第4話 あなたの番です
「あったかくて気持ちいいね」
春、ポカポカ陽気の中、両親と街を歩く。
私は自然と両手を横に上げ、ルンルン気分でスキップをする。
「変な走り方だね、でも気持ちよさそうだ」
そういって父は私の真似をしてスキップをする、ぎこちないけど初めてで出来るのがすごい、前世では出来ない人もいたのに。
「これは、なかなか、うん、次の公演で使おうかな」
私と一緒にスキップをしながらルンルンの父。
「とおさま、仕事の話しちゃダメ」
「そうよ、折角の休日なんだから」
私はムスっとして、母は呆れ顔で父に話しかける。
「あはは、ごめんごめん、我が娘アルテスはきっとすごい才能があるよ」
「アルテスが生まれてからずっと言ってるわよね」
「えへへ」
私は2人の真ん中に入り、2人と手を繋ぐと上を見上げて2人に笑顔を向ける。
「3人でお出かけ、たのしーね」
「て、天使だ」
「だめ、それは武器よ」
そういって、道のど真ん中で2人は私を抱きしめてくれる。
愛のある家庭っていいな。
露天商が通りを埋めている道をキョロキョロしながら歩いていると色々なものが売られているのがわかる。
武器、防具、魔法書みたいな書物、よくわからない薬草のような草を売ってる異世界定番のお店から、野菜や果物、乾燥肉や魚の干物を売ってるお店まで様々だ。
その中で目を引くお店があった、前世の占い屋みたいなところ。
テントの中ではまさに占っている最中だが水晶玉が怪しく光ったように見えたのだ。
今世の占いはどの程度なのか、魔法もある世界だ、ぜひやってみたい。
「とおさま、あれやってみたい」
「ん?あー、占いか、ミーネ、どう?」
言われた母は占い屋を見る。
「ん、んー、占い、なのかな?ただやってる人はすごい魔力の持ち主よ」
え、空気中の魔力は見えるけど母は人の魔力も見えるのか、すごい。
「かあさま、しゅごい!魔力見えるの!?」
「そーなの、かあさま、しゅごいの!」
母は私を抱きしめる。
「と、とりあえず行ってみようか」
父は私を母から引きはがし、手を繋ぐと占い屋に向かう。
ちょうどテントから終わった人が出てくるのが見えた。
そのまま父がテントを開けるタイミングと同時に占い師が中から出てきた。
「はい、占うのは誰かな?」
フードを被った占い師が声をかけてくる、若いような年老いたような何とも言えない声だ。
「誰からやる?」
「3人一緒はできませんか?」
父の問いに母は占い師への問いで返す。
「テントが狭いからね、1人ずつでお願いしてますよ」
「だって、じゃ俺からでいいかい?」
「そうね、あなたの様子を見ながら次を決めておくからね」
「からね」
私と母がそう言うと父はものすごい笑顔で頭を撫でて、テントに入っていく。
テントに入って少しすると、父の「おぉ」「なんっだとっ」「ふっふ」という声が聞こえるが、占い師の声は不思議と全く聞こえない。
「あの占い師、ただものじゃないわね」
母は独り言を呟く。
「大丈夫?次、私がいこうか?」
私は母を見て、首をかしげてそう伝える。
「もう、ほんとかわいいんだから、私が行くわ。アルテスは最後のお楽しみにしておきましょう」
「わかったー」
そんなやり取りをしていると父がテントから出てきた、どことなくオーラというかいつも以上に自信に満ちあふれているように見える。
「俺は、やるぞ」
「ちょっと、何だか怖いんだけど」
父の発言に母は戸惑いを隠せないでいる。
「まぁ、とにかく入ってこいって」
そういって父は母をテントに押し込む。
「むふー、アルテス、とおさんはがんばるからな」
私に向かってとてもいい笑顔で話す父、そのあともとても前向きなことを色々言われたけど何となく前世で聞いたことのある怪しいセミナーを受けた後の人みたいな感じがして少し引きながらうなずいている私。
父の話の合間にテントの中から「やっぱり」「そう、そうなのよ」「わかってるわね」などと母の怪しい発言が聞こえる。
そうこうしていると母がテントから出てきた、キラキラした顔で私たちを見ている。
ふと右手を見ると占い師の手を掴んでいる。
「なんていい日なのかしら、太陽がまぶしいわ」
そういってとてもいい顔で太陽を見上げる母。
「あの、もう、手いいですか?」
占い師が母に問いかける。
「あら、ごめんなさい、余りにも嬉しくて」
占い師は掴まれていた手をふるふるさせると私に話しかける。
「さぁ、次はあなたの番です、よ?」
フードから見える部分は口元だけだ、その口元がニヤリと笑ったように見えた。
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