幼馴染のお姉さんは時々ポンコツなカリスマ生徒会長!?~フラれた僕を応援してくれる、本当の理由は~
トウカ
第1話:カリスマ生徒会長と、失恋したキミ
お邪魔しまーす……。
ああ、いたいた! こんばんわ。
なっ、勝手に入ってきたわけじゃないわよ……! おば様――キミのお母様から入室の許可はもらってるわよー。
――部屋の主の許可は必要ないのかって? あーあー。きこえませーん。
……それで、元気かしら?
……って、まぁ元気なわけないわよね。
話は聞いたわよ。キミ、
いやー、まさかあの子のことが好きだったなんて……。
キミの幼馴染にして冬華ちゃんの姉なのに気が付かなかったわ……。
ご近所づきあいをしてもう10年目に明かされる衝撃の真実! って感じね……!
ねぇ、冬華ちゃんのどんなところが好きなの?
そう……。
物静かで思いやりがあって優しくて、楽しいことは明るく笑うところ、かぁ。
ふふっ……確かにね。あの子そんな感じだわ。
その、同じ家族だからこういうこと言いづらいけど……残念だったわね……。
ほら、女なんて星の数ほどいるから! 綺麗さっぱり忘れて次の恋を捜しましょ!
――そう簡単には忘れられない?
そんなに冬華ちゃんのことがが好きなんだ……意外ね……。
よーし! ならばその傷心のキミを、カリスマ生徒会長であるこの私が労ってあげるわ! 感謝してね。
――え? カリスマ生徒会長じゃなくてポンコツ生徒会長の間違いじゃないかって?
し、失礼なこと言うわねー、キミは……。
そ、そりゃぁ妹と比べたら勉強の成績はすこーしだけ下がると思うわよ?
けど、学校行事を効率よくこなしたり、学校と生徒の間に立ってより良い学校生活や環境づくりのために頑張ってるのよ?
各部活動への働きかけとかも真面目にやってるし……。
す、少しよ! い、いや……ホントよ! 嘘じゃないんだから!
つ、追試の数が多かったのは……アレよ! そう、アレ! たまたまなんだから!
――順位も下から数えたほうが早いんじゃないかって? もーうるさいわねー!
その通りよ! 悪かったわね!
……って、話が脱線したわね……。
とにかく! 今日私が来たのは、告白という一大イベントに全力を尽くした一人の男の子を褒めるためよ!
――フラれた僕をからかいに来たのか、って?
……はぁ。どれだけ信用ないのかしら、私。
あのね、そんなことするわけないでしょ。
キミはしっかりと、自分の口で、自分の言葉で、精一杯好きな気持ちを伝えたのよ? バカになんて、できるハズない。
だから、ね?
大人しく私に慰められなさーい!!
えいっ。
――よしよし。よしよーし……。
おおっ……キミの髪の毛、サラサラで気持ちいいわね。
背もこんなに大きくなって……昔は私の方が大きかったのに……。
ふふ……キミの頭を撫でるなんて、いつぶりかしら?
おば様とケンカして、キミが『家出してやる!』って怒りながら私の家に来た時以来かしら?
それとも、通学路に犬を飼ってる家がいて、そこを通る時に吠えられるのが嫌で、泣きながら『学校行きたくない~』って抱きついてきたときかな?
――恥ずかしいから止めてほしい?
ふふっ……顔赤くなってるわよ。可愛いわね。
子ども扱いは嫌だったかしら? そう。
でも諦めてね。フラれたキミを元気づける、って決めたんだから。
ふふーん、抵抗するのを諦めたわね。それでいいのよ。
よしよーし。なでなで続行~。
なでなで~。
さわさわ~。
さて、今回の件だけど――キミは偉いわ。
きっと今日までたくさん悩んで、たくさん勇気を出したのよね?
結果は残念だったかもしれないけど、自分の意志を最後まで貫いたのは立派なことよ。
よく頑張ったわね――
ふふっ、どうしたの? 泣いてる?
緊張が解けたからかしら?
……謝らなくてもいいわよ。
――ほら、次は、ぎゅーってしてあげるわ。
いいからいいから。遠慮なんかしなくてもいいんだから。
ん、ぎゅーっ……。
ふふっ……身長だけじゃなくて身体もこんなに大きくなって……。腕とか胸板とか、もう大人みたいね……。
両手を回したら、私の顔がキミの胸に埋まっちゃうんだもの。
どう? 少しはホッとした……?
――あっ、そういえば夕飯まだよね?
さっきおば様から聞いたの。近所の親戚の集まりに行かないといけなくなったって。
おば様が帰ってくるまで待っててもいいんだけど……せっかくだから私が夕飯、作りましょうか?
……ううん! 迷惑なんかじゃないわ。
料理は得意だし、それに材料なら玄関に置いてあるもの。
ふふっ……こんなこともあろうかと、おば様との話の後、すぐに家に帰って材料とか持ってきたのよ~。
こういう時、家が近いっていいわよね。
よーし、それじゃあキッチン借りるわね!
張り切って美味しいもの作るから、少しだけ待っててちょうだーい!
―――――――――――――――
――――――――――
―――――
よーし、あとはこれを入れれば……。
カリスマ生徒会長、
そして"あともう一品"のおかずはこの――
って、あら、どうしたの?
――何か出来ることないかって?
もう、お腹が減っちゃったのかしら? ありがとね。
けど、もうすぐ出来るから待っていいわよ~。
――我慢できない?
もう……それじゃあ、おかずに作ってたこれあげる。えいっ!
……どう? 美味しいでしょ?
陽和お姉さん特製唐揚げ。
絶妙なバランスの醤油とニンニクに漬け込んでから揚げたのよ。
あっ……。
今気が付いたけど……私、指舐められちゃったわね……。
え、ギリギリで唇を離したって……?
ふふっ、誤魔化そうとしてもそうはいかないわよ?
しっかりとキミの柔らかい唇の感触が伝わってきたんだから。
――ねぇ、この指、私が舐めたら間接キスになっちゃうわよね?
なんか……ドキドキしてきちゃった……。
……このまま舐めたら、"キミの味"がするのかしら?
ちょっと興味があるわ。
ほら。少し指先がてらてらしてる……。
なんてウソ。ふふっ、びっくりした?
そんな変なことしないで普通に洗いますよ~。
あれれ~? もしかしてちょっと期待してた?
ふふっ、冗談。冗談よ~!
キミが好きなのは私の妹だもんね。さぁ、晩ごはんにしましょう。
―――――――――――――――
――――――――――
―――――
――ふぅ、ごちそうさまでした。アーンドお粗末様でした。
どう? 美味しかったでしょ?
そう言ってくれて嬉しいわ。ありがとう。
少しは元気出たかしら?
……ふふっ、なら良かった。
で、さっきの話の続きなんだけど――
冬華ちゃんのことは、諦められない?
……そっか。なら私も協力するわね。
あの子に好かれるように、色々教えてあげる。
キミはいい子だし、きっとあの子も一緒にいて楽しい、って私、思うの。
というわけで……早速だけど、今度の休み空けといてね。
何をするのか、それは当日までのお楽しみ~!
大丈夫。大丈夫! お姉さんに任せておきなさい!
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