり前でしょ、、、、、、」

「次回もよろしく頼むぞ!」

「「「うん!」」」

そんなことを話していたとき。ふと着ぐるみに声をかけられた。

「天馬司を呼んでいる方がいる。」

「オレをか?」

「そうだ」

なんだろう、、?もしや、オレの演技が凄すぎて直接感想を言いたかったとか、、?

「わー!誰だろー!」

「わかった!!!今行く!!」

先に着替えておいてくれ、そう言って、もしかしたら、に心を躍らせながら外へと出ていった。




「お前か!!!!」

「はい。」

目の前にいたのは、濃い紫色の髪をした顔の整った女性だった。

「それで、用とはなんだ?」

「あなた、笑うのが下手だね」

は?一瞬、何を言われたのか混乱してしまった。

笑うのが下手?どういうことだ?演技が下手ということか?このオレが?

「はは、おまえ、何を言っているんだ?」

「何を?その通りだよ。笑うのが下手。」

「そろそろいい加減にしてくれ」

正直怒りはもう限界に達していた。まさか、と思っていたら逆に非難されるなんて。おかしいだろ。

だって自分を司に当てはめて見てくれ。イライラするだろ。おかしいだろ?

「あなた、見たところだと私と同い年だよね」

「お前は何歳なんだ。」

「18。」

「ふーん。」

興味なんてなかった。自分をバカにしてきたやつの話なんか聞きたくない。

「あなた、なんて名前なの?」

「司だ。天馬司。」

「へぇ。私は朝比奈まふゆ。よろしくね。天馬くん」

「はぁ、帰してくれないか?仲間が待ってる。」

まふゆ〜!誰かが呼んでいる。

まふゆ〜!まふゆ〜?まふゆ〜!

なぜか、とても冷たく感じる声だった。

「あ、お母さんが呼んでる。またね」

「ああ。」

はぁ、やっと帰ったか。そそくさと更衣室に行きぱぱっと着替えて帰った。










あなた、笑うのが下手だね。



ショーが終わり、いよいよ三学期も終盤という所までになった。

「ううー!司ー!お前と離れるのは嫌だァ〜!!!」

「司、お前どこの大学行くの?」

「司と同じところに行けるなら死ぬ気で勉強するわw」

「分かるー!天馬と離れたくねぇよー!」

司は、ショーが終わっても尚、あの言葉について考えていた。


あなた、笑うのが下手だね。



どういう意味なのだろう。笑うのが下手?笑うのが下手って演技が下手ってことなのだろうか?

うーん、、、


「おーい、天馬?」

「 ん?ああ、済まない、少し考えごとをしていてな!」

「天馬が考え事?珍しいな!でさでさ、____」

うーん、、、やっぱり意味がわからない、、

「天馬?なんかあったか?さっきからなんか辛そうな顔してるけど、」

な、

「大丈夫だ!!!!」

「そうか!今はにこにこしてるしな!」


「よよよ、、、、、、司くんと離れたくないねぇ、、、」


ん?



「分かるー!、、、、、、ってお前、2のBの神代じゃねーか!」

どこから、というかいつから紛れ込んでいたのか、そこに居たのは類だった。

時折こいつやばいからな、、

キーンコーンカーンコーン

予鈴がなる。

「おい神代、早く帰らないと先生に怒られるぞ!」

「もともと僕はちゃんと授業に、、、、ああ、そうだね」

「そうだね、とか言いながらガッツリ司の隣にいんじゃねーか、、」

ガラララッ

「はい、じゃあ号れ、、、、い、、、?お前、神代か?」

「はい(๑˙╰╯˙๑)」

かなりの猛者のようだ。

ヒソヒソ。

ん?

ヒソヒソヒソ。

『ねぇ、あの子神代くんなの、、?』

『えー、やばーw学校爆破させたりとかしたんでしょ?w』

『えー、変人じゃんw関わりたくねーw』

、、、、、、反応しない、、、反応しない、、、、

『天馬くんもあの神代とかいう奴と絡んでるから変人って呼ばれるんじゃない、、?

