第27話 初めての依頼とキンジロウ

 俺達は今回、とある依頼を受けて鉱山に来ている。

 頂上の中心から大きな穴があり、その中には様々な通路が存在していた。

 今回の依頼は鉱石を運ぶのを手伝う事。詳しい事はこの依頼を常に出し、この場の責任者に聞ける。

 ドワーフのおじさんである。


「あそこの鉱石を道を歩いて運んでくれ」


「あの、歯車で動くあれは使わないんですか?」


「あんなのは人くらいしか運べん」


 腕輪を使えばすぐに終わるが、持っていると知られては困るので、素直に運ぶ事にする。

 他にも依頼を受けている人が必死に鉱石を運んでいた。

 色々な種類で分かれている様だ。


「魔道具を使ってかなりのペースで掘ってますが、掘り尽くすのでは?」


「知らないんか? 年に二度、中央の鉱山に金属の龍、メタルドラゴンが現れるじゃが、そのドラゴンが現れると鉱山が復活するんじゃよ。ただ、場所と種類が毎度変わるから大変なんだがな。メタルドラゴンのレイドバトルは青星以上だから主らは参加出来んからな」


「そうですか」


 サナと俺は穴に近づく。そこでサナは立ち止まる。


「どうした?」


「これ、お兄ちゃん最強じゃない?」


「ん?」


「ジェットパック」


「成程⋯⋯サナは働かないの?」


「お兄ちゃんがやる方が効率的」


 俺は目を瞑り集中する。サナが道場で訓練している姿を見ながら練習していた事もあり、前よりも魔力を深く感じれる。


「サーバーアクセス」


 言葉と同時に俺が使える魔法が頭に浮かんでくる。


「ジェットパック」


 前寄りも明確に魔法が発現し、何処か金属質の翼に筒が背中に権限する。

 そのまま穴に飛び降りる。


「頑張れ〜」


「大丈夫か!」


 責任者が驚いて下を覗き込むが、そんな心配は杞憂に終わる。

 筒から炎を出しながら鉱石が詰まった箱を持って上昇して来る俺がいるからだ。


「何処に運べば良いんですか?」


「あ、あっちだ」


「はーい」


 それから仕事分を働いた。

 その後休憩に入ると、炭鉱夫達も歯車の奴で登って来る。


「凄いのぉ。専属契約したい程じゃ」


「良かったねお兄ちゃん」


 サナの笑顔が眩しいけど、本当にサナは何一つ働いていない。

 しかも、イベントの時とは違い、上下移動をメインに色んな方向に飛んだせいで頭が痛い。


「持続的に激しく魔法使うと脳にこんなに負荷が掛かるのか。痛ってぇ!」


「大丈夫? ほら、サンドイッチだよ。あーん」


「誰のせいだと⋯⋯あん。モグモグ。美味い」


 疲れた後だからか、何時も寄りも数倍は美味く感じた。


「てか、サナの風魔法じゃダメだったの?」


「それだと鉱石があちこち飛んじゃうよ」


 それから休んで、再び鉱石を運び出す。予定よりも多くやれば、その分報酬が増える。

 寄り下層の鉱石程良いので、一番下に溜まっている鉱石が詰まった箱を運ぶ。


「おのりゃすぎょいのぉ」


「ありがとうございます〜」


 色んな炭鉱夫達からお褒めの言葉を貰い、働いた。

 時々頭痛がするので休んでから再開する。


 その後、終わった事を示す書類を貰い、冒険者ギルドに向かった。

 サナは何もしなくて途中から爆睡していた。


「明日はサナが一番働く依頼を選んでやる⋯⋯」


「そんな依頼あるのかな?」


 冒険者ギルドの中に入ると、冒険者達が集まっていた。

 誰か居るのか分からないが、興味無いので受付に向かう。

 お陰で受付がガラガラでありがたい限りだ。


「⋯⋯お疲れ様でした。かなり、頑張りましたね。それでは報酬をお渡ししますので、カードの提出をお願いします」


