第15話 旅の始まりと護衛パーティ

 頼ん武器を受け取り、孤児院に挨拶をして、俺達はその足で竜車停留所に向かう。甲羅のせいか、剣は以外に軽かった。

 竜車とは馬車の竜バージョンだ。

 馬車よりも速いが数が少ないので高価である。

 さっさと次の目的に向かいたいので竜車を使う。


「お兄ちゃん結局剣で良かったの?」


「ああ。俺には刀は合わなかった」


 そんな会話をしながら向かっていると、ガールズハンターの一員が居た。

 別れの挨拶をしに来てくれたらしい。嬉しいね。


「サナ、また来てね」


「うん!」


「サナ、じゃあな」


「キクさんも! そちらのアサシンさんもまたね!」


「⋯⋯気配消してた、のに」


 俺とサナは微妙な顔をする。

 確かに気配消している感じはあったが、彼女の顔が悲しそうな顔に変わっているので、やはり関わらない方が良かったらしい。


 俺達は竜車停留所に到着し、運転手へ挨拶する。


「よろしくお願いします」


「こちらこそねぇ。目的地までは一週間、途中の村で一度休む事があるからね」


「はい」


 その後、冒険者ギルドで依頼を受けたのか、冒険者パーティが近寄って来る。青星である。

 あの打ち上げに居たかもしれない。周囲を見てなかったのと、ダンジョンの自慢話に集中していたので覚えてない。


「俺らは熱き龍のパーティ。そして俺はリーダーのアカギだ。よろしく!」


 握手を求められたので握手をする。


「俺はユウキ、こっちは妹のサナ。パーティ名は無いな。こちらこそよろしく頼む」


 あちらのパーティの回復魔法士がサナへと近づいて抱き着いていた。

 頭をわしゃわしゃ撫でている。今朝整えた髪が⋯⋯。


「昨日は近づけなかったけど、近くで見るとちょー可愛い! 顔小さい〜肌すべすべ〜若いって良いな〜」


「⋯⋯お兄ちゃん助けて」


「ま、仲良くなる一歩だな」


「裏切り者」


 竜車に乗り込み、走り出した。

 ちなみに俺達の国に竜車なんてのは無かった。

 魔物は全てが敵であり、この様に共存する考えは無かったのだ。

 移動中は暇である。


「にしても、乗客が俺達よりも実力が上の相手って、護衛の意味があんのかね?」


「アカギ。それは私も思ったけど、言わないの! 護衛は報酬が良いんだよ! 私がどれだけ必死にこの依頼を勝ち取ったか、分かる?」


「分かってるよ」


「それに噂が正しいなら、魔物等の相手は私達の方が上よ!(多分ね)」


 護衛する人は依頼期間中は食事なども保証され、さらに街道を通っていると敵は基本的に盗賊らしい。

 魔物は街道に近寄らないらしい。殺される事が分かっていると言われている。


「てか、あのアイランドタートルを打ち上げた魔法にキクさんを圧倒した連撃を使えるとか、お二人さん何処で修行したんですか?」


「ちょ、アカギ! プライベートの事聞くのは失礼でしょ! 超気になるけども!」


 基本的にアカギと回復魔法士が会話を切り出してくれている。

 ま、アカギが話して回復魔法士がツッコミを入れている。

 他には大盾を持ったガタイの良い無口な男と魔法士の女性だ。

 魔法士の人はサナに魔法の秘訣を聞こうとしていたが、サナは逆に魔法の秘訣が何かを聞きたいらしい。


「なんであんな魔法が使えるのに僕に魔法の扱い方を聞くの!」


「だって、あれってただ、刀を利用した乱暴な魔法だからさ。多分、使用した魔力の六割が魔法になったけど、他は霧散してるんだよ。魔力制御難しい」


「分かる。俺もなかなか出来ないんだよなぁ」


 四人とも目を点にして見て来る。

 先に言葉を出したのは魔法士だった。


「いやいや! あんな空中で綺麗に停止しておいて制御出来ないって冗談ですよね!」


「いや。まぁあれってそう言う魔法だからね。確かに扱いは難しいけど、そこまで魔力制御は要らないんだよ」


