エラア~ゲームプレイヤーと戦うキャラたちの覚醒~

おんぷがねと

第1話 ゲームを起動

「さてと、ゲームでもするか」


 友人は、とあるゲーム制作会社で働いている。今日はそのゲームソフトの試作品をやってくれるように頼まれていた。


 その試作品はタイピングゲームで物語ができるというものらしい。そのディスクが送られてきたので早速パソコンを起動した。


 試作品とはいえ、出だしはさまざまな利用規約や注意事項などを守るように説明を受けてからのプレイとなった。


 友人からはプレイした感想も欲しいということだった。ここが良いとかここが良くないとか。


 僕がいちゲームプレイヤーということで頼んできたわけだ。


 暗い画面が目の前に映る。何も起きない。エンターを押してみた。すると画面が何の前触れもなく映った。そこには、暗い画面にニューゲームやコンティニューといった文字が浮かび上がった。


 僕はニューゲームをマウスでクリックした。


 青い画面が全面にあり、下のほうに白いバーがあるだけだった。しばらくそのまま待っていた。何も起きない、壊れているのかとさえ思った。仕方なく適当にキーボードを打ってみた。


 【ああああああ】

 

 下にあるバーに文字が打たれた。友人からはディスクだけが送られてきただけで、説明書らしきものはなにもない。が、ディスクに直接マジックかなんかで【タイピングで物語を作ってクリア】と書かれていた。


 変なゲームだ。まあ、試作品だからこんなもんかと思った。もしかしたら、何か打っていけば反応するのかもしれない。


 一息ついて僕は、ああああああを消して、再びキーボードを打とうとして気がついた。


 メニューという文字が左上に表示されていた。僕はそれにマウスポインターを持って行ってクリックした。


 すると【大地】や【町】などの表示が出てきた。その文字の下のほうにセーブやロードもあった。僕は大地をクリックしてみた。


 大地以外の文字は消えて【平野】【森】などの文字が出てきた。


 僕は平野をクリックしてみると青い画面に緑の正方形が出てきた。僕はそのほかも適当に試してみた。


 【人物】や【魔物】などもあった。その中には王様とか勇者。悪魔とか魔王などが表示されている。


 なるほど、これならいちいちキーボードを打たなくても選べばいいわけだ。何を作っていいかわからないときにはありがたい機能だ。ああ、でもこれくらいは当たり前か。


 僕は選ぶのを止めて文字を打ってみることにした。何となく平野の上で右クリックしてみると、削除やコピーなどの文字が出てきた。


 僕はそれで平野を消して文字を打ち始めた。


 設定というか、何から手をつけていいかわからなかったから、とりあえず陸地を表現してみた。

 

 【森の大地】と入力したら、画面の真ん中に緑豊かな森が現れた。


 それから【川】と入力したら、まっすぐな水色のバーみたいな川が現れた。川を感覚的にマウスポインターで移動させて、端のほうへ持っていき、そこへ置いた。


 「地形を作るゲームか」と軽くツッコミをいれつつ、作業を進めた。


 【真ん中を芝生にする】と入力すると、画面の真ん中に正方形で黄緑の草原が表示された。森の大地の上に重ねて表示されている。


 少し小さい正方形の草原だった。


 僕はマウスポインターを草原の角に持っていき広げた。


 何となくいつもの感覚でパソコンの操作をしている。こういうことはできるのかとか思う以前に手が勝手に動いていた。


 少しこのゲームの仕組みがわかってきた。文字を打てばその通りになるということと、意味不明な文字は何の反応も示さないということだ。


 もしかしたら、文字を意味があるようにていねいに打てばもっと想像するように作れるのかもしれない。


 よし、次は家を置くか。


 レンガ造りの家。とがり屋根には煙突をつけて玄関に木の扉を取りつける。


 じゃあ、家の中を作っていくか。


 木の床を敷いて、木の階段を作って、あとはテーブルと椅子とキッチンと冷蔵庫とバスルーム。それから、ベッドを配置してと。


 うーん、この家は、さっきの芝生にしたところにでも置くか。


 次は、そうだな、人を作るか。


 【男は布の服を着ている。短髪の髪。多少筋肉質な体型】

 【女は赤いドレスを着ている。長い髪。スレンダーな体型】と入力した。


 よし、こいつらを家の前に立たせて、あ! 気にしなかったけど色は設定したところ以外はそのモノに合わせて、適当につけてくれるようだ。


 僕は試しに色をつけてみた。


 【家の屋根は赤、レンガの壁は黄土色】


 【男は茶髪、茶色の肌、布の服の色は灰色。女は透明な白い肌、髪は背中まで長くして、黄色に染めている】と入力した。


 するとその通りに色に変わった。


 それ以外にも男と入力すれば男性の適当な体型を用意してくれる。女も同様に女性の体型をゲーム側がやってくれる。

 

 マウスのホイールボタンを上に回転させると画面が寄って行って、キャラが立体に見えるようなる。カメラがそこに行ってキャラを映している状態になる。周囲にある森も木が1本1本独立して見える。


 反対に下に回転させると、陸地を見ながら段々と空に向かって飛んで行くような感じになっている。キャラや森は記号的なものになって存在している。ちょっとした地図にも見える。


 近寄れば3D、離れれば2Dといったところだろう。


 じゃあ、性格でもつけてみるか。


 【男は奇想天外な発想をする。何でも言うことを聞く。やさしいやつ】

 【女は自分が1番偉いと思っている。人の言うことを聞かない。いじわるなやつ】


「ん? なんだ、ここはどこだ」

「……わたし、は? なにこれ」


 キャラのしゃべった!? 声優が声を当てているみたいに。男は男の声。女は女の声をしている。


 へぇー最近のゲームはこんなこともできるのか。


 その他にも会話の表記が画面上に出てきた。それは作ったキャラの近くに白い枠があって、その中に黒い文字で書かれていく。それを声優が声に出して読んでいるようだ。


 あ! そうだ、名前をつけるのを忘れた。


 【男はウタガ。女はワナイ】


「あ、君は、誰?」

「え? あなたこそ、だれ?」

「あ、私はウタガっていいます」

「……」


 ワナイはウタガに答えず周囲を見回している。

 

「しかし、ここはどこですかねー」


 再びウタガが話しかけるとワナイは歩き出した。

 ワナイの歩く音が聞こえて来る。効果音もしっかりとついているみたいだ。


「あ、ねぇーきみー、待って」


 ウタガがワナイを追いかけてる。そして、ウタガはワナイの肩をつかんだ。


「なに? なんか用」

「あのー、いや、ほら、君もここがどこだかわからないみたいだからさー」

「だから」

「そのー、ここの地層を調べるために穴を掘ってみよー」

「あ!? 勝手にやれば」


 ちそーを掘る? どうやって、一応土に設定してあるけど、中は……。

 え? 手で掘り始めた。


 ウタガは地面の土を手で掻き出しては、それを隣に出していく。

 ワナイは腕組みをして、その行動を呆れたように見下していた。


 タイピングで物語を作ってクリアって言っても……とりあえず何か文章を打って物語を作らないといけないのか。


 このウタガとワナイは勝手に動いてくれるから、もう、このまま見ていれば、最終的にはクリアになるのかな?

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