『かわいそー、、』

イライラする。類のことを悪く言うやつなんか消えればいい。

オレは目を細めてその女子たちを睨んだ。

『あ、ばれてた、?やば、、』

その子たちは慌てて前を向いた。

そういえば、久しぶりにあんな顔したかもな、

「神代、、、せめて来るのは予鈴から本鈴までのと

きにしてくれ。」

「よよ、、、分かりました、、、、、、またね、司くん」

ガララ、とドアを開けて教室から出ていこうとしたとき、悲しそうな顔をしていた神代類を、天馬司は見逃さなかった。

『は?睨まれたんだけど』

『なに?どうしたん?』

『なんもない』

最低なのはどっちだよ。













昼休み。

「ねえ、てんまくーん!ご飯、一緒に食べてもいいかな?♡」

そんな気持ち悪い声で話しかけてきたのはさっきの女子たちだった。

はぁ、こいつらかよ

すぐに顔を笑顔に直して、

「済まない、生憎先約がいるんだ、、、また今度でもいいか?」

一生話しかけてくんな、の意を込めて返事をした。

「うん♡いいよー!じゃあまたね♡」

「ああ!、、、、、、、はぁ、きもちわる。」

本当に天馬司か?と疑ってしまうような言葉を吐いて、彼は屋上へと向かっていった。








「ただいまー!」

「お、お兄ちゃん、、?どうしたの?」

「どうって、なんだ?」

「な、なんでもない!」

そう言うと、咲希はそそくさと部屋へ行ってしまった。

なんなんだ、、、、

水で手を濡らして、泡を手に乗せる。ふと鏡を見てみると、そこには無表情の自分がいた。

「あ、もしかして、、、」

泡を水で洗い流して、うがいをする。

「よし、、、。」

天馬司の完成だ!

「咲希、さっきはどうしたんだ?」

「え、だってお兄ちゃ、、、あ、あれ?なんでもないよ!」

「そうか?なら良かった!」

やっぱり、顔のことだったか、別にとくにそんなこと無かったと思うがな、

そんなことを考えながら部屋に向かった。








次の朝。ピンポーンと呼び鈴がなった。

「はーい。司くん?分かりました!司くん、お友達が呼んでるわ!」

「あ、はーい」

そこに居たのはあのときの女だった。

「朝比奈、、?」

「うん。この間のことを伝えに来たの。」

この前あった時とはまるで違うニコニコとした顔ではなすまふゆ。オレは、その表情、声色で全てを察した。





「で、話ってなんだ?」

「あなた、頭悪そうだから、この間のの意味、分かってなさそうだったから。」

「お前、、、そろそろ人をそうやってバカにするの、やめた方がいいぞ、、?友達もいなくなるし、」

「いいよ。元々本物の友達なんていないし。あなたにしかこんなこと言ってないから。」

そういうことじゃないんだよ、、といいかけた時、まふゆがなにかをいおうとしたのでそこで1回とめた。

「あなたのその笑顔、全部偽物でしょう?」

は?何を言ってるんだこいつ、

「何回も思ったのだが、オレの演技が下手ということか?それならそれでしっかり言ってくれ。今後改善するから。」

もうさすがにそんな話は聞きたくなかった。演技が下手ってことか、と考える度なんでだろう、となってしまう。

「そのままの意味だよ。笑ってる顔、ぜんぶ偽物でしょう?」

「は?はは、まさかな」

自分が偽物の笑顔を作っているなんて考えもしなかった。スターはいつでも、笑っているものだろう?

