第一話 大賢者『グラン・フューチャー』
──今から三年前。
いつもの様に父親『グラン』と共にツリーハウスで生活をしていた齢三歳の少年だったロスト。
彼は初代大賢者の称号を持つグランを父親に持ち、その背を見て憧れを抱き生きてきた。
いつしか自分も父さんの様に大賢者になるんだ! と強い夢を持ち。
日やグランの研究を除き見ては見様見真似で真似事をする。
まだ魔法も知らない、使えないそんな少年が。
グランが制作した一匹の
「ロストや、お前さんは魔物が好きなのか?」
「うん!! 魔物好きだよ。面白いし、カッコイイから」
「そうかそうか。じゃが、魔物には気おつけるのだぞ? わしが製造した
「はーい! ──『スラン』遊ぼ」
ロストは青いジェリー状の魔物『スライム』と共に庭へと駆けて行こうとし。
「ロストや、すまぬが頼まれ事をされてはくれぬか?」
「えぇー、別に良いけど」
「すまんな。 街まで下りてこれを買ってきてもらえんか?」
グランは一枚のメモ用紙とお金の入った布袋を手渡した。
「──分かった! 買ってくるね」
元気よく返事をするとロストは家を後にした。
頼まれていた品々が入った紙袋を両手に抱え、最後の買い物をしようとお店の前に立つ。
メモ用紙に目を通すと。
「ここでは『魔物生体の書』を買わないと。何に使うんだろ、これ?』
そんな事を思いながら魔導書販売店の扉を開き、中に入る。
ズラリと店内は本で埋め尽くされ。
ガラスケースに収納された他の本よりも高価な本達。
奥には一人の女性定員がレジカウンターに立っていた。
「すみませーん、魔物生体の書が欲しいんですけど」
「あら、いらっしゃい。──これかしらね」
定員のお姉さんは頼まれた書籍を探し出し、カウンターに置いて見せてくれた。
「うん! それかな。 いくらするの?」
「これは五○○ギルよ」
お金の入った布袋をまさぐり、言われた五○○ギルを差し出す。
「ありがとう、お姉さん!」
本を受け取り踵を返すと、手を振って店を後にする。
早く帰らないと、父さんが待ってるし。
「父さん、買ってきたよ」
玄関を開け、言葉を発するも返ってこず。
静けさだけが残った。
──まだ研究してるのかな?
ロストは歩き研究室に入ると、グランは机に向かって作業をしている。
少しして、帰ってきたロストに気が付き。
「おぉ、帰ったか、ロストよ」
「うん、ただいま。これ頼まれてたやつ」
抱えて持っていた紙袋をグランに手渡す。
「そうかそうか、ありがとう」
お礼を言い終えると紙袋に手を入れ、一冊の本を取り出すとそれをロストに。
「この本をロストに。四歳のお誕生日おめでとう」
「ありがとう!! これ、僕の誕生日プレゼントだったんだ」
「本当ならわしが買いに行って渡したかったんじゃが、すまんな。研究が終わらなくて」
「ううん。父さんと誕生日を祝えるだけで嬉しいから」
「そうかそうか。──この本はな、わしが初めての魔術研究をした時に使った本なんじゃ。ロストはわしと同じく魔物が好きと言っておったからの、喜んでくれると思ってな」
誕生日を祝い和やかに過ごしていると、玄関先から「グランの親父は居るか?」と、声が聞こえてきた。
その声、呼び方にはっ、としたのかグランは少し顔を強ばらせ。
玄関へと歩を進めて行く。
誰がきたんだろ?
ロストは研究室の入口から顔だけを覗かせていると、七人組の男女が玄関に居た。
遠すぎて余りよく話し声が聞こえないな、なんて思っていると、グランの背に何かが貫きその場に崩れ落ちる。
「──あぁあああ!!!」
余りの出来事にロストは声を上げてしまい、それに気がついた訪問者の一人が。
「おいおい、マジかよ。マジで
と、倒れるグランを見る。
「に、逃げなさい……、ロスト。お前だけでも……」
「たくよぉ、何で俺が不合格なんだよ、めっちゃ良い出来だったのに」
頭の上で今だロストの髪を噛み、遊んでいるゴルバトを放っておき、ロストは愚痴をこぼす。
「いい加減頭から下ろせば? 危ないよ、羽がブレイドになるんでしょ?」
「厳密には硬質化な? 今は普通の羽だから問題はない」
「──そ。別に良いんだけどね、ロストがどうなっても」
「ひっでぇ言いようだな。もっと俺の事を心配てもバチは当たらんだろ」
「誰が心配なんかこれ以上してやるもんですか! それよりどうするの? 卒業試験。ロストだけだからね、合格出来てないの」
「ふっふっふ……。 それについては問題ない! 人語を喋る合成魔物を作ってやる!!」
「なんでそんな生体魔術にこだわるのよ」
「知ってるだろ、俺の夢。その為に俺はこの研究を辞めない! ──俺はな、いつか『国家魔術師』になって、行く行くは父さんの様に偉大な『大賢者』になるんだ!! 何がなんでも俺の目的を叶える為にも。その為ならどんなものでも利用してやる! それが茨の道だってのは今の俺にだって分かる、それでも」
アミと帰り道の道中別れると、錆びれた魔物小屋を改装して自作した自宅兼自身の研究所に急ぎ帰る。
背負っていたスクールバックを投げ捨てると、研究室の机に向かい。
「やってやる! 俺なら作れるはずだ」
合成魔物の製造に取り掛かった。
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