第34話 真理

彼の高校生活での最初で最後の文化祭は終わった。


展示の片付けが終わった後、部室でOB・先輩を交えてささやかな打ち上げを行った。

部員達は優秀賞を受賞出来なくて残念がっていた。

また生物部が特別賞を受賞したことを不思議に思っていた。

「理学部の展示のほうが良く出来ていたのに、いったい何故?」



その言葉は、彼のに重く突き刺さっていった・・・



打ち上げが終わった後、今度は先輩の家で2次会と麻雀大会が始まった。

麻雀の順番待ちで一人別室で待機していた彼に、ある先輩が言った。



彼女あの人は恋に恋をしていただけで、の事はどーでも良かったんじゃないの」



先輩の言葉を聞いて、彼は総てを理解した。

あの人は恋をしてる自分自身が好きなだけであって、相手は誰でも良かったのだ・・・

たまたま告白したのが彼だったので、仕方なくお情けで付き合ってくれていたのだ。

あの「大好き」は友人・知人としてであり、決して「恋人」としてではないのだ。


そして、あの人のの中ではもう「過去の思い出」になっているのだ。

彼にとっては現在進行形であったが、あの人にはすでに過去形だったのだ。

今回文化祭に来てくれたのも、「過去の思い出にお付き合い」しただけなのだ・・・



ここまでは彼の勝手な妄想であるが、このことを彼があの人に確かめる手段はもう無いのだ。

これ以上彼があの人に対して醜く行動することは、あの人の「思い出」を汚し・踏みにじることになるからだ・・・



「それでも・・・」

「私はあの人が好きだ・・・」

彼は背中越しに先輩の言葉を聞きながら、そう思っていた・・・





学年末になり、彼が理学部々長から退任する時期が来た。

彼は優秀な後輩に理学部々長を譲り、ただの理学部員になった。

彼はやっと重圧から解放されたと感じていた。



「これで夜もぐっすり眠れる」

彼はそう考えていた・・・・



苦闘高校編 終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る