「ほら、今だって。」

「この顔か?どこが偽物なんだ?」

にこ、とはにかんで見せる。

「その顔だよ。気持ち悪い。もう救いようのない人みたい。」

人に向かってもう救いようのない人などと言う言葉を使うんじゃない。

「それを言うならお前だってそうじゃないか。まるで死んだ魚のような目をしているぞ?」

「お互い様でしょ。私は宮女だから。またね。」

「朝比奈せんぱーい!」

「ふふ、おはよう。今日も元気だね」

まふゆがつくったその笑顔は、全く感情が籠っていなかった。

_____気持ち悪い。

そういうのも、無理はないかもしれないな。









「あら、おはよう!司くんね?わかった!!待っててね」

「ありがとうございます!」

次の日の朝。その日もまた、まふゆは司の家へ来た。

「じゃあ、いってきます!」

「気をつけてねー!」


パタン。がチャリ。





、、、、、、、、、、、、


「で、何の用だ?」

「ううん。ただ単に来てみただけ。わかった?私の言葉の意味。」

「はは、理解し難いよ。」

「その顔だよ。何回言ったらわかるの?」

別に言わなくていい。そんな気持ちを心の奥底に溜めて、できる限り相手が不快にならないような反応を心がけた。

「そうか、、、でも、もう言わなくて大丈夫だぞ?毎朝毎朝オレと行くのも嫌だろう?」

「ふーん。あ、あの子、後輩じゃない?」

あ、

「司先輩!、、、、、、と、そちらの方は?」

「冬弥!この人は最近仲良くなった朝比奈さんだ!」

、、、、、、まふゆは死んだ目をして冬弥に笑いかけた。

「ふふ、朝比奈まふゆです。この間ショーを観させてもらって、それから仲良くなったんだよ。」

「そ、そうなんですか!俺はこれで。」

そう言うと、冬弥は足早に学校へ向かってしまった。

「お前の笑顔が悪かったんじゃないか?」

「天馬くんのでしょ。じゃあ、またね」

そう言うと、朝比奈は学校へ向かっていった。

「 」











「あら?朝比奈さん?今日は土曜日だけど?」

「すみません、でも少し用事がありまして、、、本当に申し訳ありません、、今天馬くんは呼んで頂けますか?」

次の日。土曜日だった。その日も、朝比奈は来た。

「あら、司くんに用事があるのね!大丈夫よ、今呼んでくるわ!」


つかさくーん!


玄関から、母親の声。

ああ、朝比奈か。


はーい!!!


元気な声でそう返したあと、たたた、と階段をおりて玄関へと向かった。


「天馬くん、それにお母さん、こんな朝早くに、しかも土曜日にごめんなさい!」

「いいのよ!」


じゃあ行ってくるな!


がチャリ。





「で、なんなん____」

「待って!!!黙って!!!!」


「あら?まふゆ?どうしてこんなところにいるの?」

「お、お母さん!あのね、お友達のおうちで、勉強会をしようってことになったの。」

「あら、偉いわね!勉強ならいくらでもしなさい!、、、、、、でもまふゆ、筆記用具はどうしたの?」

ビリ、離れたところにいてもまふゆに圧をかけていることは充分わかった。

「お友達が貸してくれるの。」

「あら、そうなのね!お母さんはこれから買い物に行ってくるからね!きょうはまふゆの好きなものを作るからね!勉強の結果、お母さんにみせてね。」

にこ、まふゆは笑顔を作ってこう答えた。


「うん、わかった。お母さんの料理、楽しみにしてるね。勉強会、いってきます。」

ぞわ、それは、まるで感情をなくした人が作るような、そんな笑みだった。



「ごめん。」

「いや、大丈夫だ。それにしても、、、勉強会、するか?」

「いい。家で、した振りをすればいいだけ。」


「そうか。で、朝比奈。用はなんだ?」

本題を思い出した司は朝比奈に問いかけた。ここ3日間、ずっと司の家に通っている。


「ねぇ、」












______無理して笑うくらいなんだったら死んだ方がマシなんじゃない?




















二人の間に、ピリついた空気が流れる。


「は?何を言っているんだ?」

「何回も言ってる。そのままの意味だよ」

「つまりお前は、一緒に自殺しないか、と誘いに来たということか?そうじゃないとしても、そう読み取れてしまうぞ」

「あってるよ。よくわかったね。頭悪そうなのに。」


_____それじゃ、行こうか





「おい、オレはまだいいと言っていないぞ?」

「なんで?未練でもあるの?」

「ああ、沢山あるさ。オレにはスターになるという夢がある。そして、スターになって妹にそのショーを見せてやるんだ。それを叶えてからじゃないと死ねないな。」

そう言うと、まふゆは少し悲しそうな顔をしたあと、

「そう。」

と一言呟いた。

「わかった。またね」

「ああ。」

あのとき、なぜオレは気づかなかったんだ?

