第20話 夕闇のトヤマキャンパスって話

「ビンゴってことかな」

コースケが結界に入った感覚から口を開いた。

「そうですね、ワセダ大学本館まであと少し、構内自体が広いので少し予想外でしたが」

右手にはワセダ大学トヤマキャンパス、左手にはトヤマ公園が見える。

トヤマ公園はコースケがカノに助けられた公園だ、後部座席の2人は自然と公園に視線を向ける。

「よし、結界がどの程度の広さなのかがわからんが、とりあえずキャンパスを虱潰しに探すか」

リュウジがそう言うと隆は近くのパーキングに車を停め、コースケに声をかける。

「コースケ君、声はどうですか?何か聞こえるものはありますか?」

「それなんだけど、結界に入った途端ノイズが入ってるような感じなんだよな」

それを聞いたリュウジが顎に手をあてながら会話に入る。

「何か対策を講じられてるということか」

「あぁ、たぶんな。でも結界に入ってからだけど、声は確実に聴こえるんだ。ノイズはあるけど、近くにいる気配はあるし、間違いない」

その言葉を聞いて、カノは手に力を込める。


トヤマキャンパスは本館のあるワセダキャンパスからトウザイ線を越えた場所に位置しており、プールやアリーナなどのスポーツ系の施設や学生会館がある。

事件があったせいか普段よりも学生が少ないが人通りもあるように見えた。

「これまでの爆破の経緯を見ても、人が多くなっていく傾向にあるから集まりそうな場所に向かうか」

リュウジが案内図を見ながら声を出すと、隆が同意する。

「そうですね、タカダノババ駅の事件もありますし、もう夜になりますからそれほど集まる場所もないかと思いますが、ここからでも明かりが見えるアリーナ方面ぐらいでしょうか、流石にこの時間には学生会館に人はいないと思うので」

4人は明かりが灯る、アリーナ方面へと歩いていく。


「あ、ノイズが少し晴れたっぽい」

建物の入口に近づいた時、コースケが不意に声を出した。

「それは良かったです、どちらから聞こえますか?」

隆が喜びつつ、確認に入る。

「あぁ、やっぱりこの建物だ」

そういってコースケはアリーナの地下を指差す。

「地下?」

カノの疑問に、隆が回答する。

「ここまで歩く道中で少し調べたところ、この施設のメインの階が地下2階になるようです」

隆の台詞にリュウジがつなげる。

「ノイズが晴れるタイミングといい、罠の可能性もあるが行くしかあるまい」

「そうだよな、罠か。カノは俺の隣にいるんだぞ」

そう言われたカノはコースケの隣に立ち、その隣に隆、コースケの反対隣にリュウジが並ぶ。

4人は地下につながる大階段を下りていく。


「これは思ったより広いですね」

地下2階のメインアリーナに辿り着いた4人は周りを見渡す。

「明かりはついてますが、誰もいませんね」

隆の言葉にカノが答える。

「罠の可能性が高くなりましたね」

リュウジの緊張感が増すのがわかる。

「コースケ、わーの近くに」

「おう、カノも」

コースケとカノはリュウジの後ろに並ぶ。

全員が周囲を警戒していると、舞台両脇から順番に扉が開かれる。

「自動扉じゃないですよね」

「あのタイプはどう見ても手動だろう」

隆とリュウジが構えるのとほぼ同時に、開かれた扉からイスや机、スポーツで使うだろう備品がふわふわと現れた。

「親父、やばい予想しかできねぇ」

コースケの声掛けにリュウジは頷く。

「どれもラインが繋がっています、操っていますね」

隆の眼があの少女の仕業と見破った。

「そうか、やはり。それにしても呪術に対しての防御はできるが、この物量に対しては」

リュウジがポケットに入れている石を掴みながら伝えるとカノがその台詞に被せるように声を出す。

「物理に対しての防御は任せてください」

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