世界にさよならを

柊月 紅夜

第1話 親、家出、出会い

「お前なんか産まなければ良かった!早く死んでよ!早く、早く私の前から消えて!」

お母さんに殴られる。

頭から血が流れる。

そういえば、ご飯食べてないなぁ。

もう3日は何も食べてない。

水だけで何とか生きてきたけど、そろそろ死んじゃいそう。

「お前なんか、お前なんかいなけりゃ良かったのに!早く死ね!私の前から居なくなってよ!」

家出かぁ……。

お金どうしよう、あんまり無いのに。

とりあえず、お母さん‪‪が寝てる間に出ていったらいいか。

「出ていかないなら死んで!今週中に出ていかないなら殺すから!!」

今週中って言われても、今日日曜日だよ…。

まぁ、いっか。

出ていけばいいだけ。

最初から俺なんてこの家に居なかった。

消えよう。

とりあえず、出ていく準備しなきゃ。

お金と通帳、スマホだけ持って。

この家から、親から、世界から逃げよう。


ホトトギスが鳴いてる。

もう、夜か。

お母さんは、、寝てる。

もう、この家とはさよならだ。

「ばいばい。」


「うぅ、寒い……」

夜にパーカーと半ズボンという薄着のため、寒い。

「人目につかない所、あるかな……」

なるべく目立ちたくない。

警察に見つかって家に戻されるのだけは御免だ。

またお母さんを怒らせてしまう。

「あ、良い所見つけた。」

人がほとんど居ない路地裏。

ここなら警察にも見つからないだろう。

今日はここで寝よう。



「はーー、夜練つっかれたー!」

「そうやね〜」

「俺飯遅れたら嫌だから今日は近道しよーぜ!」

「いいよ〜」

「確か、この路地裏が1番早いはず」

人通りが少なく、静かで暗いが1番早く帰れる道。

「五月雨〜、ここ通って帰ろうぜ〜」

「は〜い」

コイツと2人、かぁ。

久しぶりかも。

今日は珍しく夜練が終わる時間が同じだったから。

「うぅ、それにしても今日、寒くない?」

「んー?そうか?」

「うん、僕薄着だからかな……」

確かに爛志、凄い薄着だ。

「俺の服、着るか?」

「ありがと……」

上着を1枚渡す。

それを爛志が羽織る。

「ふわぁ、冬璃の匂いする……」

いや、どんな感想だよ…

え、もしかして汗の匂いする!?

「冬璃の服、いい匂いする」

あ、良かった……

「よし、帰ろー!」

爛志が歩き出す。

「ま、待って!早い!爛志、早い!」

「えぇー、そう?僕普通に歩いてたつもりなんだけど……」

部活終わりなのに、体力有り余ってるな、こいつ……

ま、いっか。

「あれ〜、こんな所に人だ、珍しい……」

「しかも3人も……」

2人は高校生、か?

それにもう1人……

小学生……?

「とりあえず行ってみよー?」

「あ、うん」


「あ、こんばんは、?」

「、こんばんは……」

この子の親、では無さそうだし

見た目的に血の繋がりも無さそうだけど一応、聞いてみるか。

「あの、この子の兄弟ですか?」

「いえ、違います、この道通ってたらたまたま見つけて……」

やっぱりか。

「ぅ、あ、?」

起こしてしまった。

「あれ、みつかっ、ちゃいました……」

体の大きさに合わない話し方。

小学生は敬語なんて、使わないはずなのに。

「あ、えと、その、すみません、?」

この子は謝る必要なんてないのに、どうして謝るのだろう。

「あと、貴方たちは、誰、ですか?」

「あ、えっと、、俺は井原冬璃いはらとうり。」

「僕は五月雨爛志さみだれにし!よろしくね。」

「僕は柊駿駿ひいらぎしゅんだよ」

「僕は葵海紺あおみこんです。」

「えっと、冬璃さんと、爛志さんと、駿瞬さん、紺さん、ですか。」

やけに大人っぽい。

この体の傷といいと言い体の細さと言い、虐待か?

「君の名前は?」

「俺の名前、ですか?」

「うん、君の名前。」

「えっと、時雨未来しぐれみらい、です」

「未来ちゃん、か」

「、はい。」

「どうして未来ちゃんはここにいるの?」

「お母さんに、出ていかなきゃ殺す、って言われたから。」

やっぱり、虐待。

「ねぇ冬璃、僕が預かろうか?」

「え?」

「だーかーらー、僕が未来ちゃんを預かるの」

「でも、爛志の家への負担が大きくないか?」

「爛志さん、大丈夫、なんですか?」

「うん!それにね、僕ら今知り合ったけど未来ちゃんを通じて仲良くなれそうだし!」

「いや爛志、確かにそうだけど、そうだけどいきなり預かるなんて」

「ん〜?僕の家、お金は十分あるよ?」

「いや、そうじゃなくて…」

「んー、じゃあ未来ちゃんは誰がいい?」

「えっと、紺、さん……です」

「え、僕?」

「、はい……、でっ、でも、迷惑ですよね、ごめんなさい……」

「んーー、頑張ればギリ行けるかもしれません」





「ほんと、ですか!?」

暗くて静かな雰囲気が自分の声で一気に明るくなる。

でもそんな事どうでもいい。

これで、もう怒られなくて済む。

もう痛いのも我慢しなくていい。

「じゃあ、僕が預かります、」

「おっけー!じゃあ次から集合場所ここにしない?」

「冬璃、それでいいよね?」

「はいよー」

「駿瞬さんは」

「それで大丈夫です。」

「紺さんは」

「ん、大丈夫です」

「じゃあ、決定で!」

「次ねー、みんないつ空いてる?」

「俺は土日基本空いてる」

「僕も」

「僕は、日曜日なら空いてます。」

「ん、じゃあ来週日曜日の12時半にここで集合!!」

「じゃあ、また日曜日、会いましょう。」

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