そろそろ限界を感じているということを。










「朝比奈センパイ、、、、、、!!!!!!!!!」

「朝比奈先輩、、、、、、、!!!!!!!!!」

「まふゆ、、、お願いだから、、、、、、!!!!

死なないで、、、、、、!!!!!」

「まふゆ、、、、?!返事してよ!!!!」

「頭を揺らすな!!!!!!死んでしまうぞ?!」






月曜日。

その日、宮女は大騒ぎだった。

隣で先輩、先輩と泣き叫ぶ後輩。

死なないで、と懇願するともだち。

頭を揺らすな、と怒鳴っている顔の青ざめた先生たち。



何も、誰も私のことを理解してない。なのに死ぬな死ぬななんて、バカみたい。何も知らないくせに。知った顔しないでよ。


そんな時、一人の男はこう呟いた。


「そうか、まふゆは1人で死んだんだな!」






__なあ、1人で、寂しくないのか?


__全然。寧ろ一人の方がいい。誰にも邪魔されな

 いから。


__そうか。でも、まふゆの言っていることは

あながち間違っていなかったな。


__優等生だからね。



__オレも、もう無理するのはやめるよ。スターだと

  か、そういうのはやめにする。


__あなたには居場所があるじゃない。



__そうだな。だけど、無理に生きていなくてもいい

ような気がしてきたんだ。いつか誰かがオレに注

目してくれる。そんないつかなんて、いらない

もんな。


__天馬くんらしくないね



__そう。






翌日、神山高校も大騒ぎだった。





朝。突如司から送られた意味深なメール。


『/pp#@xA4:.pg/ia@1:!!!』

それは、英語のキーボードにした時に日本語のフリック入力のやり方で文字を打つのだ。これを解読すると、

『今までありがとう!また会おう!』

となる。


そのメールを見た教師たちは急いで司の家へと向かっていった。

そのメールは家族にも送られていたようで、母親はどういうことなの?とぶるぶると震えていた。


「司、、、?怖い、どういうことなの?ただのイタズラだといいんだけど、、」







場所が変わり、神山高校の屋上。




「こんなにも世界は広かったのか。あ、思い出した。セカイになにか置いていこう、、、オレのカーディガンでいいか。」


シャラララー.*・゚ .゚・*.


「よし。」


『今までありがとう。いつも味方になってくれて、サポートしてくれてありがとう!とても嬉しかったぞ!ミクにカイトにリンにレンにルカにメイコ!ありがとう!この思いは類に託すよ。またな!』


ずっと、好きだった人。

すごく無茶な演出をお願いしてくるけど、優しくて。声がすごく好きだったな、とても綺麗な目をしていて、オレを見ている時の目は特に好きだった。何でも全力で、仲間のことも気にかけていて、すごく素敵だったなぁ、たまに喧嘩することもあったけど、いつもオレの味方で。ああ、最期くらい、この想いを伝えても良かったのかもな。


