第7話 【剣豪とタブレット端末】

 ムサシを引き連れ、自室へやってきた。


「どうぞ」


「お邪魔する」


 六畳の和室をDIYにて洋室化した自室だ。高校生の部屋としては、結構なクオリティだと自負している。


「あ、そこ座って」


 粗大ゴミとして捨てられていた二脚のシングルソファを修理して、リプロダクトした自慢の家具。DIYは俺の趣味である。


 ムサシは部屋の中を見渡すも、一切動じず至って普通だ。ま、俺は基本的にミニマリストであるがゆえ、部屋に置かれているのは、中央のソファ二脚とテーブル、そして、勉強机とベッドしかないから、驚く事もないだろうけど。


「さてと……」


 俺もソファに腰掛け、ムサシと対面となった。う~ん、初めて自室に招き入れた女の子が、世界一有名な剣豪が女体化した女子とは、ある意味、世界一贅沢な事をしているのかも知れない。


 しかし、チョコンとソファに座るその姿は、フィギュアと見間違う程愛くるしい。身長140センチ台の女の子に、ちょっと危険なモノを感じてしまう。特殊中の特殊なケースとは言え、身元不明の少女を家に連れて来ちゃったんだ。多少の背徳感は否めない。


「これが拓海殿の部屋でござるか。風情がありますな」


 風情? そんなもんあるか? 今ここにあるのは俺の煩悩だけだよ! って、いかんいかん。本来の目的を見失ってしまう所だった。


「実はさ、本よりももっと便利なモノがあるんだ」


「書物よりもでござるか?」


 テーブルの中央に置いてあるモノを手に取り見せた。


「これはタブレット端末といって、色々な情報を知る事が出来るんだ」


「こんな四角の板が?」


「うん、とりあえず操作方法を教えるからさ」


 タッチ、フリック、スワイプ動作と、検索エンジンの使用方法をレクチャーした。


「なるほど。操作手順は心得たでござる」


「これなら短期間で歴史の事が解るし、飽きたらゲームとかも出来るからさ」


 ムサシは感慨深い表情でタブレット端末を見つめた。


「四百年……四百年後の日本は、まるでお伽噺。拙者はとても貴重な経験をしているのですな」


 部屋をノックして母さんが入室してきた。


「あらあら、どこへ行ったのかと思ったら、拓海くん意外と手が早いのね。ウフフフ」


「いやいや、タブレットの使い方を教えてただけだよ」  


 息子の情事が気になるのだろうか? うん、そんな母さんも可愛いよ。


「じゃあ、部屋にタブレット持っていっていいからさ」


「かたじけない。学ばせて頂く」


 ムサシは母さんの案内で隣の部屋へ移動していった。

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