あの夏、僕らだけの白昼夢
@potato_0624
長いショーの終わり
ある真夏の昼下がり。君と僕は、屋上で2人
心中した。
※
「ああ〜!!!暑いなぁー!」
ある真夏の朝。この日の最高気温は35℃を超えており、今年1番気温の高い日だった。
「そうだねぇ、まだ家を出てから少ししかしていないのに、汗がびっちょりしてるよ。」
二人の額には汗がつたっている。カバンを日傘代わりにしながら、足早に学校へと向かう。
「げ、変人ワンツーがいる、、、」
「げ、とはなんだ彰人」
学校へ向かう途中、1年生の後輩に会った。冬弥と彰人と言う名前で、二人とも結婚式のスタッフ的なものとしてやったときに仲良く(?)なった。
「お、彰人と冬弥じゃないか、!!!!!」
「うわ、、やべ、、」
「司先輩!」
「な、なんでもないですさようならー!ほら、冬弥行くぞ!」
そう言って冬弥の袖をつかみ、そそくさと学校へ向かってしまった。
「おや、行ってしまったねぇ」
「むう、何か悪いことでもしたか、、?」
「どうしてだろうねぇ」
その意味について知っていた類は、面白いから、とその理由を伝えずにただ司を眺めていたのだった。
※
「ここを、、、今日は17日だから、、天馬!前に出て解いてくれ」
数学の時間。窓とドアを全て開け、扇風機は強でガンガン回した。それでもまだ暑いのだから、これを全てやめてしまったらすぐ熱中症になるだろう。
「あ、、えーっと、、」
「天馬ー!頑張れー!」
友達が頑張れ、頑張れと応援している。
「ここは、こうだな?!」
「おおー!正解!」
わーっと教室に歓声が響き渡る。そんなにオレは人気なのか!と内心喜んでいるもののそれを隠し、席に着いた。
わー!小さくそんな声が聞こえる。そうだ、そういえば今日は類はこの時間は体育だったな。しっかりやっているのかと下を覗いてみると、ペアを作っているところだったようだ。女子が類の周りに集まっていく。
「あ、、、」
「なんだ?天馬。どうかしたか?」
「いえ!なんでもないです。」
まさか声に出ていたとは。気付くと類はポニーテールの女子とペアを組んでいた。友達はいないのか。
もや、と心のどこかに靄がかかったような気持ちになった。まあいいや。そしてすぐ前を向き、ノートを取った。
※
「ただいまー」
「あら司!ちょうどいいわね!今ね!咲希と、今週末に船でどこかに行かないかって話をしてたのよー!」
船か。そういえば、本当に小さいとき、乗ったような気がするな。
「船か!いいな!父さんには伝えたのか?」
「ええ!お父さんもいいんじゃないかって!司はどう?」
「行きたいな!久しぶりだしな!」
それに今は暑いから、ちょうどいい気分転換になりそうだ。
「なら決まりね!」
あのとき、『行かない』を選択していたら、どんな風になったんだろうか。
※
「ただいまー」
「類、おかえりー!あ、ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「今週末、ドライブ行かない?」
ドライブか。正直、ドライブはそこまで好きじゃなかった。が、もしかしたら好きになるかも。
「うん。いいよ」
「やったー!場所は後日お父さんと類にLINEするわね」
「うん」
それから家の外に出て、ガレージに入った。
「ドライブか、、楽しみだな。」
※
週末。辺り一面人で賑わっていて、外の暑さと人の暑さとで溶けてしまいそうだった。
「あっついわねー!咲希、司、大丈夫?」
「オレは大好きだぞ!」
「私も平気ー!」
「ならよかったわ!もうすぐで着くからねー」
すぐ近くの建物に入り、切符を買う。
「あ、もうすぐじゃない!」
「楽しみだね!お兄ちゃん!」
「ああ!」
そして外の船乗り場へといって、階段を登った。
空は入道雲が被った水色。海は太陽に照らされて、綺麗な濃い青色に光っていた。まるで見ているだけで涼しくなれそうな色だった。
「あ、動き出したよー!えへへっ!涼しー♡」
とても嬉しそうにはしゃぐ咲希を見て、思わず嬉しくなった。
「あ!海、綺麗ー!下覗いてみよー!」
「危ないから体出さないでね!」
「もー!大丈夫だよー!」
ふふふ!と嬉しそうに笑う咲希。麦わら帽子を被った妹と青い空は、これ以上ないくらい馴染んでいた。
「あ、そろそろ着くわね。咲希ー!」
、、、、、、
「あら、、?咲希ー?咲希ー!!」
返事が返ってこない。何かあったのか?
