第13話 打ち上げ!!
「はああああああああ!」
大きな金色の魔法陣が展開され、アイランドタートルに向かってレーザーとなって突き進む。
アイランドタートルを呑み込み上空に上がって行く。
上空、雲の上と言う高い位置で大爆発する。
その衝撃波が海にも届いて、爆発中心から波紋上に波が広がる。
ジェットパックは消え、落下して行く。
キクを含む全ての人間がその爆発に目を奪われていた。
「魔力半分消費ってこんなに脱力感があるのか。だけど、皆ああああ! まだ終わって無い!」
「嘘だろ!」
キクが焦った様に叫ぶ。
「打たれる前に魔法で向きを変えていた! 直接当たってない!」
「あんなバカみたいな魔法を受けても生きていられるのか。⋯⋯皆! バフを頼む! 一気に貫く!」
キクが大剣を掲げそう叫ぶ。
彼女の実力をこの国の冒険者達は知っている。魔法士やそうで無くても支援魔法を使える人物が我武者羅にキクにバフを掛ける。
「俺持ってない何か出来る事ない?」
「さっきの飛ぶヤツで一直線に飛ばしてくれたら良い! 最速で、成る可く加速を乗せる!」
「分かった!」
俺は付与された魔法のお陰で水面に着地する。この魔法は任意で海中でも海面でも自由に活動可能だ。
キクに対してジェットパックの魔法を付与する。
「行っくぞおおおお!」
一気に跳び、一つの光となってアイランドタートルに向かって突き進む。空気を鳴らす程に加速しているキク。
様々なバフ、そして大剣に魔力を流して能力を解放している。
「我が半身は神をも貫く龍なり、天を駆け地を滑る龍なり、我が道を妨げる障壁を、全て貫く!
正に全身全霊の攻撃をアイランドタートルにぶつけた。
「終わりだああああああああああああああああ!」
アイランドタートルが太陽と重なり、そして大きな丸の影となる。
それを貫く様にキクの影が伸びている。それが一瞬、龍の影に見えた。
刹那、太陽を覆い隠す物体が接近して来る。
アイランドタートルが落下し、海に衝突する。
「のわ!」
付与魔法の効果があっても、大きく波立つ波に抗えず沈む。
かと言って息が出来ない訳では無い。海水が口に入る事も無い。
アイランドタートルの死骸の上にキクが着地し、勝ったと宣言するように大剣を掲げる。
太陽に照らされる大剣。そして、キクが横顔で向ける笑みに、一瞬静まり返るが、次の瞬間には雄叫びがそこらじゅうから上がる。
『うおおおおおおおお!』『厄災クラス討伐完了だあああ!』『誰か魔力回復薬寄越せえぇぇ!』『最高の時間をありがとおおお!』
そして、国まで届く雄叫びを、冒険者達は上げた。
厄災クラスの魔物を討伐した冒険者達がここに誕生した。
それを率いたのは黒星ハンターだと、後に広まる。
だが、その背景には大爆発を生み出した魔法士の姿も、密かに噂されていた。
それから数時間後、終了し俺はアイランドタートルの魔石と甲羅の一部、そして合計金額124枚獲得した。
「サナは金額65だっけ?」
「うん。弱い魔物だろうと強い魔物だろうと金額一枚だから、なんか割に合わない⋯⋯」
「まぁそう言うな」
良い経験が出来た。海中での戦い、空から海の中の的に向かっての弓での狙撃。良い経験だ。
アイランドタートル、もしもあれ以上の強さの魔物相手に、俺達二人で何処まで行けるか。
「サナ! サナのお兄さん」
「どうしたのミチカ?」
「打ち上げ! こう言うイベントの後は冒険者ギルドが場所提供して皆で打ち上げするんだよ。知らないと思って追って来た。行かない?」
「「⋯⋯行く!」」
タダ飯程美味いものは無いと先輩も言っていた!
ちなみに出された魚肉の殆どは今日倒した魔物らしい。
美味いし、魔力の回復が早まるのでありがたい。
「魔物の肉を食うと魔力を吸収して魔力の回復が行える⋯⋯本通りだな。ポーション寄りも効果は薄いけど美味いなぁ」
「お兄ちゃん何その説明口調」
他にも体力回復とかある。魔物の肉も魔力持ちにとっては良い食べ物だな。
そう思いながら肉を食っている。
酒は⋯⋯年齢的には飲めるけどなんか飲めない。
サナは平気で飲んでるけど。
「サナすげぇ。それ凄いアルコール濃度高いよ?」
「そうなの? ジュースと変わらないけどなぁ」
その発言に男冒険者殆どが引いていた。
あの活躍に寄って、冒険者ギルドに入った瞬間に色んな冒険者に質問攻めにあった。
主にサナが。
アイランドタートルを空まで打ち上げた魔法、そして高速で魔物を両断する姿は印象が強いらしい。
この国でも珍しい銀髪も影響していた。
もしもサナに近づく男が居たら俺が黙って無いけどね。
ちなみに俺は余り騒がれなかった。アイランドタートルにトドメを刺したのはキクだ。
それに俺は魔法の方が印象でかくて余り目立って無かった。凄い爆発だったもんね。予想外だ。
ちなみにあの魔法は地上には撃てない。撃ったら広範囲が破壊されるどころか、放つ所に寄っては自分にもダメージがある。
「お兄ちゃんも飲も!」
「いや、俺は⋯⋯」
「⋯⋯お兄ちゃんも成人超えてるし、あそこでは飲めなかったし、今は飲んだら? 妹の酒が飲めないのか〜」
「すまない」
「⋯⋯そっか」
サナが悲しい顔をしてしまった。まじですまん。
そんなサナの背後に男が近づく。顔が真っ赤で正に酔っている男だった。
「サナちゃ〜ん。こっちに⋯⋯」
肩に触れようとした瞬間に投げ技で床に倒す。
そのまま腕を捻って動きを拘束した上に、近くのフォークを取って相手の目に近づける。
「⋯⋯あ、す、すみません。つい癖で」
すぐに我に返り、平謝り。
場は静まり返る。
「ほんと、ごめんなさい」
可愛く謝るサナに男性陣は騒ぎ、女性陣はそんな男達に冷ややかな目を向ける。
こんなに楽しく笑いながら飯を食えるとは⋯⋯素晴らしいな。
「月を見てどうしたんだ?」
「あ、キクさん」
「キクで良い。⋯⋯その、すまんかった」
「え?」
「実は、あたしは男ってのが嫌いでな。冷たい態度を取った。本当にすまない」
「気にしてませんよ」
「そう言ってくれるのはありがたい。育った村では、一番あたしが強かった。だけど、女だからと下に見られたんだ。それが悔しくて魔物を倒しまくっていたら、黒星なんて評価を受けたんだが」
「そうなんですね。あの、アイランドタートルの魔石⋯⋯良かったんですか? 討伐したのはキクさんなのに」
「一番ダメージを与えていたのはお前だ。腹の鱗が溶けてたのを見た。あれだけの魔法を単騎で使って、それでいて平然としているお前は正直化け物だ」
「そ、そうなんだね。ありがとうございます?」
「そこで、折り入って頼みがある」
「なんですか?」
「あたしと決闘してくれ」
「まぁ、良いですけど」
「ほんか! こっちだ。場所がある」
俺はキクに案内されるがままに訓練場に向かい、そこで決闘する。
サナ達大人数の冒険者を引き連れてだ。
「それじゃ、行くか」
「なんで申し込んだお聞きしても?」
「⋯⋯それは後でな」
「ん? 分かりました。それでは、行きます!」
「ああ来い!」
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