「見た事ない魔法ですから僕は何も言えませんが、あんな魔法は魔法士なら誰でも望む力ですよ! 魔法陣見せてください! 頑張って会得するので!」


「あ、そんな方法でも魔法って覚えれるんだ。ちなみにだし方分からない」


「そうですね。初期から使える魔法なんて人の才能に寄るモノですし。少ない人は努力して使える魔法を増やすんですよ」


 俺も強化魔法を会得する為に頑張りたいな。

 サナが魔法士に質問する。


「索敵魔法って何を使えるんですか?」


「えっとですね。半径十メートル以内の生物反応を感じる魔法なら使えます。ですが、そう言うのはリーダーが担当なので」


「イエス! 俺はレンジャーなのさ」


 キメ顔のアカギをフル無視してサナは魔法に付いて質問する。

 アカギが肩を落とし、回復魔法士が頭を撫でていた。

 姉弟の様に仲が良いな。


「じゃ、じゃあ。魔法生物を生成して操り、それの感覚が全て共有した状態での索敵魔法は、どのくらい凄いんですか?」


「ん〜生物の大きさやどれだけ共有出来て、そしてどれだけ離れてていても使えるかに寄るね。そう言う魔法は使える人は少ないね。扱いが難しいから。便利な反面魔力消費量が多いんだよ」


「なるほど」


「もしかしてサナちゃん使えるの!」


「使えません使えません!」


 全力否定するサナ。


「見ててくださいね。魔力回廊接続、風の回廊、フェアリラル・サーチエレメント・クリエイティブ」


 風の塊がサナの掌に出来る。だが、その形はグチョグチョのドロドロでとにかく気持ち悪かった。

 そのままぶしゃりと小さく爆発して霧散した。


「何それ」


「上手く形が作れないんですよねぇ」


「だからって風が液状化するかね」


 そんな会話をしていると運転手から声が掛かる。

 既に海は見えなかった。


「そろそろ休憩に入ります」


『分かりました』


 休憩は竜の休憩だ。

 運転手は水やおやつをやりながら褒めている。

 竜は嬉しそうに鳴いて目を細めている。


「ユウキさん。俺とも闘ってくれませんか?」


 投げナイフを引き抜き俺に向けて来る。

 大盾の男が止めるように宣言するが、アカギは止まらない。


「強者との経験は成長に繋がるんだ。お願い出来ませんか?」


「俺白星ですよ?」


「冒険者のランクなんて関係ないね。決闘見たらそう思えたね」


「まぁ。五分間休憩ですし、良いですよ」


 俺はカバンから二本の剣を取り出す。

 対極の純白の剣と漆黒の剣だ。

 アイランドタートルの魔石を二つに割って、互いに埋め込まれている。

 このシンプルデザイン且つ分かりやすい色合いを見てサナはなんとも言えない顔をしていたが気にしない。


 ちなみにオーダーメイドで作って貰った物も少なからずある。


「それじゃ、行きます!」


 投げナイフを大量に投げられる。

 それを把握し、自分に当たる物を全て弾く。


「マジ?」


 駆けて素早く肉薄し、右の黒剣を逆手持ちに切り替え、首に向かって刃を向ける。


「役に立てましたか?」


「正直、強過ぎて分からない」


 投げナイフか。先輩に投げナイフ使いが居たなぁ。

 戦争では何の役にも立たないって拗ねてたけど、その実力は本物だった。

 剣を教えてくれた親代わりの人が本気でやらないと捌ききれない程の腕前だ。


 ま、成り行きで割かし投げナイフの対応は出来るのである。

 サナもその人達の事を思い出したのか、悲しくも暖かい目をしていた。

 先輩達は居ないが、今でも俺達がその技術を継承している。

 俺やサナだけじゃない。今生きている元同部隊員もだ。

 いずれ俺も技術を教える事があるのかもしれない。

 それまでにはもっと腕を磨かないとな。

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