第46話 退院

1月の始めに彼は精神科病棟から退院した。

2月の終わりまでに彼は、高校卒業に必要な出席日数と単位を修得した。

3月、彼は何とかT高校を卒業した。


しかし、卒業後の彼の進路は全くの白紙状態であった。

入院によって、彼が今まで勉強してきた知識は全て消え去っていた。

就職や予備校などのストレスが掛かる事は、主治医の指導で避けることになった。



彼の「自宅療養」と言う名の無為徒食ニートな生活が始まった・・・



彼は自宅で空虚な毎日を送っていた。

月2回の通院以外、殆ど彼は外に出なかった。



「何もしないこと」これが彼の「療養」になっていた・・・



時々、同志から様子伺いの連絡が入っていた。

彼の狂状は、彼に接した周りの人達に大きな迷惑をもたらしていた。

同志は受験に失敗して、仕方が無く希望では無い就職をした。


アイツも受験に失敗して、予備校通いになった。

彼女だけが、志望の大学に合格することが出来たのだった。

彼は同志やアイツの大学受験失敗の責任を大いに感じていた。



彼女の進学だけが彼にとって唯一の安堵であった・・・



発症発狂療養編 終わり

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