「この想いも、セカイに反映されないだろうか。」


なんてことを思っていたら、屋上のようなものができて、その中心には、ハートの形をした風船が沢山着いた紫と水色の気が生えた。


「反映されたのか、、?はは、これで安心できるな。」


シャラララー


「司くんっ、、、、!!!!!!どうしたんだい?君、急に変な暗号をよこして、また会おうってどういうことだい?!」


「類。今までありがとう。」

「ど、どう言う____」

「大好きだったよ。」

「え、?」

「このセカイ、この想いは類に託すから。」

「どういうこと?」

「そのままの意味だ。類が最高の演出家になって、主役となるスターを輝かせてあげてくれ。」

「なんで?」

「またね。」

「まっ_____!!」


シャラララー




「さて、そろそろ行くか。」


たん。


軽快な音を立てて、一人の男がはねる。

べちゃ。


まるで、アイスが落ちたときのように。


その男の周りには花がひらひらと舞い、

綺麗な髪、その瞳に大層映えていた。


「 」















__まふゆか、、?



__そうだよ。来たんだね。


そう言うと、彼女は微笑んでみせた。


__ああ。今のまふゆの笑顔は、とても優しくて、嬉

しそうだ。


__天馬くんこそ。セカイは、どうしたの?



__なんで、、それを?



__見ちゃったんだ。私も同じものを持ってるの。



__セカイは、、、、、、好きだった人に託したよ。



__そうなんだね。私も、同じことをしたよ。



__人生は、どうだったか?



__辛かったけど、楽しかったよ。みんなと遊んで。

曲を作って。


__そろそろ着くな。



__うん。そうだね。



__オレは、どっちかなぁ、



__きっと、天馬くんは天国だよ。



__あ、



__またね。







結果、天馬司は天国へ行った。

じゃあ、朝比奈まふゆは?

 


なんの音も立てず、ただ、はらはらと花弁が散っていくだけだった。






end










『今日は最近話題の神代さんにスタジオへ来てもらいましたー!最近は____』


「あー!お父さん!お父さんだー!」

「ふふ、本当だねぇ」

「司咲!類!!ご飯!!」

「はぁい!」

朝の七時。ちゅんちゅん、と雀が鳴いている。

「おや、今日は鮭かい?いつも丁寧にありがとう。いただきます。」

「いいよいいよ。沢山食べて。」


カチャカチャ。食器の音。

アナウンサーの落ち着いた声。

外の鳥の音。


気付けばもう50分だった。


「あ、司咲!もう学校!」

「あ、大変!!!」




「それじゃあ、行ってくるよ」

「遅くなる?」

「ううん。今日は早く帰れるよ」

「わかった。」

「行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい!」









「あ、類くん!久しぶり!」

「おや、えむくん!久しぶりだねぇ!元気だったかい?」

「うん!!寧々ちゃんと司咲くんは元気?」

「ああ、元気だよ。司咲くんもすっかり大きくなってねぇ」

「へへ、司くんみたいだね!」

「ああ。まるで、司くんが帰ってきたかのようだよ。あ、えむくん、今日家に来れるかな?」

「もちろんだよー!お友達も連れていくね!」

「おや、わかったのかい?」

「うん!今日は司くんの命日だもんね!」

「ふふ、ご名答だよ。6時頃、集まれるかな?」

「おっけーい!じゃあまたね!また連絡する!」

「ああ、わかったよ。またね!」

「うん!」




5月17日。


『きょう、えむくんたちが家に来るからよろしくね』

『唐突すぎ。何時?』

『6時頃家へ帰れるから6時にしたんだけれど』

『わかった。お供え物とかは後で司んちに持っていこうか』

『わかった』


あるところに、ワンダーランズ×ショータイムというグループがいた。

元々、ワンダーランズ×ショウタイムという名前で活動していたが、座長の天馬司が亡くなったため、名前を変えて再び活動することにしたのだ。2年ちょっとですぐ解散してしまったが、今でも1ヶ月に1回は必ず会う仲であり、そのうちの2人、神代類と草薙寧々は結婚し、残りの1人、鳳えむも一般男性と結婚している。神代家には子供もおり、その名も司咲。

今は亡き司の名前から取ったと言う。






5月17日の今日。司、司咲の誕生日兼司の命日だった。



「それじゃあ、かんぱーい!!!」


ある春の夜。

その家からは、亡き男の話が外にまで聞こえていたそうな。





__ふふ、やっぱり天馬くんは幸せ者だね。神様に伝

えに行かなきゃ。


バチっとウインクされる。


__ふふ、元気そうでよかった。またね、司くん。



そう言うと、紫色の髪をした一人の女は、そっと上へと上がって行った。






end

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