 書類に書かれた内容を見て疑いの目を向けて来る受付嬢。

 だが、しっかりとした結果であり、それは成績にも成る。そのまま報酬も貰った。

 冒険者ギルドを後にしようとしたら、人が集まっている原因の人と出るタイミングが被った。


「な、主要NPCユウキとラスボスライハ!」


「「⋯⋯ッ!」」


 俺達はその男を大きく目を見開いて見る。

 俺の名前もライハさんの名前も口にしたのは、金髪で爽やかなイケメン。そして胸元には黒星が着けてあった。

 特徴的なのは装飾の多い金色の剣と鎧だろう。


「な、なんで俺の名前とライハ兵長の名前を知っているんだ」


 初めての人なのに敬語を忘れてタメ口に成ってしまう。

 それ程に驚いているのだ。


「え、あ。その」


 俺は男の肩を掴んだ。


「頼む! 知っている事があるなら、ライハ兵長⋯⋯ライハさんの事を教えてくれ!」


「ちょ、お兄ちゃん落ち着いて。外の人が知っている訳無いでしょ」


「お兄⋯⋯は、はい。そうですよ。ちょっと知り合いに似てまして。凄い奇跡ですね。俺の名前は金次郎だ」


「キンジロウ、さん。すみまさん。取り乱しました。自分のような黒髪が知り合いに居るとは、本当に奇跡ですね」


「い、いや。こちらこそ」


 気まづい空気。

 本当に冷静に考えたら、俺達の名前を呼ぶ前に意味の分からない言葉を使っていた。ありえない話だ。

 あの件以来、自分達の事が気になった。だから、ライハさんの事を少しでも知ってたら⋯⋯なんて思ったがそれはありえない話だ。


「えっと、俺はユウキ。こっちは妹のサナ」


「初めまして」


 サナが頭を下げる。ゆっくりと顔を上げて瞬きをする。

 その姿にキンジロウは少し頬を緩める。刹那、俺は少しの殺気を込めて睨んだ。


「じゃ、俺達は行きますね」


「そうですね。あ、最近は物騒ですので気をつけてくださいね。それでは、また会いましょうサナさん!」


 サナに握手を求める。


「ごめんなさい」


 ゆっくりと頭を下げるサナ。俺達は宿に戻った。

 部屋では拾った女性が新聞を見ながら柔軟をしていた。


「体を動かしても大丈夫ですか?」


「ええ。ありがとうございますね。ただ、まだ激しい運動は出来ませんが」


「そうなんですね」


「あ、着替え買って来ましたよ〜似合うと思うので着てください〜お兄ちゃんは風呂に行ってね〜」


 背中を押される。


「はいはい」


 その後、二人は着替えを始めた。

 サナは買って来た服を取り出して女性に渡す。

 ヒラヒラとした白色のワンピースだ。


「明る過ぎます。それに渡せるお金が、今は持ち合わせてない」


「良いですよ。そんな裂けた服を何時まで着させる訳には行きません。一応黒色もありますよ」


 サナが見守る中、着替えた女性。


「可愛い! 似合ってます!」


 サナはオシャレを楽しめる人生では無かった。寝る時も戦う時も訓練する時も軍服。

 服装を気にする様に成ったのは貴族、ミリアとの会話であった。

 短い時間だったが、二人は仲良く成っていたのだ。


「どうですか!」


「えと、胸の部分がとても、スカスカ」


「はっ! 私のサイズで買っちゃいました。すみません! 明日買いに行きましょう! あの、なので殺気を飛ばさないでくれませんか?」


「飛ばしてないです。聞くのは良くないと思うのですが、何歳ですか?」


「16です。⋯⋯あの、寄り一層殺気が増しましたよ?」


「気の所為です」


「でも⋯⋯」


「気の所為です」


「あ、はい」

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