オーリア学院

 



「見えてきたよ」



 スタスタ〜と暖かく降り注ぐ太陽さんの下を歩いていると前を歩いているお兄ちゃんが指を指してそう言った。僕は立ち止まって指先の方を見る。



「んー?…え"、あれが学院?」


「そうだよ。その名もオーリア学院さ」


「で、でかくない?」



 おかしいな〜。なんだろう、距離感がおかしくなりそうだ…


 まだ距離はあるはずなんだけど凄く、大きい…



「世界最大だからね。ほら、あそこの一番高い建物が見えるかな?」


「一番高いっていうか…どこまで続いているの?」



 雲を突き抜けてそびえ立つ建物。なにあれ!?



「さぁ?誰も知らないよ。で、あれがフィグラも聞いたことあるんじゃないかな?天覇の塔だよ」


「天覇の塔…おっきいね」


「……まぁ、ね。今の言葉なんか来るね…コホン。そんかことより、天覇の塔はいわば試練みたいなものさ」


「試練?天覇の塔って僕が知ってる話じゃダンジョンって聞いたよ?」



 ダンジョン…世界に合計29個あると言われている迷路だったり洞窟だったり、色んな形をしている何かだ。そこではお宝も手に入ることもあるが魔物とも出会う恐ろしい場所だ。あれだね、虎穴にうんぬんすれば虎子を得ずだね!なんだっけ?

 ダンジョンは謎が多い。なんで29個という微妙な数なのかも分かんない…




「ダンジョンでもあるけど学院では試練の塔と呼んでいるよ」


「試練…」


「そう、何回層まで行ったかで競い合っているんだよ」


「試練?」


「まぁ、上に行けば行くほど強い魔物が現れるからね。上に行けるやつは凄いって風潮だよ」


「実力主義なんだね」


「そうだね〜、完全な実力主義ってわけじゃないんだけど…まぁ、そうかもしれないね」


「?」


「まっ、入学してから説明されるよ」


「分かったー」




 ◆





「フィレット・アルフレッド。オーリア学院の生徒、はい生徒証だよ。そしてこっちが僕の弟で学院の試験を受けにきた」



 門番さんとお兄ちゃんが話している。僕は特に喋ることもないから近くで黙って見てる。入るためには色々大変なんだって。



「分かった。……弟?」


「ははっ、弟だよ。妹じゃないからね?」


「にわかには信じがたいな…だが、合格する事を祈っておこう」


「ありがとさん。入っても?」


「あぁ、この中で悪さをしても意味がないことは生徒であるお前が知ってるだろ?」


「そうだね」


「?お兄ちゃん、どう言う意味?」


「中で教えるよ。さっ、入る許可も貰ったし行くよ」



 お兄ちゃんが歩き出したので僕は慌てて追いかけて中立国ニューラルへと足を踏み入れた。





「…みんな学生?」


「驚いたかい?」



 道行く人が全員若い気がする。それに、所々制服を着ている人もいる。



「大人とかは?」


「いるよ。一応、ね?」


「一応?」


「まっ、歩きながら説明するよ」


「分かった。…分かったんだけど、視線が集まってる気がするんだけど?」



 んー、主に男子からだね!あっ、声も聞こえてきた…?「…あれって、男だよな?」「そうなんだけどな…俺の脳がそれを否定しているんだ」「奇遇だな、お前もか?俺の目にはあの子が男装している女の子にしか見えない」「だよな…うーーん」「「「謎」」」



「あははっ!中々面白い言葉が聞こえてきたね〜」


「僕としてはどういう気持ちで答えたらいいのか分かんないよ」


「慣れてるでしょ」


「うるさいっ、慣れたくないよ…」


「ははっ。きっと慣れるさ。それより、そろそろここの話をしようか」


「…後で絶対仕返しするからね」


「…手加減を願いたいね。コホン、話をかなり戻してこの国は学院の生徒達で運営しているんだよ。大人はその補佐」


「王様とかも?」


「王様は学院長だよ?そこら辺は学院長とか教頭とか、その辺りが担当しているよ。他の…例えばあそこにある雑貨屋、あれも生徒が運営しているよ」


「生徒だけ?」


「そうだよ。大人が居るのは鍛治や衣服、土木とか職人技が必要な仕事のみ。それ以外はさっきも言ったように生徒が運営」


「凄いね…」



 中々に厳しい事をしてるね…でも、職人技が必要な仕事には大人が居てそれ以外にはいないってどうなんだろうね?…そこら辺の感覚は元日本人とは違うのかな?



「これも学院側が提案していることだよ。学院は戦闘だけじゃなくて指揮や生活的な事、全てを教えてるからね。実践的な事が一番いいからね」


「へぇー、僕も何か出来ることあったらやってみよっかな?」


「フィグラにはあそこがオススメだよ」


「んー?」



 お兄ちゃんが指差す方には喫茶店かな?落ち着いてる雰囲気が漂ってくる。



「喫茶店?」


「きっと看板娘になれるよ」


「看板娘!?意義あり!!」


「認めません。…まぁ、冗談はさておき」


「冗談の雰囲気じゃなかった感じが…」


「そうかな?まっ、やりたかったらやったらいいよ。でも、たまに本当にやばい仕事とかもあるから気をつける事」


「やばい仕事?」


「そうだね。…闇関係の仕事だね」


「え。そんな仕事があっていいの?」


「これがないとダメなんだよ。そういう人が居るお陰で平和になっているからね」


「へぇー」



 なんだっけ?確か、そういう人達が居るから経済が回っているとか、そんな話を聞いたような聞いた事ないような…



「もっと話してもいいんだけどね、残念。見えてきたよ、試験会場と受付だ」


「え?……え"」



 曲がり角を曲がって見えてきたのはどこの世界遺産?って思うほどでかい建物。その奥に見える天を貫くような塔。



「あれがオーリア学院。世界最大の土地を持っていて、学び舎さ」


「あそこを入学するのかぁ」


「緊張してきたかい?」


「…ううん。僕、頑張るよ」


「頑張れ、フィグラならいけるさ。僕が合格できたんだよ?」


「そうだね!」



 ニッコリ笑顔!



「ぐっ…満面の笑みで肯定されるのは流石に傷ついたね」


「あははっ!」



 ははは〜。…緊張はなんとかなりそうかな?

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