第4話 絶世の美女

 派遣した者が帰るまで20日掛かった。


アリエ姫はその者を呼んだ。「どうでした? シーラン姫は?」


「それは美しい方でした」


「私とどちらが美しいですか?」その者は問われて困っているようだった。


執事のハモンドが「アリエ様、その者も答え難いと思います。シーラン姫の特徴だけお聞きください」


「そうね、美しい特徴を教えて」


「はい、分りました。まず顎肉ですが、鎖骨まで垂れているのは姫様と同じですが、先が二つに分かれ真珠の滴が一度に二つ出来るのです。そして驚くことにその先に白い毛が数本生えているのです。それは豚毛と思われます」


「ええー それは・・・・」アリエ姫は目眩を感じ椅子に座った。


「そこまで美しいのですか? ・・・・続けて下さい」


「はい、体は姫様と同じ四等身ですが、顔が姫様より少し大きいです。次に眉毛ですが、姫様と同じ位の剛毛で太さも同じですが、緩いU字型の一本眉で顔よりのはみ出しが姫様より大きいです」


「そうですか、かなりの美形ですね、あと頭髪と目と私が気にしている口は?」


「はい、やはり姫様と同じ禿げ散らかし放題ですが? 毛が白いです。おそらくこの世に二人と居ない豚毛だと思います。瞳は黒く白眼が少なく胡麻粒のように可愛いです。口は耳元まで裂けて唇は薄いです」


「そうですか、見事なまでの美人です。負けました。クライス卿や宮廷の男性達が夢中になるはずです。御苦労でした。下って良いです」アリエ姫は深くため息を付いた。


「ハモンドは聞いていて如何思いました?」


「はい、話を聞いただけで絶世の美女だと思いました。死ぬまで一度でいいから見てみたいです。あっ、すみません。アリエ様の前で」


「良いのです。正直に言ってくれて、それに私も一度見てみたいのですが、ハモンド、調整して下さい」


「はい、アリエ様」ハモンドはすこし嬉しそうな足取りで大きな扉から出て行った。


自分も絶世の美女が見られる機会が出来たと思ったのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る