第6話

 あの告白から、一夜明けて、今日。

「__夢じゃ、ない、よね」

 起きてからスマートフォンを確認すると、そこには、千明からのメッセージ。

『昨日は、突然ごめん。困らせたよね』

 三十分前に送られてきたそれを読み、やはり夢ではない、と再度確かめる。

 何と返すか暫く迷った挙句、

『聞きたいことがあるんだけど、話せないかな。二人で』

と返信し、メッセージアプリを閉じた。





「おはよう」

 近所の公園のベンチに腰掛けて待つこと五分。

 やってきた千明にそう声をかけられた。

 璃音は千明に挨拶を返し、隣へ座るよう促す。

 暫くの沈黙の後、口を開いたのは璃音だった。

「昨日は、告白、してくれて、ありがとう。すごく、嬉しかった」

 言葉を一つ一つ選びながら、ゆっくりと話す。

 緊張して、千明の顔が見れない。

 それでも、今の自分の気持ちを言葉にしていく。

「昨日言われた通り、私は千明のこと意識したことなかった。けど、千明の気持ちを知ったから、それに、真剣に、応えたいと思う」

そう言って、一つ息を吐くと、思い切って千明の方を向いて、言った。

「私は、千明が今後どうしたいのか、知りたい」

 千明は璃音の力強い目に気圧され、何を言葉にすればいいのか、戸惑い、しばし考え込む。

 やがて出てきたのは、千明の正直な思いだった。

「璃音と、恋人になりたい」

 それが、ずっと、璃音のことを想ってきた千明の、願望だった。

 璃音は千明の言葉と眼差しを受け止め、言った。

「時間が欲しい。千明のこと、考えさせて」

 真剣なその言葉に、千明は驚きと喜びが綯交ないまぜになる。

 その感情を噛み締めて、璃音に、微笑みかけた。




 自分は、千明のことをどう思っているんだろう。

 千明と一緒に帰ってきた璃音は、部屋に戻り、ベットに腰掛ける。

 帰り道は、今までと変わらなかったように感じた。

 別れ際を、除いては。


「千明、来てくれてありがとう。じゃあね」

 千明に家の前で立ち止まって言い、玄関へと足を向ける。

 一歩踏み出そうとしたところで、腕を軽く掴まれた。

 咄嗟に振り返ると、千明は微笑んで、

「璃音、好きだよ」

と言って、くるりときびすを返し、自分の家へと駆けていった。


「あーもう、なんでだろう……」

 そのことを思い出す度に、悶えてしまう。

 __あんなこと言われたら、誰だってドキドキするでしょ。

 顔が熱いのを自覚しながら、千明のことを、考え続ける。

 千明のことは好き。でも、それが恋愛感情なのか、わからない。

「友達の好きと恋愛の好きの違いって何なの……」

 途方に暮れた璃音の呟きは、窓から入ってきた夏の風の中に消えていった。

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