第20話【竹刀】
晴天の霹靂。いや、天変地異と表現すべきだろうか。なんと、天生生まれの宮本武蔵が、令和で、それもSNSの動画サイトに動画を投稿しようとしている?
「て、ゆー事で。ゴン爺、あたしと試合してくんない? ダメ?」
ムサシは顎の下で拳銃ポーズを決めながら、じいちゃんにそう告げた。すると、じいちゃんは極限まで鼻の下を伸ばし、「ノープロブレムじゃ! OK牧場!」と満面の笑みで快諾した。
トントン拍子で進行中の動画『ムサシが道場破りをやってみた』。じいちゃんもヤル気満々だ。
「ムサシた~ん、此方の準備は出来たぞ~い」
試合は柳生側が代表として三人、田中さん、山田さん、じいちゃんの順でムサシと立ち合う事になった。使用するのは竹刀で、防具は無しだ。
「おいムサシ。マジで撮影するのか?」
「うん」
さも、「当たり前じゃん!」とでも言いたげな表情だ。
山田さんがムサシに竹刀を手渡した。
「コレを使ってください」
「サンキュ~。じゃあたっくん、撮影開始!」
「お、おう」
スマホをムサシに向け、RECボタンをタッチした。
「ハイ、じゃあこれから試合が行われまぁ~す。その前にぃ、女子の素振り見たくない? 見たいよね? という事で、素振りしちゃいまぁ~す♪」
ヤベェ。めっ! ちゃくちゃ可愛い。つか、台詞流暢過ぎじゃね? もはやその口調は常連ミーチューバーの如くだ。
ムサシは竹刀を構えて一旦静止すると、「じゃあ、いっきまぁ~すぅ」と言いながら竹刀を思い切り振った。
その瞬間、なんと竹刀が裂けた。
えええぇぇぇ──────!?
と、大声で叫びたかったが、撮影中なので心の中で叫び声を上げた。
素振りをした竹刀は、刀身を結ぶ紐が全て切れ、イカサキのような状態になってしまった。
「あれぇ~? 壊れちゃったぁ。すいませーん、竹刀のおかわりおねがいしまぁーす」
山田さんに向かって、ヒラヒラと手を降るムサシ。
待て待て待て! ご飯のおかわりみたいに軽く言うな。大体、竹刀のおかわりなんて聞いた事……あ、そう言えば確か史実によると、武蔵の剛力は素振りで竹刀を使い物に出来なくしてしまっという逸話もあったな。まさか、この目でそんなミラクルな妙技を拝めるなんて、夢にも思ってなかったぜ。
「おやおや、すまんのぉムサシたん。どうやらその竹刀は相当使い込んで、寿命が近かったようじゃ。これ! 山田! 新品の竹刀を用意せい!」
「はっ! 只今!」
じいちゃんの言う通り、仮に相当使い込んだ竹刀だったとしても、たった一度の素振りでこんな状態になるか?
ヤバイ。これはもう、真剣にカメラマンをやらなければ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます