第19話 目的地に向かうって話
キッチンから戻ったカノは自分の力を説明しようとカップを口につけ、喉の渇きを潤した。
この場にいる人たちには話しても、と言うより話さないといけないと思ったからだ。
リュウジと隆は地図を見ながら黙っている、コースケは入れなおしたコーヒーを冷ましながら飲んでいた。
「よし、これから次の目的地に向かおうと思う」
「そうですね、皆さんが大丈夫であればそうしようと思いますが如何でしょうか?」
リュウジと隆が話を進める。
それを聞いてカノは口を開く。
「あの、私の力のことですが行く前に話してもいいでしょうか?」
とカノが切り出したところでリュウジが話を止めた。
「須堂さん、君の話も勿論聞きたい」
「おう、俺も聞きたい」
リュウジに便乗して、コースケも声をあげる。
「ただ、まずは先に現場に向かおう、申し訳ないが車内で聞くことはできるかな?」
「大丈夫です、わかりました」
「ちぇ、今聞きたいのに」
カノの言葉を聞いて、リュウジと隆は頷き、コースケは頬を膨らませながら、外にある車に向かう。
全員が車に乗り込み、改めて目的地に向かう。
陽は傾き、道行くビルの影が長く伸びる。
「須藤さんの力だけど、話してもらってもいいかな?」
リュウジが切り出す、後部座席にはカノとコースケが座っており、カノは静かに頷いた。
「私の力ですが、今世で言う物を動かす力、サイコキネシスだと思ってます」
リュウジがその言葉に返す。
「さっきのコーヒーを止めた力だよね」
「はい、前世でも同じ力でした。今世で記憶が戻って、この世界ではこの力を持っていることがバレてはいけないと思ってからは意識して制御できるように訓練していました」
「ご両親も知らない力ということだね」
「そうですね、きっと知らないと思います」
「そうか、小さい時から。もう少し詳しく力のことを聞いてもいいかな、例えば人に対してはどうだろう?」
「それなら俺も説明できるぜ」
コースケがここぞとばかりに会話に入る。
「俺はカノの力のおかげで大ケガせずにすんだんだからな」
2人で帰った雪道での一件を話す。
「だからカノは俺の命の恩人なんだ」
「そんなことはないけど」
リュウジはその話を聞いて、後部座席を向き、お礼を伝える。
「須堂さん、ありがとう、コースケを守ってくれて、親としてお礼をさせてください」
「あ、いえ、助けられて、よかったです」
その様子を見て、コースケが口を開く。
「守られるタイプじゃないからな、今度は俺がカノを守る」
「ありがとう、ネコの恩返し、期待してる」
カノはコースケを見ながら笑顔で応える。
ワセダ大学本館、1800年後半に創立された国内でも有数の私立大学。
普段なら車で10分程度だが、タカダノババ駅の事件の影響で比屋根家に向かう時と同様に時間がかかった。
車に乗りながら地図を眺めるリュウジが呟く。
「最初がカブキ町至近の稲荷キオウ神社とクマノ神社、ヨドバシ市場のヨロイ神社とエンショウ寺、タカダノババ駅のミズ稲荷神社、予測しているだけだがワセダ大学にはホウセン寺とアナハチマン宮があるが、最後の女子医大はどこだ」
「将門公に縁のある土地、の件ですか?」
「ここだけ思いつかない。寺社仏閣は色々あるんだが」
「私もそのあたりの知識には疎いので、ご協力が」
そこまで隆が話を続けようとしたとき、前回同様に結界を通過したのがわかった。
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