「あ、司もいないじゃない。何をやってるのかな!2人とも!」
たたた、と階段を下る。と、そこには妹の靴が片足だけ、司の靴が1組置いてあった。
「まさか、、、、」
「咲希っ?!司、、、、っ?!」
「お兄ちゃん!見て!あそこに魚がいるよ!」
「本当だ!可愛いな!」
「ふふ!もっと近くで見たいなぁ、よいしょ、」
「あ、こら、乗りあげたら___」
ドポン。
え?その一瞬の出来事に、司の脳は混乱した。どぽん?どぽんってなんだ。どぽんって__まさか。
やっと処理が追いついた時、妹は下でバタバタと苦しそうにもがいていた。
「っっっ、、、、、咲希!!!!!!!!!」
「司?!咲希?!お、おとうさ、、、イヤァァァァ!!!!!」
「お客様、どうされました?!」
「む、娘と、息子が、、下に、下に落ちてっ、、、!!!」
あ、そろそろ、息が、
早く救命ボートを____
そこでオレの意識はとだえた。
「、、、、、、咲希ッ!!!」
オレが目を覚ますと、横には色んなチューブに繋がれた妹が横たわっていた。
「、、、、、、司がっ、、、司がしっかり見てなかったからよ!!!!!!!!司があの時、、、あのときとめていれば、、、っ!!!!!」
「お母さん、落ち着いて、」
その横で、涙をため、顔を赤くしながら怒鳴っている母。そして、その母をなだめている父がいた。
オレの、せいで?咲希が、、、?
「そ、んな、、」
プツリ。嫌な夢を見たくない。そういうように、また、意識はそこで途絶えた。
※
「待ちに待ったドライブね!!!ふふ、1回してみたかったのよ!サービスエリア巡り!」
やっぱりめんどくさいなぁ。こんなことなら家で機械をいじってたかった。
「そうだね。」
「楽しみましょうね!
「「うん!」」
「ふふ、ここのサービスエリア、このコロッケが有名なのよ!」
まず初めに着いたサービスエリアは、そこそこの広さがあり、人も結構多かった。ミンミンとなく蝉の声。辺り一面真っ青な空。車のたくさん止まった駐車場。
全てがなんだか、色鮮やかに見えたような気がした。
「ほら、類も!ぼーっとしてないでたべてみて!」
ぱくっ。
「「どう?!」」
「美味しい、、!」
「良かったー!」「ここを探しておいた甲斐があったよ!」
僕のために。嬉しいな
「ねぇ。早く次に行こうよ」
「お、類も乗り気になったか」
「そうね!行きましょ行きましょ!」
まるで子供のようにはしゃぐ自分の両親。その光景が、とても微笑ましく見えた。
「ふふ、楽しんでる?」
「うん!このメロンパン、とても美味しいよ!!!」
「だろう?頑張って探したんだから」
美味しい。楽しい。嬉しい。そんな三つが揃った今、泣いてしまいそうだった。変人と言われ、避けられ。ショーも、1人でなんかしたくなかった。でも今は?同じ変人仲間がいる。ショーも、4人でできている。一日でも長く、この光景が続いて欲しい。そう思ったとき、
「ッ、、、?!」
ドンッ!ガシャっ、
「あ、、、、」
頭から生暖かい何かが流れる。食べていたものが床に転がる。飲んでいたものも。全て。
そん、な、、、
僕の記憶は、そこまでしか覚えていなかった。
「ん、、、、?」
「ねぇ、どうします?あの子、まだ高校生でしょう。親が急にしんでしまったなんて、言えたもんじゃないですよ、、」
なんだって?親が、、死んだ?
「あの、、、」
「うわっ?!あ、、、類くん。起きたんだね」
「あ、はい。えっと、ここは一体、、?」
頭ではわかっているのに、どうも信じられなかった。
「ここは病院だよ。えっと、、、君にひとつ、伝えたいことがあるんだ。」
「は、はい、、?」
「君の両親はね」
7月22日日曜日 に 死んじゃったんだよ
「え、、?な、なんで、、りょ、両親は、隣に、」
「、、、、、、急でビックリだよね。でも、触ってみて。」
包帯から少し血が滲んでいる。
ぴと、
さっきまで笑顔だったあの顔も。とても暖かかった手のひらも。全てが嘘かのように冷たくなっていた。
「そんな、嘘だ、嘘だ、あぁ 、、」
「類くん、!!」
「言わない方が___」
ぽろり、と涙が頬を伝う感じがしたと共に僕は眠ってしまった。
※
次の日、僕は家に返された。
父さんと母さんの部屋。あ、、、
部屋のハンガーにかけてあったのは、母さんと喧嘩した翌日、買ってきてくれた紫の洋服だった。でもその時はまだイライラしていて、いらない、着ないって言っちゃったっけ。あれから一度も着なさい、なんて強引に言うことは無かったよね。
「、、、、、、最期くらい、、、、、、着ればよかったなぁ、、、っ、、、父さん、、、母さんっ、、、!!!」
※
オレのせいで、、?咲希が、、、?
