俺、強くなってる?

牡蠣一

冒険の始まり

第1話 旅立ち

「よし、行け、決めろっ!」


「惜しい、今度こそ!」


「よっしゃー、決まったーーーー! ゴール!」


「ナイスシュート!」」



 サッカーではない。シュートも打っていなければゴールもない。ただのオンラインゲームでボスを倒して喜んでいる俺、東条宏明とうじょうひろあきと妹の東条彩芽とうじょうあやめであった。


「このボスのドロップは何だ? レアドロップならかなりいい物が出るはずだ」


「いいものが出たら私のもの、いまいちだったらお兄ちゃんのもの」


「ジャイ○ニズムみたいなこと言うな!」



 画面上にさすがはボスだと言わざるをえないほどのドロップした美味しいアイテムの文字が並ぶ。その中にレアアイテムを表す黄色の文字のドロップアイテムが……。


「やったぞ。何か来た」


「私のアイテム来たー」


「決めつけるなよ。とりあえず何か見てみようぜ」


 まずはアイテムの名前を確認する。


 『祝福の指輪』


 これがアイテム名だった。聞いたことがないアイテムだな。効果もよくわからない。なのでアイテムの説明を確認する。


 『神の祝福が宿った指輪。装備すれば何かいいことが起きる。』


 これがアイテムの説明だった。


「わからん」


「説明が曖昧すぎよねぇ。レアドロップでもはずれの方かな」


「祝福ってのがすごいのかもしれないがな。まあ一応俺がもらっておこう」


「お兄ちゃんずるい。いいものは私のものよ」


「これはいまいちな物だろ。お前はその指にはめている現実の指輪で我慢していろ」


「指輪なんてはめていないし」


「はめているだろ。それとも無意識にはめているのか」


 ゲームで喧嘩しだす高校2年生の兄と中学2年生の妹。


「指輪なんてはめていない! ってあれ?」


 彩芽はなおも否定しようとしていたが、指輪をはめていることに気づいたようだ。


「やっと思い出したか」


「指輪なんてはめていない……」


「それを見てまだ否定するのか!」


「だって私こんな指輪持っていないし」


「じゃあ何で指輪はめているんだよ」


 顔を真っ赤にして否定していた彩芽が真顔になる。


「ねぇ、なんだかこの指輪、今ゲームでドロップした指輪に似ていない?」


「ならなおさらそれで我慢しろよ」


「本気で言ってるんだってば」


「うーん」


 冷静になって見てみれば確かに似ている。


「ゲームのグッズとして売られてるんじゃないのか?」


「そんなの買ってないわよ」


(これはもしかして……)


「彩芽、大事なことだから確認する。指輪に気づいたのは今なんだな?」


「そうよ、お兄ちゃんに言われるまで気づかなかった」


「彩芽、大事なことだから確認する」


「大事なことだから2回言ったの?」


「いや、そうじゃなくてこの指輪はお前の意思でつけたんじゃないんだな?」


「こんな指輪つけた覚えないわ。買った覚えもないし」


 決まりだ。


「我が妹よ、よくやった」


「何よ、突然」


「ゲームの指輪はお前にやるからこの指輪を俺にくれないか?」


「こんな気味が悪い指輪ぐらいあげてもいいけれどどうするつもりなの?」


「指輪なんだから指に装備するに決まっている」


「装備って……それでどうするの?」


「決まっているだろ」


 一息つく。



「俺は異世界へ行く」



「はっ?」



「俺は異世界へ行く、大事なことだから2回言ったぞ」



「はあ?」



「彩芽、お前はリアル祝福の指輪を手に入れたんだよ。俺は祝福を受けてこれから異世界へ旅立つことになる。このつまらない世界から旅立つんだよ」

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