「お母様、こちらに。」
ぐすっ、ずびっ、といった音と共に別の部屋へと両親は運ばれていった。ピッ、ピッ。段々と遅くなっていく。それがまるで子守唄のようで、とても心地よかった。まだ微かに息をしている妹の布団に顔を埋めて、泣きながらオレは言った。
「咲希、ごめんな。あのとき、俺が見ていれば。もっと一歌や志保や穂波とバンドができたのに。宮女でも過ごせたのに。えむや寧々とも、なかよくなれたろうになぁ、、、、オレのせいで、、、、、、ごめん、、、ごめんなっ、、咲希ぃ、、、、!!!!」
ピッ、、、、ピッ、、、、、。
段々と心拍数が減っていく。
ガララらっ。
「咲希、咲希、、、、!!お願い、、、、、、お願いだから、、、、!」
ピーーーーーーーーッ
「うわぁぁぁぁ!!!!!!咲希、、、、、、咲希!!!!!!!!!どうして?!あのとき、いつか、、、いつかスターになって、、咲希に最高のショーを見せると、約束しただろう、、、、?!うわぁぁぁん!!!!咲希、咲希ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!」
必死になって泣き続けた。周りの声など聞こえないほど。喉がちぎれるほど。ずっと、ずっと泣き続けた。
なんで?どうして?あのときオレが行かないって言っていたら、咲希は、こんなにならなかったのに、、?
※
「父さん、母さん。行ってくるね。」
誰もいない、行ってらっしゃいの聞こえない4帖の玄関。ガチャ。扉を開けて外に出ても、鍵を閉める音が聞こえない。
「っ、、、、」
類はその現実から逃げるように学校へ走っていった。
※
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。何回も言うけど、司は悪くないからね。あのときのお母さんはおかしかったからなのよ。ごめんね、悪くないからね。
「大丈夫だ!!!辛く、、、ないからっ!!!!!」
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
ふたりの声しか聞こえない、いってらっしゃい。
いつもの可愛らしい声でお兄ちゃん、と呼んでくれるその声はもう居ないのだ。考えるだけで涙が出てしまう。司はそこから逃げるよう、学校に向かった。
※
その日の授業は全く頭に入ってこなかった。
どこか心に穴が空いたようで、そこを埋めるためには何かが必要だ、と問いかけている気がした。
※
その日。僕は教室を抜け出して校舎裏にいた。誰も来ない、日陰の校舎裏。何故か父と母がここに来てくれるような気がして、いつの間にかここにいたのだ。
「もう、いいかな。」
類は今日やる全てのことを計画した。
※
放課後。今日は一日がすごく早く感じた。
父と母に
『遅くなるかも。いつか追いかけてきて。』
とメールを残した。
「寧々と、、、えむと、、、類にも、」
『先にスターになっておく!!!!おばあさんやおじいさんになったらここにきてくれ!!!!!!!!!そしてオレの最高のショーを見に来るがいい!!!!』
と一言残して屋上に向かった。
自分でも泣いてしまいそうだった。でも。咲希に、ショーを見せてあげるんだ。
一思いに屋上へかけて言った。
※
もう、全てが終わるんだ。
寧々とえむと司にも
『こんな奴でも仲間に入れてくれてありがとう』
と一言メールを残して、屋上へと向かった。
そうだ。もう壊してしまおう。いっそのこと。
がしゃん。
無様な音を立ててひしゃげてしまったスマホ。
もう、全部。ぜんぶおさらばだ。
※
「る、類、、?!」
「そちらこそ!偶然だね。」
「いや、明らかになんかあっただろ、そのスマホ」
、、、、、、、、、、、、
しばらくの沈黙の後、類は静かに口を開いた。
「ねぇ。僕がいきなり、最後に一回だけショーの話をして、実験に付き合ってもらって、演出の案を心ゆくまで聞いてもらって、そして、、、そして、、、」
「踊ろうよって言ったら、君は引き受けてくれるかい?」
「ああ。もちろんだ。お前の心ゆくまで、付き合ってやろう。」
「そして最後は二人だけの特別なフィナーレをするんだ。」
「類の、最高の演出と、」
「司くんの、最高の演技でね」
7月23日 月曜日 17︰24 神山高校 屋上
天馬司 17歳 神代類 17歳
END
あの夏、僕らだけの白昼夢 @potato_0624
★で称える
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